『劈く』は比喩表現として使われることが多く、物語の中でよく見かける言葉です。漢字にすると読みにくいですが、聞いたことがある人は多いでしょう。読み方と意味を紹介します。例文や言い換え表現、劈く以外の難読漢字も確認しましょう。
「劈く」の読み方と意味
『劈く』の『劈』は、あまり見かけない漢字です。読み方は何なのでしょうか?劈くという言葉の読み方、意味を解説します。語源といわれる言葉についても見ていきましょう。
「劈く」の読み方
『劈く』は、『つんざく』と読みます。『劈』は音読みでは『へき』、訓読みでは『さく』と読む漢字です。
『劈開』(へきかい)、『劈頭』(へきとう)などいくつか熟語はありますが、日常会話ではあまり使われません。劈開は鉱物用語で、鉱物の割れ方に関する言葉です。劈頭は『最初』という意味を持ち、物語の始まりを意味する四字熟語『開巻劈頭』などに使われます。
中国語では古くから使われており、中国古典に親しんでいる人であれば『劈』という漢字を目にする機会はあるでしょう。水滸伝や封神演義には『劈』の字を含む架空の武器が登場し、中国武術には『劈挂拳』と呼ばれる拳法があります。
「劈く」の意味
『劈く』には、『強い力で物体を突き破る』という意味があります。『劈』という漢字にも『切り裂く』という意味があり、字が持つ要素と似通った意味合いです。
『劈』は近代文学で『劈る(きる)』『劈む(きざむ)』『劈かれる(くだかれる)』のように表現されているケースもあり、中国語の『劈』が持つ、刀や斧で木を縦に割る様子と似た意味で使われています。
「劈く」の語源
『劈く』は古語の『つみさく』が語源であるといわれています。手でつまむ様子を表す『抓』と『裂く』が組み合わさった言葉です。
漢字では『擘(つみさく)』が当てられており、『つんざく』は『擘く』と書かれることもあります。 『つみさく』は、手で植物をつまむように裂く様子を表します。
中国語でも『劈』には『木を割る』『葉を摘み取る』という意味があり、成り立ちが植物に関係しているところは同じです。
「劈く」の使い方と類語と言い換え表現
『劈く』は、どのようなときに使える表現なのでしょうか?使い方と例文を紹介します。また、劈くの言い換えとして使える類語も確認しましょう。
「劈く」の使い方と例文
近代文学や現代では、『劈く』が比喩表現としてよく使われます。『耳を劈くような悲鳴が響き渡る』とした場合、『鼓膜を突き破るかのように甲高く大きな悲鳴』という意味です。
そのほか、『闇を劈く光』『山を劈く雷鳴』『劈くような風』といった比喩表現もあります。それぞれ意味は多少異なりますが、『切り裂くような』『突き破るような』という意味です。
比喩ではなく何らかの物体を突き破る場合にも使われますが、『皮を劈く(さく)』『腹を劈く(さく)』など、本来の『劈』の読みを当てているパターンが多くなっています。しかし、一般的には『裂く』『割く』という漢字が当てられるため、あまり目にする機会はありません。
【例文】
- 近くの屋敷から、劈くような女性の悲鳴が聞こえた
- まるで大地を劈いたような地割れが見えた
「寸裂」
『寸裂』(すんれつ)は『ずたずたに裂けること』を意味する単語です。しかし、堅苦しい表現で似た言葉も多いため、現代ではあまり使われることはありません。同義語の『寸断』『ずたずた』という方が伝わりやすいでしょう。
『寸裂』『寸断』『ずたずた』は、どれも物が細かく切り刻まれている様子を示します。 『劈く』には物を突き破る意味もあり、使い方によっては置き換えが可能です。
ただし、現代語で『劈く』を使用する場合は、ほとんど比喩表現として使われます。 『ずたずた』には『心がずたずたに引き裂かれた』という比喩表現があり、『胸を劈くような』に近い印象を与えられるでしょう。
「轟音」
『劈く』を音の表現として使う場合、『轟音』とも言い換えられます。『劈く』を『轟音』に置き換えられるケースは、雷鳴や低く響き渡るような音です。
轟音には『とどろきわたる音』という意味があり、大砲や爆弾など激しく荒々しい音を表現するときに使われます。 『警笛』や『風を切る』といった高い音は『轟音』とは異なるため、『けたたましい』『風切り音』『不協和音』など、状況に合わせた言葉に置き換えましょう。
女性の大きく高い声を表す場合には、『絹を裂くような悲鳴』『甲高い悲鳴』『金切り声』などの表現があります。そのほか、大きな叫び声を表すには『絶叫』『咆哮』『怒号』のような表現も使えるでしょう。
この難読漢字読めますか?
『劈く』以外にも、読みにくい漢字は存在します。日常的に使われている単語でも、漢字にすると読むのが難しいケースは多いでしょう。意味が分かっていても読むのが難しい漢字を紹介します。
「甚振る」
『甚振る』は『いたぶる』と読みます。『甚』は『じん』『はなはだ(しい)』と読み、『振』の読み方は『しん』『ふ(る)』です。
甚は『程度を越えた様子』を意味し、『甚振る』と書くと『激しく揺する』という意味になります。
しかし、現代の日常会話で『甚振る』を使う場合、『嫌がらせのように痛めつける』もしくは『脅して金品を奪う』といった意味で使われることが多いでしょう。
相手に金品を要求する行為は『ゆする』ともいわれ、『相手に揺さぶりをかける』という意味を持ちます。
【例文】
- 獲物を甚振る猫のような目をしている
- 人を甚振って楽しむのは、趣味が悪い
構成/編集部