近年は自然災害への対応や自然環境下でのビジネスでの活用など、より詳細かつ時間単位の気象データが求められている。世界最大級の気象情報会社であるウェザーニューズは、現場観測のニーズの高まりに応じ、オムロンと協業して新型気象IoTセンサー「ソラテナPro」を開発。
1台で気温・湿度・気圧・雨量・風向・風速・照度の7つの要素を1分毎に観測でき、そこからさらに自動でクラウドに保存。利用する企業側はアプリやPCでソラテナProのサービスに接続し、グラフ化など見やすいデータにした状態でチェックできる。
起動方法はコンセントを差すだけ 手軽で設置しやすい気象観測器
導入する側としては設定が究極なまでに簡単になっている。なんと、やることはただコンセントに差して通電するだけ。個別の細かな設定はすべて事前に行われており、通信機器との接続などの関連作業も必要ない。
小型ながらオムロンの高度なセンシング技術によって、雨量50mm/hの非常に激しい雨や、風速50m/sの猛烈な風まで高精度に観測できるというのも大きな特徴。この対応可能な数値は、日本におけるほぼすべての気象現象に対応できるレベルだという。サイズも約125mm×125mm×267mm、重さ約1kgと小型・軽量のため、様々な設置場所のニーズにも対応可能だ。
「ソラテナPro」本体。
この1台に様々なセンサーがついていて、上部の窓の部分では雨量を計測する。
本体中央部には風光・風速センサーを配置。
ウェザーニュースのアプリ上でソラテナProのデータも簡単管理
ソフトウェア面でのサービスも新たに導入される。累計3500万ダウンロードを誇るニュースアプリ「ウェザーニュース」と「ソラテナPro」を連携し、アプリ上でソラテナProのデータが見られるようになる。過去24時間の観測データを1分前からグラフで可視化できたり、停電リスク予測など有料機能を含む様々なコンテンツを「ウェザーニュース」アプリ1つで管理できるようになる。
また、観測された気温・雨量・風速がユーザーごとの設定値を超えた場合は、気象変化によるリスクをプッシュ通知。自然災害への迅速な対応への活用が期待される。また、「ソラテナPro」のアプリはPC版も用意しており、過去の観測データをダウンロードして当時の気象と被害状況を分析するなど、ビジネスでのデータ活用へも繋げられる。
ウェザーニュースのアプリ上で見ると、契約者には「ソラテナPro」のタブが作られ、そこでデータにアクセスできる。
外出先ではスマートフォン、オフィスではパソコンからと、データアクセスのスタイルが選べる。
開発パートナーのオムロンとアジャイル開発でスピードリリース
今回の開発パートナーに選んだのは、2017年6月発売の小型気象センサー「WxBeacon2」でタッグを組んだオムロン。「WxBeacon2」の性能がユーザーからも評判が良かったことから、オムロンに相談。2022年3月から新しい気象IoTセンサーの開発を開始。
今回の発表まで15か月間でプロダクトの開発を実現したことは、発表会に登壇したウェザーニューズ Mobile/Internet事業部 グループリーダー 上山亮佑氏をしても「奇跡」だったと振り返る。
「両社の強みを生かし、アジャイル的に開発を進めていきました。オムロンさんのほうで開発のプロトタイプを作っていただき、ウェザーニューズで検証をする。その結果を気象学的な見地からのアドバイスであるとか、ウェザーニューズの社屋に設置している気象のインフラを活用しながら、POCのサイクルを15か月間回し続けてきました」(上山氏)
利用には本体購入と月額の利用料を支払うプランと、1か月単位からのレンタルの2種類があり、アプリで閲覧できる端末数などサービス利用者ごとのカスタマイズによって価格は変わる。利用証については問い合わせでの見積もりとなるが、購入の場合は1台だいたいパソコン1台分ぐらいで、月額の使用料は携帯電話の料金1か月分ぐらいという。
「ソラテナPro」の活用の現場は、自然災害対策以外にも、農業・建築・ドローン・物流・スポーツ・電力・食品小売・アパレル・レジャー施設など多岐に渡ると想定されている。工事現場やマラソン大会などの熱中症対策には気温の予想データ、風速のデータはドローン利用やキャンプ場での火の取り扱い対策などが考えられる。よりピンポイントに、かつ正確なデータの収集によってまた新たな対策ができるようになることが期待される。
・ソラテナPro
https://wxtech.weathernews.com/soratena.html
取材・文/北本祐子