自ら水素を作り、そして活用することで脱炭素化を推進
積水ハウスは、太陽光発電による再生可能エネルギーの電力を使って自宅で水素を作り、住宅内の電力を自給自足する住宅メーカー初(※1)の水素住宅の実証実験を2023年6月から同社総合住宅研究所で開始した。
同社によれば、2025年夏の実用化を目指すという。
積水ハウス総合住宅研究所内の実証実験棟
近年、地球温暖化やエネルギー需給構造の変動から、脱炭素とエネルギー安定供給を両立する未来を担う新たなエネルギーである水素の利活用が進んでいる。
しかし、国内外のインフラ・サプライチェーンの整備・構築などに鑑みると、各住戸に水素が届くのは2050年以降であると言われている。
そこで同社は持続可能な社会の実現のため「水素が手元に届く時代の到来を待つのではなく、自ら水素を作り活用し、脱炭素化を推進すべき」との考えのもと、「本実証実験を実施し、家庭での使用環境を見据えた安定・自立運転の検証、商品化に向けた課題整理を行ないます」と今回の実験について説明している。
水素住宅のシステム構成概要
(1) 日中は自宅の屋根の太陽光発電パネルでエネルギーを作り消費
(2) 太陽光発電の余剰電力で水を電気分解して水素を作り、水素を水素吸蔵合金(※2)のタンクで貯蔵
(3) 雨の日などの日射不足時や夜間は貯蔵した水素を利用して燃料電池で発電
この水素住宅の開発は、太陽光発電(再生可能エネルギー)の電力による水素の製造も、その水素を用いた燃料電池による発電もCO2が一切発生しない、日常生活におけるゼロカーボン化と電気の自給自足の実現を目指す。
同社は戸建住宅のZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス ※3)比率(※4)が2022年度に93%、賃貸住宅「シャーメゾン」の住戸ZEH比率(※5)65%、分譲マンションの住戸ZEH比率(※6)88.8%となるなど、環境性能向上に業界に先んじて取り組んでいる。
現在のZEHの仕組みに新たに水素の利活用を組み込むことで、環境性能や利便性、レジリエンス性等を向上させることが期待できる。
同社では、今回の発表に際して「積水ハウスは 〝わが家を世界一幸せな場所にする〟というグローバルビジョンのもと、ESG経営のリーディングカンパニーを目指し、持続可能な社会の構築に貢献してまいります」とコメントしている。
水素住宅への期待と将来への展望
・発電出力が不安定という太陽光発電の課題を水素で補完することで、昼夜・季節を問わず無駄なくエネルギーを使用可能で、家庭使用電力の自給自足に貢献。
・また運用時におけるCO2排出量はゼロで、電気や熱を取り出せるため環境負荷低減にも貢献する。将来的には、水素の直接燃焼技術の利用も視野に入れ水素の可能性を最大化する。
・家庭での使用電力の自給自足(=ゼロカーボン化)は、一般家庭からの地球温暖化防止や脱炭素社会の実現を、さらに加速させる。
・災害等非常時でも自宅で暮らし続けられ、建物のレジリエンス性を強化できる。
・水素吸蔵合金は、蓄電池と比べてエネルギー密度が高く自然放電がないため、大容量かつ家庭用カセットボンベのように長期保存ができる点に優位性がある。また、高圧ガスタンクなどと比較して、非常にコンパクト設計となるため、住む人に合わせた提案も期待できる。
関連情報
https://www.sekisuihouse.co.jp/
※1 家庭の電力を賄う自家発電燃料として本格的に水素を活用した実証において(2023年6月30日現在、積水ハウス調べ)
※2 水素を可逆的に吸収・放出することができる合金。本実証実験で使用する水素吸蔵合金は、高圧ガス保安法の適用外、消防法上の非危険物であるため、広い範囲での導入が期待。
※3 外皮の断熱性能等の向上や、高効率な空調・給湯・照明器具等の導入による省エネで使用エネルギーを減らしながら、太陽光発電パネル等の再生可能エネルギーを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロ以下とすることを目指した住宅のこと。
※4 北海道以外のエリアにおける請負・分譲住宅のZEH比率。
※5 ZEH Ready以上の受注戸数の比率。
※6 ZEH Oriented以上の販売比率。
構成/清水眞希