切手がある言葉を略した呼び方であると、知らない人は多いでしょう。郵便制度が創設された当時は、その存在を定着させるためにさまざまな工夫がされました。切手と呼ばれるようになった背景や、歴史などを紹介します。
切手は何の略?
切手は書類や手紙を郵送する際に必要なものです。現代では当然のように存在していますが、市民の間に定着させるために当時一般的だったものの名前を流用しました。元々の呼び名について見ていきましょう。
「切符手形」を略した呼び名
切手は『切符手形(きりふてがた)』を略した言葉です。現代では聞き慣れない言葉ですが、金銭を受け取った証拠となる書類や金券を意味します。
日本の郵便切手は近代郵便制度の創始者、前島密(まえじまひそか)によって考案されました。市民の間に浸透していた切手や切符手形といった呼び名を取り入れたとされます。
日本では昔から切符手形がよく使用されていたので、郵便代金を受け取った証明となるものとして分かりやすいだろうと考えて採用されました。
英語では「stamp」
英語では、切手のことを『stamp』と呼びます。郵便物に切手を貼るのではなく、スタンプを押していたことに由来します。
記念切手は英語で『commemorative stamp』といい、郵送料や郵便料金を表す単語は『postage』です。
外国でも、それぞれの国の郵便制度に基づいた切手が発行されています。日本以外の国が発行した切手は『外国切手』と呼ばれ、さまざまなデザインがあります。
その国を表す象徴的な人物・植物・動物・歴史的建造物がデザインされることが多く、コレクションを楽しむ人々も少なくありません。
日本の切手の歴史
日本の切手の歴史を知ると、切手の語源がよく分かります。郵便切手の誕生やブームなどの歴史を見ていきましょう。
切手は江戸時代から使われていた言葉
日本では昔から、お金を払って得た権利を証明する書類を『切手』と呼んでいました。江戸時代に商品券の一種として、すでに切手という呼び名が定着していたのです。
例えば、米切手や饅頭(まんじゅう)切手などがありました。事前に切手を購入しておき、後から品物と引き換える仕組みです。
食品や道具などと引き換えるだけでなく乗船券や運賃などにも利用され、一般的な存在でした。電車に乗る際に必要な切符は、切り符や切符手形を発音しやすく『きっぷ』と言い換えたものといわれます。
郵便制度を確立した前島密は、一般市民の間でなじみ深い切手という呼び名を使うことで、スムーズな郵便制度の導入を目指しました。
郵便切手が発行されたのは明治時代から
1871年4月20日に、日本初の郵便切手が発行されました。48文・100文・200文・500文の4種類の金額があり、向かい合った竜の図案が使われたことから『竜文切手』と呼ばれています。
偽造を防止する目的で、あえて複雑な模様が使われました。切手が発行された当初の大きさは19.5mmの正方形で、現在使用されているものよりも小型です。
この切手が発行された当時の郵便料金は距離に合わせて金額が変わるものでしたが、発行から2年後に全国統一の料金に改定されました。
1950~60年代ごろ切手収集が大ブームに
1950〜60年代ごろ、日本で切手収集ブームが起きました。ブームの始まりは、お菓子のおまけとして切手が採用されたことだとされています。
手ごろな値段で入手でき、観賞価値が高かったことから、大人だけでなく子どもの間にも切手収集が趣味として広まりました。記念行事を祝して、一定枚数が発行される『記念切手』を入手するために、郵便局に行列ができたこともあります。
現代ではオンラインショップで切手が購入できるようになったため、かつてのように並んで手に入れることはなくなりました。
ブーム当時に比べて収集家が減ったこともあり、高額で取引されていた切手の価値も全盛期に比べれば下がっている傾向です。しかし、ブームに関係なく現在でも記念切手は発行され続けており、愛好家の間で楽しまれています。
切手の種類
切手にはさまざまな種類がありますが、大きく二つに分けられます。種類別の特徴を見ていきましょう。
通常使用に「普通切手」
普通切手は、郵便料金を納めることを目的にした切手のことです。一般的に切手といえば、普通切手のことを指し、1~500円まで幅広い金額があります。
ニーズに合わせて使えるように、慶事用・弔事用も販売されています。郵便物の大きさや重さに合わせて既定の料金分を貼付しますが、切手を貼る枚数には制限が設けられていません。複数の切手を組み合わせて貼ってもよい決まりです。
ただし、受け取った相手が不快に思わないように、『余った切手の寄せ集めを使った』と感じさせない配慮が必要です。
コレクションに「特殊切手」
特殊切手は、特定のテーマに合わせた美しい絵や図案が施された切手のことです。行事やイベントを記念して発行される『記念切手』や、その土地ならではのものをデザインした『ご当地切手』など、さまざまな種類があります。
鑑賞価値が高く、一定期間のみ販売されることが特徴です。切手収集家が集めているのは、こちらの特殊切手や外国切手などが該当します。
また、切手の内側部分に好きな写真やイラストなどを印刷して、オリジナルのフレーム切手を作れるサービスもあり、思い出作りや記念品などに使用できます。
参考:フレーム切手とは | フレーム切手 オリジナル切手作成サービス – 日本郵便
構成/編集部