省人化を追求した組み立て工程
続いて組み立ての工程へ。商品の特性に応じて、日本製、インド製、中国製の設備を使い分けて自動組み立てを行なっているのだとか。全設備の稼働データをIoTで集中管理することで、生産効率を上げている。
その奥へ行くと、急に人が増えてきた。付属品をパッケージに同梱する作業、出荷検査は、人の手で行なったほうが速いのだとか。広い工場なのに、あまりに人がいなかったので、少しほっととする。
人の手によって出荷検査を終えた商品をパレットの上に積むと、再びオートメーションの流れへ。自動で動くフォークリフトが倉庫まで商品を運んでくれるのだ。
スリシティ工場で培った知見を日本に逆輸入される日も近い!?
生産ラインの9割を自動化するというのは、こういうことか……と感心するばかりだが、気になる点があったので小林健太郎さんに聞いてみた。
疑問というのは、人材の確保。チェンナイ市内から約2時間かけてスリシティにやってきたが、工業団地周辺は野原で近くに住宅街があるように見えない。それでいて、このスリシティに様々なメーカーが工場を次々に新設している。優秀なエンジニア、工員の確保が難しいのではないだろうか?
「スリシティ自体は、まだまだわずかな団地があるだけなので、クルマで30分ほどの距離にある街に住んでいる方々に専用バスで通勤してもらっています。……が、新たな工場が増えれば増えるほど、人手が足りなくなることが予想されます。実際、この工場もまだ一部しか稼働していませんし、2025年までに、さらに十数億円程度を追加投資して生産能力を約2億個/年へと伸ばす予定もあります。自動化に注力しているとはいっても、やはり人材は重要なので、そうした問題をクリアしてもらうべくスリシティに拠点を置く企業と連携して、自治体に働きかけているところです」
小林健太郎さんは、続けてこう話した。「これまでは日本の技術を海外に輸出してきましたが、このスリシティ工場で培った知見を生かし、今度はインドで育てた技術を日本に逆輸入していきたいですね」と。日本は超高齢化社会に突入している。こうした無人化を徹底した工場が、日本の未来を救う一助になるかもしれない。
取材・文/寺田剛治