こんにちは。
弁護士の林 孝匡です。
宇宙イチ分かりやすい法律解説を目指しています。
浮気裁判例をザックリ解説します。
▼ 本日のポイント
・ウチの父ちゃんが銀座の女に奪われた!
・あの女に慰謝料請求します!
・は、無理
ーーー 最高裁さん、Why?
最高裁
「子供は父の不倫相手に損害賠償請求できないのです」
以下、理由をお届けします(最高裁 S54.3.30)
※ 争いを一部抜粋して簡略化
※ 判決の本質を損なわないよう一部フランクな会話に変換
登場人物
以下は、不倫当時の年齢
▼ 妻
・32歳
・子供3人
▼ 夫
・マサオ(仮名 35歳)
・自営業(自動車販売)
・精力的に仕事はするが、女性関係にはダラしない面があった
▼ Y子(浮気相手)
・麗子(仮名 28歳)
・銀座のホステス
・25歳くらいから上京して銀座で夜の蝶に
・店で上位3位をキープする売れっ子
どんな事件か
▼ 銀座で芽生えた恋
結婚して9年くらい経ったころ、マサオと麗子が出逢います。銀座のサロン「明日では遅すぎる」というお店で出逢います(店名サイコー)
麗子は男に貢がせまくるような悪女・・・じゃなかったんです。マサオと男女関係になる前も、なってからも貢がせるようなことはせず。性格は相当しっかりしていたようです(高裁の認定)
▼ 麗子が出産
その3年後くらいのこと。麗子がマサオの子供を出産します。マサオが金を融通してやるのかと思いきや、ここでも麗子の強さがあらわに。マサオから援助を受けずに、自分の稼ぎで子供を育てていきました(なにものだよ麗子)
▼ オタクの旦那、不倫してますよ
その4年後。ある者から妻に電話が入りました。
ーーー 奥さん、その人は誰ですか?
妻
「名乗らないんです」
ーーー で、その方の用件は?
妻
「私に『あなたの夫は不倫している、子供も生まれ認知もしている』といいました。その時期、私は3人目の出産直前だったのですが、それを聞いて精神的にキツく、逆子となって苦しい出産になりました」
この時の子供の年齢は、16歳・6歳・0歳です。
▼ 麗子が独立
麗子が銀座にBar「雪」をオープンします。
▼ マサオが家を出る
その2ヶ月後、マサオは家を出ます。マサオは毎月数万円を妻に送金していました。
▼ マサオと麗子が同棲
その3年後。マサオと麗子が同棲をスタートさせます。ここでも麗子の芯の強さが発揮されます。
・マサオから生活費を受け取らず
・マサオからお金をもらったり借りたこともない
(以上、高裁の認定)
さらに「妻のもとに帰りたければ、どうぞご自由に」という態度だったようです。去る者おわず!
妻と子どもが訴訟を提起
妻と子どもが、麗子に対して慰謝料請求をしました。子供の主張はザックリいえば「ウチの父ちゃんとSEXしただろ、子どもとして精神的苦痛を負ったわ」というものです。
ジャッジ
地裁では子どもが勝ったんですが(30万〜50万円)、最高裁でチャブ台がえし。子どもの負けです。
最高裁
「子供は損害賠償請求できないです」
ーーー どうしてですか?
林
「親父が愛人つくっても、親父は子供に愛情を注げるじゃんYo!ってことです」
最高裁
「そこのザックリ弁護士、静粛に!・・・で、正確にいいますと、父親が未成年の子に愛情を注ぎ、教育を行うことは、他の女性と同棲するかどうかに関わりなく、父親みずからの意思によって行えるから、他の女性との同棲の結果、子供が事実上父親の愛情、教育を受けられず、そのため不利益を被ったとしても、そのことと女性の行為との間には相当因果関係がないからです」
さいごに
妻からすれば「あのクソアマ!こんな幼い子がいるのに不倫しやがって」と、子ども独自の慰謝料も請求したいと思いますが、最高裁に照らせば無理なんです…。
子供の慰謝料はご自身の慰謝料として多めに請求しておきましょう。子供が幼いという事情はご自身の慰謝料アップの材料となるので。
今回は以上です。「こんな解説してほしいな〜」があれば下記URLからポストして下さい。ではまた次の記事でお会いしましょう!
取材・文/林 孝匡(弁護士)
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