空き家サイトの浸透で格安空き家が見つかりやすくなっているというものの、世に出回っていない〝掘り出し空き家〟も多くある。お宝級の空き家を探すには、空き家活用(株)代表・和田さんは「ネット上ではなくアナログな方法で探すのが一番だ」と解説する。
空き家との出会いは「地元とのふれあい」から
空き家は、住んでいる人がいないからといって、すべての物件が売りに出されているわけではない。
「当たり前の話ですが、所有者に売却の意志がなければ空き家は売りに出されません。売られていない空き家の中には、状態のいい物件が多いです」(和田さん)
サイトに掲載されていない「いい空き家」を探すためのポイントを和田さんに聞いた。
「現地へ行って、役所の人や地元の人に聞き込みをして情報を集める。これが一番の近道です」
デジタルな時代になぜアナログな作業が近道なのか。
「〝祖父母が住んでいた、自分が小さい頃に住んでいた〟といった事情でネットを通して知らない人に売ることに抵抗がある方もいます。なので空き家のある町へ足を運んで地元の人に、『私はこの町に移住したい』とか『週の半分はここで暮らしたい』と話しながら情報を集めるのが一番いい。いきなり地元の人に話しかけるのは抵抗があるというのであれば、市町村の移住促進課へ出向いて話を聞いてみるのもありです。そういうふれあいによって自分の人となりを見せることで信用が得られます」
信用以外にもこんな効果もある。
「地元の人と話すことで、生活のためのルールが見えてくる。自治会の仕事はこんな感じで、消防団にも入らなければならないとか。都会の生活ではお金を払って業者に任せていたことも、地方では人手不足のためみんなで分担することが多い。そんな生活サイクルを知ることで、デュアルライフのシミュレーションができます」
下の欄に和田さん推奨のいい空き家探しの手順を記した。理想の物件探しの参考にしてほしい。
POINT 1|移住後に実現したいことをイメージしてまずは移住先から決めよう
「在宅勤務の日は地方の拠点で仕事して、終わったらサーフィンを楽しみたい」といったデュアルライフの目的を立てることが重要。住みたいエリアが見えないと地元への愛着が湧きにくく、現地で空き家情報を得ようとしても「この人は本当にここに住みたいのだろうか」と疑問を持たれ、状態のいい空き家の紹介へとつながらない。
POINT 2|雨漏り物件、インフラの欠如、管理不足の物件は候補から真っ先に外す!
ネットに掲載されている物件、地元で紹介された物件とも、自分の目でしっかり確かめる。地元へ行くことで、地元業者に住める状態にするためにかかるリノベーション費用がいくらぐらいかかりそうか、上下水道の管理費用がどのくらいかかるのかといった2拠点生活を立ち上げる際に必要な金額がハッキリしてくる。
POINT 3|失敗したくなければ「1年間賃貸で借りてから」という選択肢も
一番大事なのは地域の人に「ここに住みたい」というメッセージを伝えること。いい空き家が見つからなければその地域の賃貸物件を借りてデュアルライフを仮スタートさせて情報を収集するという方法も。またよさそうに見える空き家なら1年だけ賃貸契約にして、居心地がよかったら購入するという交渉をするのもいいだろう。
取材・文/渡辺雅史 イラスト/川﨑タカオ