「SEL」という言葉をご存じだろうか?
近年アメリカを中心に世界中で広がりを見せている教育トレンドだ。日本でも学校教育や企業研修などで注目を集めはじめている。
そこで今回の記事では、SELと一般的な教育との違いや、SELによって高めることができる能力についてまとめた。導入事例や実際のトレーニング内容なども補足しているので参考にしてもらいたい。
注目の教育メソッド「SEL(セル)」とは?
SEL(セル)とは「Social Emotional Learning」の頭文字から成る言葉だ。言葉の通り「Social(社交性、社会性)」や「Emotional(感情、情動)」に関する能力を高める教育メソッドのことを指す。日本語では「社会性と情動の学習」と呼ばれる。
SELでは、体験やトレーニングを通して自己理解を高め、自分の感情をコントロールする術を学ぶ。同時に、他人の気持ちを深く感じ取り、コミュニティ内において友好的な関係性を構築・維持する力を育む。
社会生活に必要な対人関係スキルを身につけることは、子供の意欲や自己肯定感をアップさせ、ストレスの軽減や問題行動の減少に繋がるという。心の安定や周囲との良好なコミュニケーションによって、間接的に学力にも良い影響が出ることがわかっている。
ちなみに語呂は似ているが「STEM(科学・技術・工学・数学の4つの学問を学ぶ)教育」とはまったくの別物だ。性質としては正反対といえるかもしれない。
SELの主な目的と伸ばせる能力
SELは、主に「非認知能力」を伸ばすための教育手法として知られている。
■非認知能力
数値化が難しい内面的な特性(能力)のこと。協調性、積極性、忍耐力、創造性、コミュニケーション能力、意欲、自制心、責任感、誠実性など、社会生活に強く影響を及ぼす能力が主に当てはまる。「社会情緒的コンピテンス」とも呼ばれる。
非認知能力に対して、「認知能力」は数値化できる能力を指す。テストで測ることができる総合的な学力や、計算力、言語力、記憶力、IQなどのことだ。SELの直接の目的は認知能力を伸ばすことではない。
では、SELによって高めることができるのはどのような能力なのだろうか?
SELと関係の深い非認知能力の具体例として、以下のようなものがある。
自己認知やセルフコントロールスキル
自己認知とは、自分自身の性格や価値観、能力や感情を正しく理解することだ。自己認知を基に、自身の感情や行動を制御する力をセルフコントロールスキルという。
セルフコントロールスキルが伸びることで、負の感情や攻撃的な感情が抑制され、理性的・倫理的な考え方ができるようになる。衝動的な行動は控え、計画的・意欲的に物事に取り組むポジティブさが身に着くのだ。目標に向かって突き進む、理想とする人生を歩むための力といえる。