あなたの周りに「あの人は、いったい1日が何時間あるんだろう?」と思ってしまうほど、物事を段取りよくテキパキこなす人はいませんか?
では、そういう「要領がいい人」たちは、生まれつき頭がよかったり、センスや才能の持ち主だったりするのでしょうか?
「要領がいい・悪い」は、決して才能やセンス、ましてや生まれつきの頭のよさの問題ではありません。「要領がいい人」は、ほんの少し、「脳の使い方」が違うだけ。
そこで「要領がいい」ということを、「ゴールへの最短距離を進めること」と定義し、その方法を最新の脳科学から解き明かす菅原洋平さんの著書『「仕事が終わらない人生」が180度変わる 努力に頼らず「要領がいい人」になる40のコツ』の中からDIME読者におすすめしたいノウハウを厳選、再編集してお届けします! 「脳の使い方」と聞いて、身構えてしまう方もいるかもしれませんが、決して難しいことは書いていませんので是非チェックしてみてください。
努力に頼らず「要領がいい人」になる40のコツ〈31〉要領がいい人ほど、「価値」にこだわらない
「私は東京から岩手に移住したのですが、『なぜ移住を決断したのですか?』『なにが変わりましたか?』と聞かれたときの回答を常に考え続けています。
移住をしたのだから自生しているキノコを食べなければならないし、ホオの落ち葉を使ってホオ葉味噌をつくらないといけないし、倒木を組み立ててツリーハウスをつくらなければならない、と思っています。
そしてそれを、『楽しい!』と言わなければなりません。『あなたの決断は正しかったね』と誰かに言ってもらおうとしてしまうんです。
でも、この〝誰か〟とはいったい誰なのでしょう?」(40代男性)
この男性、実は過去の私です。
私は7年前に岩手に移住したのですが、当時は「誰かを納得させられる既成事実をつくるため」に行動をしたり、あれこれ考えていたり……自分の幸せよりも他者からの評価を重視していました。
私たちは、「生産性のないこと」をして、ムダな時間をすごすことを恐れています。これには「人に評価されること、価値を生み出すことが要領がいいことだ」という先入観が影響しています。
流行りの「ファスト教養」が脳にもたらすデメリット
「いまやっていることはムダになっていないか。成長できているか」を常に気にしていませんか?
他人の趣味の話を聞けば、「それはどこが楽しいの?」「やっててよかったと思うことある?」と自分が納得する価値を追求しようとしていませんか?
もし「要領がいい人は、価値のないことはやらない」をいうイメージをもっているのでしたら、そのイメージはいますぐ捨ててください。
私たちが「価値がある」と感じている考え方や行動、もの、ことは、かなりの割合で「加工」されています。加工しているのは脳で、私たちはこれを「先入観」として自覚することがあります。
たとえば、ワインが格安のものだったとしても、超高級ワインだと説明されて、ソムリエの方に丁寧にグラスに注いでもらったら、それをおいしいと感じてしまうでしょう。
これは、脳がとっている省エネ戦略の一端です。
すべての感覚をまっさらな状態で感じ取っていたら、あっという間に容量オーバーになってしまう。それを防ぐために、「これからくる感覚はおそらくこんな感じ」という予測を立てておき、実際の感覚を加工しているのです。
一方で、まったく前情報がなく体験した感覚は、加工できません。そのため初めての感覚は、私たちに大きな感動をもたらします。
初めての感覚によって、新しい神経回路が生み出されます。その新しい回路によって、次の予測の種類が増えます。
この本で私が繰り返しお伝えしたように、「脳は常に次の行動を予測」します。その予測をスムーズにすることで、脳の記憶容量を節約できるようになります。
そして、私たちの脳は新しい感覚を得ることによって予測を増やし(=想像力を高め)、より柔軟に対応できるよう成長していくという側面があるのです。
現代人は、脳の省エネ戦略が強くなりすぎている傾向があります。
その一例として、「価値」の話からは少し外れますが、最近「ファスト教養」が話題になっています。深く学ぶのではなく、ざっくりとおおづかみですぐに使える知識を得ることです。
1分で学ぶ動画などを見ることで、「新しい知識・技術を習得した」と感じている人も珍しくありません。
でも、「短時間で要点だけ学べば十分」と考えて行動していると、思わぬ失敗を招くこともあります。
たとえば、プレゼンテーションのノウハウを数分の動画で学習し、そのとおりにやってみるとき。そのノウハウに従って話せば、以前よりもうまく話せた気になるかもしれません。
しかし、先に得たノウハウを使うことで頭がいっぱいになり、その場の聴講者の反応や場の空気を感じられず、聴講者に合わせた話をすることができずに、独りよがりのプレゼンテーションになってしまう。そして、そのことに本人は気がつかない。実際、そんな失敗談を耳にしたことがあります。
タイパ(タイムパフォーマンス)ばかり重視した体験を重ねると、予測できる範囲は狭くなり、他人が用意したゴールへの道筋をなぞるだけの行動をするようになります。
そして、うまくいかなければ、「言われたのと違う」と失敗を誰かのせいにし、達成したところで、なんの感慨も浮かばなくなってしまうのです。
体験が「先」、価値は「後」
とくに近年は、なにをやるにしても、やたらとお金や肩書き、人脈にくっつけたがる思考がいきすぎていないでしょうか。SNSやYouTubeに投稿するときでも、「ひょっとしたらお金になる、肩書きが手に入る」と考えている人が多いように思います。
しかし、なんでも価値や意味を見いだそうとすると、「他者から認めてもらえる結果や価値観」に無理やり思考を押し込めることになり、体は緊張してこわばります。「構え効果」によってほかの可能性が見えなくなり、自分が本当にやりたかったことを見失ってしまうのです。そう、かつての私のように。
そこで私の場合、患者さんには「誰にも邪魔されず〝自分だけの時間〟だと思える瞬間と言われて、どんな場面が浮かびますか?」と聞くことがあります。
先日の患者さんは、こんなことを話してくれました。
「私だと『欲張らないとき』かなと思いました。こないだ旅行に行ったんですけど、知人や友人から、乗馬ができるよとか、アート体験ができるよとかいろんなことを言われて『全部やらなきゃ!』と舞い上がっていたのですが、全部やめてなにもせずに宿にいました。
そうしたらなんかすごく休めたんですよね。いつもなら体験してSNS に投稿してって感じだったんですけど、そもそも休みに行っているわけだし、目的を見失ってたなと気づきました」(50代女性)
あえて価値を見いだそうとせず、なにも考えず体験すると、フィルターが一時的に外れ、脳は再びフラットな視点で価値を見いだします。
この働きにゆだねれば、本当にやりたかったことがすんなりとできるようになります。
利益や結果を考えず、ただその作業を楽しむ習慣を身につけましょう。「体験が先、価値は後」です。
ある患者さんは、休日には登山に行くと言っていました。
「『アウトドアが好きなんだ』とか『活動的だね』とか言われるんですけど、全然そんなことなくて。登山がうまいわけでもないし、ただ足を動かして登っているだけ。意味もないし、いい結果も求めていない。でも、気持ちが自由になっていいです」
価値から離れて自由になれば、あなたの脳は、あなたの原動力となる価値を見つけます!
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いかがでしたでしょうか?
実は、次の大半の人が漠然と思い描いている「要領のよさ」 。5つで構成されているそうです。
1 「余計な情報」に惑わされない
2 「脳のムダづかい」を減らす
3 「すぐやる人」になる
4 「同じ失敗」を繰り返さない
5 「思い込み」を捨てる
この項目を見ただけで、 「たしかに、自分に足りないことかも」と思った人も多いのではないでしょうか?
そうなんです!
「要領をよくする」とは、新たな知識や技術を身につけるというより、ムダを省いたり、余計な情報をカットしたりすることが大切であり、誰でもすぐに実践でき、再現性のあることなのです。それを把握して再現性のある行動にしてしまえば、努力に頼らず「要領がいい人」になることができるというわけです。この本では、最新の脳科学から導き出したメソッドをもとに要領のよさを、再現性のある科学的なコツとしてまとめられています。意外で、すぐに実践できる方法が知りたくなった方は是非チェックしてみてください。
「仕事が終わらない人生」が180度変わる 努力に頼らず「要領がいい人」になる40のコツ
著者/菅原洋平
発行/株式会社アスコム
著者/菅原洋平
作業療法士。ユークロニア株式会社代表。アクティブスリープ指導士養成講座主宰。1978年、青森県生まれ。国際医療福祉大学卒業後、国立病院機構にて脳のリハビリテーションに従事。2012年にユークロニア株式会社を設立。東京都千代田区のベスリクリニックで外来を担当しながら、ビジネスパーソンのメンタルケアを専門に、生体リズムや脳の仕組みを活用した企業研修を全国で行う。『あなたの人生を変える睡眠の法則』(自由国民社)、『すぐやる! 』(文響社)などベストセラーを多数上梓。テレビや雑誌など、メディア出演も多数。