『耽る』の読み方を答えられますか?「見たことがある漢字だけど、何て読むんだっけ?」と、頭を悩ませる人も多いのではないでしょうか。いざというときに正しく使えるように、『耽る』の読み方・意味・言い換え表現を紹介します。
「耽る」の読み方とは?
『耽る』の字面から、なんとなく意味が分かるという人も多いのではないでしょうか。まずは正しい読み方と意味を確認し、あやふやな知識をしっかり固めておきましょう。
「耽る」の読み方
『耽る』は訓読みで『ふける』と読みます。『ひたる』と読み間違えられやすいのですが、『耽る』には『ふける』以外の読み方はありません。
なお、『耽』は音読みにすると『たん』となります。不健全なものに夢中になる『耽溺(たんでき)』、美しさを至高とする『耽美(たんび)』といった熟語にすると、よりイメージしやすいかもしれません。
「耽る」の意味
『耽る』とは、『集中してのめり込むこと』『一つの物事に熱中すること』を意味する言葉です。「一日中、読書に耽っていた」「彼は物思いに耽っているようだ」のように使われます。
心を奪われるという意味の上では、『溺れる』『夢中になる』などに言い換えることができるでしょう。
『耽』の漢字を分解してみると、『耳』と『冘(イン)』に分かれます。『冘』は『垂れる』『まくらに頭をしずめる』という意味があり、転じて何かに心が沈み込む様子を表して『耽』という漢字ができました。
「耽る」の類語・言い換え表現
人が何かに夢中になることはよくあることで、その分だけ豊富な表現方法があります。いずれもよく使われる言葉なので、『耽る』の類語や言い換え表現を覚えておきましょう。
「没頭する」
『没頭する』は『ぼっとうする』と読みます。『没』には『うちこむ』『はまり込む』という意味を持つ漢字で、『没頭』は『頭を突っ込むこと』『一つの物事に熱中すること』という意味になります。
『熱中する』の意味の方に関しては、『耽る』と『没頭する』はほぼ同義語となるため、たいていは問題なく言い換えられるでしょう。
「仕事に没頭しすぎて睡眠時間が十分に取れない」「趣味に没頭すると、時間が経つのを忘れてしまう」のように使われます。
『耽る』が否応なくはまり込んでいくイメージがあるのに対して、『没頭する』が自ら打ち込む印象といった、若干のニュアンスの違いはあるかもしれません。
「浸る」
『浸る』は、『ひたる』と読みます。『つかる』と読みたくなるかもしれませんが、その場合は送り仮名が『浸かる』となるため注意が必要です。
『浸る』には、『水などの中に入る』のような、『つかる』と同じ意味もありますが、『耽る』の類語となるのは『ある状態や心境に入りきる』という意味の方です。
「映画の余韻に浸った」「大きな喜びに浸った」など、気持ちがすっかり持っていかれている様子を指すこともあれば、「酒に浸る」のように物理的な状態を示すこともあります。
植物にまつわる難読漢字
『耽る』と同じように、普段から何げなく口にしているにもかかわらず、多くの人が読めない漢字があります。今回は植物にまつわる難読漢字を見ていきましょう。
「蒲公英」
『蒲公英』と書いて、『たんぽぽ』と読みます。開花前のたんぽぽを天日干しにした、『蒲公英(ホウコウエイ)』という漢方がありますが、ここからたんぽぽの漢字がつけられました。
たんぽぽの名前の由来には諸説あり、綿を丸めて布や皮で包んだ『たんぽ』に似ているからといわれています。
また、野道に咲く『田菜(たな)』に、綿毛がほぐれる様子を指す『ほほける』を合わせて音が変化したものとも、つぼみが鼓に似ていることから、鼓を打ったときの『タン、ポン、ポン』という音が語源という説もあります。
「菫」
『菫』の読み方は、『すみれ』です。『すみれ』と呼ばれるようになったのは、花の形が大工が使う『墨入(すみいれ)』という道具に似ていたからだとされています。
なお、『菫』とは、『すみれ』という名前の植物種を指すこともあれば、スミレ科スミレ属の植物の総称としても使われる言葉です。総称として用いられる場合は、スミレ科であるパンジーやビオラも『菫』の一種となります。
植物種の『すみれ』は、ほとんどの人がイメージするであろう、小さな紫色の花を咲かせる植物のことです。学名をビオラ・マンジュリカといい、『ホンスミレ』や『マンジュリカ』という俗称で親しまれています。
「含羞草」
『含羞草』の読み方は、『おじぎそう』です。7~9月に小さな桃色の花を咲かせるマメ科の低木で、葉が閉じて垂れ下がる様子から『おじぎそう』と名付けられました。
夜になると葉が閉じるため、『眠草(ネムリグサ)』ともいわれます。また、手などで触れたときも葉が閉じて垂れ下がります。その恥ずかしがるような様子が『含羞草』という漢字の由来です。
ちなみに英語名は『sensitive plant(敏感な植物)』といいます。どの名前も葉のユニークな運動に由来しているので、一度聞いただけでも覚えやすいのではないでしょうか。
構成/編集部