コロナ禍をきっかけに飲食店へと一気に導入が進んだ配膳ロボット。客の立場からすれば非接触・非対面で安心面が生まれ、店内にロボットが走行する様子は近未来的でなんだか楽しい。店舗側にとっては人手不足への対応策としても役立っているので、いいことづくめに見える。しかし一方で導入された現場ではさらなる課題が生まれているという。
本記事では、その現場の実態を探るべく、解決策を課題解決のために尽力する配膳ロボット提供企業2社に話を聞いた。
1)寿司屋に配膳ロボットを導入 導入後のサポートにも力を入れる
2023年3月、人材派遣事業やBPO事業を担う株式会社綜合キャリアオプションは、これまで培ってきたノウハウや所有の人材や場所を活かし、万全なサポート体制を強みとしたロボット事業に参入。
先日は株式会社オンザマークの寿司店「鮨6」へと配膳ロボット2台導入した。導入したのはサービスロボットソリューション「SC CAPION」の一つ。4段トレーにメニューを載せてお客のもとへロボットが自動で届ける。
今回導入された「T5」は、上面タッチパネルで操作ができる。配膳物の飛散を防ぐための衝撃吸収設計や配送物の種別によってスピードのコントロールができる。
同社によれば、そんな配膳ロボットは、世間一般における導入後の大きい課題の一つに、アフターサポート体制が確立していないという点があるという。導入後、使用方法や故障した際のメンテナンス方法などに困ってしまうというケースが頻発しているのが現状だそうだ。
同社のビジネスプロセスソリューション事業本部 アライアンス事業部 部長・馬場 孝博氏は、飲食店の配膳ロボット導入後の現場課題と課題解決案について次のように挙げる。
1.故障やメンテナンスの問題
「ロボットは機械ですので、どうしても故障することがあるため、防止のために定期的な点検やメンテナンスが必要です。また、故障時には迅速な対応が求められるため、メーカーと契約して保守管理を行うことが重要です」
2.人員配置の変更
「ロボットを導入することにより、従来は配膳業務を担当していた人員の配置変更が必要になる場合があります。さらに従業員への教育・トレーニングが必要になります」
3.ロボットと顧客のコミュニケーション
「ロボットですので、飲食店の顧客とのコミュニケーションに課題が生じる可能性があります。そのため、ロボットの操作方法や挨拶などのプログラム設定も重要です。ロボットの操作方法や挨拶などのプログラム設定を工夫することで、より自然なコミュニケーションが可能になります。また、従業員がロボットと一緒にサービス提供を行うことで、顧客への信頼感を高めることもできます」
4.コスト面
「初期投資やランニングコストがかかる課題があります。しかし、ロボット導入によって労働力削減や作業時間短縮などのメリットもあります。また、長期的に見てコスト削減効果がある場合もありますし、補助金制度もあるので活用できます」
●配膳ロボットを効果的に導入するためのポイント
配膳ロボット導入後の課題は避けられないが、より対応をスムーズに進めるにはどうすればいいか。3つのポイントがあるという。
1. 目的を明確にすること
「配膳ロボットを導入する目的は、従業員の負担軽減やサービス向上など様々です。しかし、目的が明確でなければ、適切な製品選定やトレーニング方法の決定が困難になります。そのため、導入前に目的を明確化し、それに合わせた製品選定やトレーニング方法を検討することが重要です」
2. 従業員へのトレーニング
「配膳ロボットは従来の作業方法と異なるため、従業員へのトレーニングが必要です。具体的には、操作方法やメンテナンス方法だけでなく、顧客対応や安全対策も含めてトレーニングする必要があります。また、従業員からフィードバックを受け取り改善点を反映させることも大切です」
3. サポート体制の整備
「サポート体制を整備し、迅速かつ適切な対応ができるようにすることが重要です。また、従業員からの問い合わせにも迅速かつ丁寧に対応することで、従業員のストレス軽減や作業効率向上につなげることができます」
配膳ロボット導入を成功させるには、単にロボットを定着させるだけでなく、従業員を含めたサポートが重要になるようだ。