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動物園が果たす生き物の命をつなぐ役割とは?名古屋の東山動植物園で「生きる」を身近に感じる

2023.07.23

絶滅危惧種『ニホンメダカ』には「ご当地メダカ」が存在する。

ここからは、身近なメダカに目を向けよう。

主に日本に生息する『ニホンメダカ』は、大きく分けて「キタノメダカ」と「ミナミメダカ」の2種に分類される。日本国内の大半が「ミナミメダカ」である。その生息地は、「キタノメダカ」は青森県から兵庫県の日本海側に生息しており、「ミナミメダカ」は東京をはじめ、東北地方の太平洋側から南日本と、沖縄まで広く生息している。

ニホンメダカをはじめ中国の一部や朝鮮半島に生息するメダカは「淡水魚」で、その他の地域のメダカは「熱帯魚」である。また、メダカの遺伝子をたどっていくとメダカの起源はインドだと言われており、「セトナイメダカ」がメダカの祖先だと言われている。現在、西はインド、東は日本までの間でしかメダカの種は確認されていないのだとか。

<キタノメダカ>

<キタノメダカ>

特に発見の歴史が古く19世紀末に分類された「ミナミメダカ」は繁殖や成長のプロセスがわかりやすく、実験が簡単なため「生殖生物学(生物の子ども作りや遺伝子の研究をする科学)」や「発生生物学(生物の成長や赤ちゃんのでき方を研究する科学)」のモデル生物として、生物の基本的なしくみを研究し、医学や生物学の分野に役立てることで広く利用されているのだ。

繁殖のしやすさとライフサイクルの速さから、近年のメダカブームで様々な色彩のメダカが取引されているが、そのベースとなっているメダカは「ミナミメダカ」である。

<ミナミメダカ>

<ミナミメダカ>

日本国内には多くのご当地メダカが存在する。同じ種類のメダカでも、住んでいる場所によってちょっとずつ違う形や特徴を持って進化した種を「地域変異型」と言うそうだ。

その中には、名古屋市内の平和公園で戦前に採集された「名古屋メダカ」が含まれている。

身近な「種の保存」を体験して知る「名古屋メダカ里親プロジェクト」

東山動植物園では毎年4月から5月頃に募集される「名古屋メダカ里親プロジェクト」という、名古屋市在住の小学生3年生から中学生、名古屋市内の小中学校を対象に、絶滅が危惧されるご当地メダカ「名古屋メダカ」の里親プロジェクトが開催されている。

個人・学校に対して10匹の名古屋メダカを譲渡して、各家庭や学校で飼育観察に励んでもらい、10月頃には再び世界のメダカ館にある田園水槽(田園地帯を模した展示エリア)に放流してもらうという取り組みである。

先にも紹介したように、メダカのライフサイクルは早く、産卵も早い。里親として譲渡され、放流される10月までの間に繁殖し、個体が殖えて戻ってくるケースも少なくない。

<ナゴヤメダカ>

<ナゴヤメダカ>

名古屋メダカの種の保存にチャレンジする夏から秋にかけて、色んなドラマが起きるようだ。

里帰り前に絶滅してしまうケースや、あまりにも増え過ぎた里親さんからはフライングで殖えた分の名古屋メダカを里帰りさせるケース。親メダカが産卵しない、メダカが少なくなってきたなど、「名古屋メダカ里親プロジェクト相談窓口」に助言をもらいながら、4ヶ月ほどで「種の保存」を体感する。

里帰り後も、毎年継続して名古屋メダカの繁殖に取り組む家庭も殖えているそうだ。

命を繋ぐことの大変さや、命の不思議、環境に関する生命に及ぼす影響などの知識、昨今SDGsで取り上げられる取り組みについても、「名古屋メダカ里親プロジェクト」を通して、現実的に受け止められるとても良い学びの機会である。

東山動植物園の「種の保存」の取り組みは、大きな動物達だけでなくメダカのような親しみある生き物にまで幅広く及んでいる。また維持するだけでなくその活動を「名古屋メダカ」という身近な生き物の飼育を通して来園者に「種の保存」に対する認知と学びの場を提供している。テレビやラジオネットニュースなどで動物の赤ちゃんが生まれたというニュースを知ったときには、その生命の誕生の裏にはとてつもない年月とたくさんの人たちの努力と学び愛情があることを思い出してほしい。

【取材協力】
・名古屋市東山動植物園 (HP
〒464-0804 名古屋市千種区東山元町3-70
TEL:052-782-2111
Twitter (LINK)/ YouTube(LINK)/ Facebook(LINK

【写真/記事】
・動物園写真家 / 動物園ライター 阪田真一(HP)/ Twitter/ note

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