働き方が変わり、移住への関心が高まる中、地方の空き家物件を手に入れてデュアルライフを模索する人が増えている。〝負動産〟として揶揄されてきた空き家だが、各地に点在するお宝級の空き家を見つけることができれば、理想の暮らしを実現できるかもしれない。
空き家活用(株) 代表取締役社長
和田貴充さん
独自に集めた16万件の空き家データから売り手と買い手をつなげたり、空き家を調査、閲覧できるアプリを自治体に提供したりする事業を2014年より展開。
「直せば住める」そんな家を見極める
今、空き家の取引が活況だ。全国の空き家を紹介するWebサイトで「価格の安い順」で検索すると、ワンコインで購入できる物件が次々と表示される。
「空き家物件は購入した後、住める状態にするリノベーションが一番大事です」と話すのは、空き家活用(株)代表の和田貴充さんだ。
「中には内装工事を施しても住めない、取り壊すしかないような物件もあります。まずは手を加えれば住める、というものを見つけることが大事。安いから買おう。ダメだったら売ればいいや。という感覚で選んではいけません」
では〝お宝級の空き家〟の条件を満たすポイントは何か?
「家の劣化を早める雨漏りがないこと。それと電気、水道が通っていること。水道は下水道もあるほうがいいです。ないと浄化槽などを新たに設置する工事が必要になります」(和田さん)
また、空き家に工事はつきもの。「そのまま住める家はほとんどない」と和田さんは言う。では工事費はどれぐらいかかるのか。
「もしトイレ、風呂、キッチンなどの水回りと内装を合わせたフルリノベーションを施工会社に任せると300万〜500万円ほどかかります。ですがDIYが好きな人は趣味を兼ねて自分で内装もやるので、リノベーション費用を抑えられます」(和田さん)
空き家ライフのコストを抑えるポイントはネットで安い物件をサーチするのではなく、DIYのスキルにあるようだ。
ちなみにどんなに安く購入して自力でリノベしても都内のマンションのような資産運用利益は見込めなさそう(下図)。現在の住まいとは別の居場所を持つというライフスタイルこそが価値となるのだ。
空き家投資はリノベーションしても利益は生まない!?
リノベーションで生じる付加価値は経年による下落率が高い。資産運用に購入するのは非現実的だ。
手軽に入手するなら空き家サイトが一番早い
空き家を手に入れる第一歩として活用したいツールが空き家取引サイトだ。物件の写真と販売価格を見ると夢が膨らむ。そんな空き家を全国規模で検索できる「空き家ゲートウェイ」を運営するYADOKARI・川口直人さんに話を聞いた。
「弊社運営の『空き家ゲートウェイ』で紹介する物件の価格は100円か100万円の2種類のみ。100円物件の中には住む状態にするのが厳しいものもありますが空き家に出合っていただく第一歩をお手伝いしたいと考えています」
一方、自治体が関わる「空き家バンク」は移住を前提とした物件を多く紹介。水回りを修理するだけで住める掘り出し物もある。
現地へ行かなくても画像や動画で物件を確認できるので、各サイトの特徴をつかめば、空き家探しの楽しさは広がるはずだ。
YADOKARI(空き家ゲートウェイ)
川口直人さん
2019年にオープンした「空き家ゲートウェイ」のサイト運営に携わる。サイトには福島県国見町、長野県中野市と連携したプロジェクトも。
ネットでの空き家の取引方法はこの2パターン!
取材・文/渡辺雅史 イラスト/川﨑タカオ