「空者」の読み方と意味
「空者」の読み方
『空者』の正しい読み方は、『うつけもの』です。空は『うつけ』と読み、『中がうつろで空っぽなこと』を意味します。空者は日常生活であまり見聞きしない言葉であるため、読み方が分からないのは当然かもしれません。
一説によると、戦国武将の織田信長は、他の武将や民衆に『尾張(おわり)の大うつけ』と呼ばれていました。尾張とは、織田氏が勢力を拡大した地域で、現在の愛知県西部に当たります。
濃尾地方(愛知・岐阜・三重の一部)では、空者は『愚か者』を意味します。信長は奇抜な身なりや常識外れの振る舞いから、空者や戯け者(たわけもの)と揶揄されることが多かったようです。
「空者」の意味
空者には、『不注意などでぼんやりしている者』『愚か者』『まぬけ』などの意味があります。空には、空っぽという意味があるので、漢字から意味を読み解くのはそれほど難しくないはずです。
現代において、空者を標準語として使う人はあまりいないと考えられます。見聞きするとすれば、歴史小説や時代劇の中でしょう。江戸時代に成立した『醒睡笑』には次のような一文があります。
- とかく女房にたたかるるは日本一のうつけ者ぢゃ(咄本・醒睡笑)
※出典:空者(うつけもの)とは? 意味や使い方 – コトバンク
「空者」の語源
空者の語源は、『空ける』だといわれています。空けるは、あけるではなく『うつける』と読み、『気が抜けたようになる』『ぼんやりする』『中がうつろになる』という意味があります。例えば、心ここにあらずでぼんやりとした表情は『空けた顔つき』と表現できるでしょう。
※出典:空ける(ウツケル)とは? 意味や使い方 – コトバンク
空けるには複数の読み方があり、意味も一つだけではありません。空けるを『あける』と読むときは、『今までそこを占めていたものをなくす』『からの状態にする』『空間・時間を作る』などの意味になります。
「空者」の類語・言い換え表現
空者は現代ではあまり用いない言葉であり、類語や他の表現に言い換えるのが一般的です。空者の類語である『愚か者』と『たわけ者』の意味と例文をチェックしましょう。
「愚か者」
空者は、『愚か者(おろかもの)』や『愚者(おろかもの・ぐしゃ)』に言い換えられます。現代でもよく使われる表現なので、意味や用途を理解している人は多いでしょう。『愚か』には以下のような意味があります。
- 頭の働きが鈍いさま。考えが足りないさま。
- ばかげているさま。
- 未熟なさま。
愚か者や愚者は、思慮が足りない未熟な人やばかげた人のことで、意味合いとしては空者とほぼ同じと考えてよいでしょう。愚か者を使った例文を紹介します。
【例文】
- あいつは人の話に耳を貸さない愚か者だ。
- 戦争は愚か者が行う行為だ。
- 彼はあんなをうわさ信じるような愚か者ではない。
「たわけ者」
『たわけ者』も空者と似たような意味を持つ言葉です。『戯け者』と書き、『ばかげたことをする人』や『わざと滑稽な言動をする人』を指します。時代劇などで、役人が下っ端に向かって「このたわけ者が!」「たわけたことを言うでない」と罵倒するシーンを見たことがある人は多いでしょう。
たわけ者は全国で通じる言葉ですが、元々は岐阜を中心とする美濃地方でよく使われていた言葉でした。うつけとたわけは類語ではありますが、たわけの方が相手をおとしめるニュアンスが強いともいわれています。
怒りをぶつけたり、人を罵ったりするときの表現なので、むやみに使うのは控えた方がよいでしょう。たわけ者の例文をいくつか紹介します。
【例文】
- あいつは世間知らずのたわけ者だ。
- あの人の行動は、たわけ者以外の何者でもない。
- たわけ者め!
読めたらスゴイ難読漢字
漢字から意味は何となく想像ができるものの、何と読めばよいか分からない難読漢字は、他にもたくさんあります。日常生活ではほとんど用いる機会はありませんが、読み方や意味を知ると自分の世界が広がり、豆知識としても披露できるでしょう。
「束子」
『束子』は、たばこではなく『たわし』と読みます。辞書に『掃除・料理・洗い物などに用いる道具で、しゅろの毛やわらなどを束ねたもの』とある通り、束子は台所用品のたわしのことです。
しゅろ(棕櫚)は、ヤシ科の植物の総称を指します。昔は、しゅろやわらなどを束ねて使っていましたが、現代はヤシの実から取れるパーム(ココナッツ繊維)で作られています。束ねた繊維を切りそろえた後、棒状にして楕円形に整えるのが一般的です。
【例文】
- そんなに束子でゴシゴシこすったら、表面に傷が付くぞ。
- この汚れは束子を使わないと取れないだろう。
「序で」
『序で』の読み方は『ついで』です。「序でに○○もやっておいて」など、『あることを行うときに、いっしょに他のことにも利用できる機会』を意味します。漢字で書くと難しいですが、言葉自体は日常会話でもよく使うのではないでしょうか?
語源は動詞の『序でる(ついでる)』で、『順序をつける』や『順序の通りに並べる』といった意味があります。「序でにする」というと、真剣さに欠けた印象がありますが、日常会話の中では相手に余計な気を遣わせないように、あえて序でを使う人もいるようです。
【例文】
- 序でにあなたの席も取っておいたよ。
- 金沢に行く序でに、富山にも立ち寄ります。
- 風邪薬を買いにいく序でに、マスクも買ってきてくれないか?
構成/編集部