2050年の世界の糖尿病患者数は13億人に達する可能性
現時点で世界の糖尿病患者数は5億人以上に上り、今後30年以内に13億人を突破する可能性があるとする研究結果が、「The Lancet」に2023年6月22日掲載された。
米ワシントン大学保健指標評価研究所のKanyin Liane Ong氏らが、世界の疾病負担研究(GBD)のデータを利用して推計したもの。
Ong氏は、「世界的な糖尿病患者数の急速な増加は、それ自体が憂慮すべきことであるだけでなく、この病気が虚血性心疾患や脳卒中のリスクを増大させることを考えると、世界中の全ての医療制度の維持が困難になる可能性もある」と語っている。
また、「多くの人は、2型糖尿病は単に肥満や運動不足、不適切な食習慣に関連して発症すると信じているかもしれないが、実際には遺伝や社会経済的要因も関連がある。特に低・中所得国においては経済的要因の影響が大きい」と解説する。
Ong氏らの研究では、世界204カ国・地域の性別・年齢層別の糖尿病有病率と障害調整生存年数〔DALY(疾患により失われる健康寿命)〕を調査し、今後の推移を予測した。
その結果、2021年時点で世界の糖尿病の年齢標準化有病率は6.1%〔95%不確定区間5.8~6.5〕で患者数は5億2900万人(同5億~5億6400万)となった。
その96.0%(95.1~96.8)は2型糖尿病だった。2型糖尿病のDALYは7920万(6780万~9250万)であり、疾患別でトップ10にランク入りした。
2型糖尿病のDALYの52.2%(25.5~71.8)はBMIの高さに起因するものと計算され、DALYに対するBMI高値の寄与の割合は1990年から2021年にかけて24.3%(18.5~30.4)増加していた。
2型糖尿病のDALYに寄与する肥満以外の因子としては、不適切な食習慣〔25.7%(8.6~40.7)〕、環境や職業に関連すること〔19.6%(12.7~26.5)〕、喫煙〔12.1%(4.5~20.9)〕、運動不足〔7.4%(3.0~11.2)〕、飲酒〔1.8%(0.3~3.9)〕が続いた。
論文の共著者の1人である同研究所のLauryn Stafford氏は、「2型糖尿病の増加を少数の因子のみで説明しようとする人がいるかもしれないが、そのような考え方は、世界中で発生している格差の影響を考慮していない。社会経済的な不平等は、検査や治療へのアクセスの差を生み、それが糖尿病の増加につながっていることを忘れてはならない。2型糖尿病の増加という問題を、全体像としてより詳細に把握する努力が必要だろう」と語っている。
今回の研究からは、どの国でも高齢者層において糖尿病有病率が高いことも分かった。65歳以上の糖尿病有病率は20%以上であり、特に75~79歳で最も高く24.4%に達していた。
また、2050年の糖尿病患者数は13.1億人(12.2~13.9)となり、204の国や地域のうち89カ国・地域(43.6%)で年齢標準化有病率が10%を超えると予測された。
地域別では、北アフリカ・中東〔16.8%(16.1~17.6)〕、ラテンアメリカ・カリブ海諸国〔11.3%(10.8~11.9)〕において、2050年時点での糖尿病の年齢標準化有病率が特に高値となると見込まれた。
著者らは、「糖尿病は依然として世界の重大な公衆衛生上の課題である。糖尿病の大部分を占める2型糖尿病は、その大半が予防可能であり、発症後の早い段階で治療介入すれば寛解に至ることもある」と述べ、複雑に絡み合ったリスク因子を効果的にコントロールし得る戦略の確立が急がれるとしている。(HealthDay News 2023年6月23日)
Copyright © 2023 HealthDay. All rights reserved.
Photo Credit: Adobe Stock
(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(23)01301-6/fulltext
Press Release
https://www.healthdata.org/news-release/global-diabetes-cases-soar-529-million-13-billion-2050
構成/DIME編集部