イギリス発のデジタル機器メーカー「Nothing Technology」は、2022年に自社初となるスマホ「Nothing Phone (1)」を発売。本体背面がスケルトンになったデザインの特異さと安定したパフォーマンス、比較的手を出しやすい価格といったバランスの良さが注目を集め、全世界で80万台以上を出荷しています。
そんなNothing Technologyは、第2弾スマホとなる「Nothing Phone (2)」をグローバル発表。前モデルに引き続き、日本でも公開市場向けに、SIMフリー端末として発売。日本市場での販売価格は7万9800円~となります。
円安や物価高、半導体不足といった影響を受け、ハイエンドスマホをはじめとする価格高騰が話題となっている中、Nothing Phone (2)の特徴や魅力について、メディア向けに開催されたNothing Phone (2) プレブリーフィングで語られた内容とともに紹介していきます。
背面のLEDライトを光らせる「Glyph Interface」の意義は?
Nothing Phone (2)は、前モデルより引き続き背面に特徴的なスケルトンボディを採用しています。Nothing Phoneシリーズのみならず、Nothing Technologyから発売されている完全ワイヤレスイヤホンもスケルトンボディになっており、セットで使用することで、統一感が出るようになっています。
スケルトンデザインの内側にはLEDライトが埋め込まれており、一般的なスマホのライトとは違う、全体に広がる明かりを点けられるのが特徴。通知によって光るパターンを変えるなど、ディスプレイを確認しなくても、スマホで何が起きているのかがある程度把握できるように工夫されています。
そもそも、Nothing Phone (1)より背面を光らせる「Glyph Interface」を採用したのには、「スマホのインタラクションを最小限に抑えたい」という意図があるとのこと。常にディスプレイを確認して情報を得るのではなく、背面のライトや、独自に開発されている着信音などから情報を得ることで、スマホを触るタイミング、触らないタイミングのどちらも充実させるという狙いがあるようです。
Glyph Interfaceのアップデートポイントとして、ライトのうち2か所を段階的に光らせることができるようになっており、Uber Eatsといった宅配サービスの進捗状況を表すといった使い方ができるようになっています。
大型化したものの持ちやすさが向上した本体デザイン
前モデルであるNothing Phone (1)はディスプレイが6.55インチだったのに対し、Nothing Phone (2)は6.7インチに大型化。それに伴い、本体のサイズ、厚みも増していますが、実機を持った感触としては、握り心地が向上している印象を受けます。
というのも、Nothing Phone (1)は背面がフラットなデザインだったのに対し、Nothing Phone (2)では背面が左右に向かってラウンドした形状になっているため、手に持った際にしっかりとフィットするようになっています。
左)Nothing Phone (1)と右)Nothing Phone (2)。背面がラウンド型にアップデートされた
スマホは動画や画像、Webサイトといった様々なコンテンツを閲覧できるデバイスであるため、画面サイズを大きくすることで、一度に表示できる情報量が増えるのは純粋なアップデートでもありますが、持ちやすさとはトレードオフの部分でもあります。そのため、ディスプレイの大型化と握り心地の両面をカバーしたデザインの変更は有意義といえます。
そのほか、ディスプレイ解像度は2412×1080ピクセルで、120Hzリフレッシュレートに対応。ディスプレイ面は継続してフラットデザインなので、誤操作が少なく、扱いやすくなっています。
〝イロモノ〟の枠に収まらない性能と価格のバランスも魅力
スケルトンボディ、LEDライトが特徴的なNothing Phone (2)ですが、手堅いスペック構成になっているのが大きな魅力。特にカメラ性能は、ソフトウエアをアップデートするため、40人で担当していたエンジニアを100人まで増やすことで、写真の仕上がりが大幅に改善しています。
背面レンズは前モデルから据え置きで50MPの2眼構成ですが、ソフトウエアのアップデートやモーションキャプチャの強化により、動く被写体も正確にとらえられるように強化。RAW HDR撮影にも対応しており、より細かいディテールの表現ができるようになっています。フロントカメラは前モデル比でセンサーサイズが約30%アップした、32MPカメラを搭載しています。
搭載CPUはSnapdragon 8+ Gen 1。2022年後半に登場したチップセットとなっており、最新型ではないものの、負荷の大きいアプリゲームなどでも快適にこなせる高性能を有しているのが特徴。Nothing Technology担当者は、「パフォーマンスとコストのバランスを考えた時に、最新のものを狙うべきではない」と話しています。
実際、最新の高性能チップセットを搭載したスマホを使用したとしても、重要なのは〝そのスマホで何をするのか〟という点。ゲームアプリなども含む、ほとんどのアプリが快適に動作するのであれば、約1年前のチップセットを搭載し、コストを下げようと試みる姿勢は、ユーザーライクといえます。
Nothing Phone (2)の場合、メモリ8GB+ストレージ128GBモデルが7万9800円、メモリ12GB+ストレージ256GBモデルが9万9800円、メモリ12GB+ストレージ512GBモデルが10万9800円となっており、コストパフォーマンス的にも魅力的。おサイフケータイ機能といった、日本市場向けのカスタマイズは施されていないものの、必要十分な性能で、お求めやすい価格になっています。
搭載OSは独自にカスタマイズされた「Nothing OS 2.0」。新たに追加されている「モノクロームモード」は、アプリアイコンを含むデザインがモノクロになる機能で、アプリの色につられることなく、本当に使いたいアプリにアクセスできるようにという願いが込められています。背面のライトと同様に、スマホにばかり集中するのではなく、あくまで生活を豊かにするための、1つのアイテムとしてスマホがあるというメッセージともいえます。
明確な意図のあるコスパ優秀スマホ「Nothing Phone (2)」。日本市場への〝適応〟にも期待
本体背面にスケルトンボディを採用したNothing Phone (2)は、新機能として背面のライトの光らせ方や、モノクロームモードなどが追加されています。スマホを販売するメーカーとしては〝逆張り〟ともいえるかもしれませんが、スマホを必要以上に見る時間を減らし、有意義な生活をするためのデバイスを目指すという、明確な意思を感じる製品になっています。
価格、性能のバランスも申し分なく、背面が光る物珍しい端末としてではなく、コスパに優れたスマホとしても十分魅力的です。個人的には、他のスマホにはない、ユニークなデザインと思想を持った製品として、日本市場を盛り上げてほしいと感じています。
とはいえ、おサイフケータイ機能の搭載はなく、通信キャリアからの販売もないので、万人におすすめできる端末といい切れないのも事実。Nothing Phone (2)の1つの特徴ともいえる、ドット柄のフォントも、日本語バージョンは用意されていません。
なお、Nothing Technologyとしては、日本の通信キャリアとも話を進めているとのこと。FCNTや京セラなど、コンシューマー向けスマホの開発を終了し、スマホメーカーの〝席〟が空いているという状況も、Nothing Technologyの今後を占うポイントといえます。今後さらに日本市場に適応し、多くの販路から発売されていくことに期待したいと思います。
取材・文/佐藤文彦