『子は鎹』は、ひと昔前によく見聞きした言葉です。若い世代ではあまり使われなくなっていることもあり、ことわざ自体を知らない人もいるかもしれません。ことわざの意味や、読み方を解説します。例文や、難読漢字を使ったことわざも確認しましょう。
「子は鎹」の読み方は?
『子は鎹』の『鎹』は日常的に使われることが少ない漢字です。何と読むのでしょうか?読み方と意味、『子は鎹』を使った例文を紹介します。
読み方は「こはかすがい」
『子は鎹』の読みは、『こはかすがい』です。子は『子ども』、鎹は主に『扉や材木をつなぎ留めるための金具』を指します。
鎹の意味は、3パターンです。『戸を閉めるためのかけがね』『コの字型の大きな釘』が主な意味ですが、『子は鎹』のように『人をつなぎ留めるもの』を指すケースもあります。
子どもは『鎹』という道具のように夫婦をつなぎ留める役割を果たしているという意味で、ことわざや格言のように使われます。
『鎹』を使ったことわざには『豆腐に鎹』もありますが、最近ではあまり聞く機会はありません。豆腐に鎹を打ち込んでも、つなぎ留られないという意味で使う言葉です。
「子は鎹」を使った例文
『子は鎹』を使う場面は限られており、夫婦仲や子どもを持つ重要性について述べるときに使われるのが一般的です。
『不仲であっても子どもがいれば、夫婦は別れずにやっていける』『子どもへの愛情によって、夫婦の絆が深まる』という表現が多いでしょう。
主な例文を紹介します。
【例文】
- 『子は鎹』は、落語の題としても知られている
- 子は鎹というが、本当にそうだと気づかされた
「子は鎹」の類語と対義語
『子は鎹』には、似たことわざや反対の意味を持つことわざがあります。それぞれ、読み方と意味を確認しましょう。類語や対義語以外にも『親の心子知らず』や『三つ子の魂百まで』など、子どもに関することわざは数多くあります。
縁の切れ目は子で繋ぐ
『縁の切れ目は子で繋ぐ(えんのきれめはこでつなぐ)』は、子は鎹とほぼ同じような意味です。『縁の切れ目』という表現から、夫婦の間が冷え切って関係が悪くなっていることが分かります。
関係が悪くなり、別れ話が持ち上がっても、子どもがいることによって縁がつながり、婚姻を継続できるという意味です。
『縁の切れ目』を使った有名な慣用句には、『金の切れ目が縁の切れ目』があります。こちらは『主に男女関係には金銭が重要であり、お金がなくなれば男女の縁も切れる』という意味で、男女関係以外の一般的な人間関係にも使われる言葉です。
子は三界の首枷
『子は三界の首枷』は『こはさんがいのくびかせ』と読みます。『三界』は仏教関連の用語でいくつかの意味があり、『過去・現在・未来』または『欲界・色界・無色界』です。
子どもが生まれると、親は子どもをいつまでも気にかけてしまい、一生首にかけた枷のようにつきまとう意味で使われます。
大人になっても放蕩を続ける子どもに親が悩まされているケースで使われることが多く、親子の切れない縁を表す格言です。
夫婦の関係を表す『子は鎹』とは使う場面が異なりますが、子どもに対する印象の意味で、対義語として分類されます。
他にもある難読漢字を使ったことわざ
難しい漢字を使ったことわざは、『子は鎹』以外にもあります。読み方を覚えておくと、格言を使う場面でも役立ちます。読み方と意味を見ていきましょう。
高嶺の花
『高嶺の花』は『たかねのはな』と読みます。意味は、遠くにあって手に入れられないものです。転じて『美しい人』や『魅力のあるもの』を指します。
『高嶺』の意味は『高い峰』です。山の頂上にある花は手に入れるのが難しいというところから、自分には手の届かない魅力的な人・ものを指すようになったといわれます。
『花』という表現から、美しく才能のある女性を『高嶺の花』と表すことが多いでしょう。
高嶺の『嶺』は『れい』『みね』と読み、『峰』と同じ意味です。現在では『峰』が使われるケースが多いことから、難読漢字に分類されます。
盲亀の浮木
『盲亀の浮木』は『もうきのふぼく』と読みます。仏教の経本に出てくる『盲亀浮木のたとえ』がもとになっていることわざです。『めったに起きない出来事』や『奇跡』を表します。
100年に一度海の底から海面に上がってくる盲目の亀が、広い海に漂う浮いた木の穴にぴったり頭を入れるのは困難であるが、その奇跡が起こったという例え話です。海面に上がろうとしているときに木が浮かんでいる確率も低く、目が見えていないことから穴の位置も亀には分かりません。
盲亀浮木は、3000年に一度咲くといわれる想像上の花『優曇華(うどんげ)』の話と併せて、芝居の口上にも使われます。
莫逆の友
『莫逆の友』は『ばくぎゃくのとも』もしくは『ばくげきのとも』と読みます。漢字からは想像しにくいですが、『心が通じ合う親友』という意味です。
由来は中国の古典で『莫逆於心』または『莫逆友』として使われています。莫逆於心は「心に逆らうこと莫(な)し」の意です。
※出典:
莫逆の友(ばくぎゃくのとも)とは? 意味や使い方 – コトバンク
似た表現として、『盟友』『無二の友人』『親友』などがあり、『莫逆の友』を使うシーンはかしこまった場が多いでしょう。同じ中国古典から生まれた『竹馬の友』は、幼なじみを指します。
構成/編集部