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バイクのハンドルに設置して3年も野ざらしにしたカシオの80年代ウォッチ「カリキュレーター」が想像以上にタフだった

2023.07.16

昔の電子式計算機

80年代のアメリカの若者にとって、「電卓機能のある腕時計」はまさに「スマートウォッチ」そのものだった。

BTTFは主人公の高校生マーティ・マクフライが1955年にタイムスリップする話だが、この1955年当時には「電卓」というもの自体がなかった。英語で「カリキュレーター」と呼ばれるものは、衣装箪笥よりも巨大な物体だ。

この年にIBMがトランジスタ内蔵電子式計算機『IBM 608』を発表している。販売価格は8万3,210ドルで、月1,760ドルでレンタルも可能だった。重量は堂々の1.2トン。

この時代の西側諸国はブレトンウッズ体制下のドルペッグ制を実施していた。1ドルを日本円にすれば360円である。8万3,210ドルは約3,000万円だが、1955年に年俸3,000万円のプロ野球選手は日本にはまだ存在しなかった。

アメリカのプロレスラーは、ごく一握りのトップクラスだけが年俸10万ドル以上にありついていた。

55年当時NWA世界チャンピオンだった「鉄人」ルー・テーズは年に十数万ドル或いはそれ以上を稼ぎ出せるレスラーだったが、同時にテーズはNWAに2万5,000ドルの供託金を預けていた。NWAの定めたスケジュールに従わなかった場合、この2万5,000ドルは没収される仕組みだ。

つまり、当時の電子式計算機は一流レスラーと契約できるほど高価だったのだ。そんなものを買えるのは、政府機関か工科大学くらいである。
それが僅か30年で「誰もが持っている道具」になった。電子式計算機の急速進化を牽引したのは、シャープやカシオといった日系メーカーだ。

スマートウォッチを持て余している人向け

その場で四則演算ができ、しかも防水設計のカシオ・カリキュレーターは「若者の必需品」だった。

「デジタル腕時計なのに耐久性がある」という点も、また革新的だった。1984年生まれの筆者は、「デジタル腕時計はカシオ製品以外は雨水でも故障する」という固定観念があった時代を覚えている。逆に言えば、カシオにはカスタマーからの盤石な信頼があったということだ。

現代のスマートウォッチを持て余している人には、まさに最適の腕時計でもある。

現在時刻が確実に分かればそれでいい、しかしスマートウォッチはすぐに電池切れを迎えてしまう……という悩みを持っている人は案外多いのではないか。カシオ・カリキュレーターなら「数日毎に充電する」という必要もない。

また、筆者がやっているように「バイクや自転車のハンドルに設置する」という使い方もアリ。それができない現代のスマートウォッチが、何だか「軟弱なガジェット」に思えてしまう。

マーティが旅した未来の製品よりも、彼自身が高校生として生きた時代の製品のほうがある意味で優れている……というのは究極の皮肉でもある。

この記事を読んで「カリキュレーターが欲しい!」と感じていただければ幸いだが、注意点がひとつ。このガジェットは、BTTFが地上波放送される時になると転売屋の餌食になってしまう可能性が高い。

中には適正価格の3倍ほどで売りに出す者もいるほど。そしてBTTFの話題性が沈静化すると価格が元通り……といういつもの光景が繰り広げられる。

そうなる前に衝動買いしてしまうのも、判断としては悪くないだろう。

【参考】
IBM
https://www.ibm.com/ibm/history/exhibits/vintage/vintage_4506VV2214.html

CA-53W-1Z-Amazon
https://www.amazon.co.jp/dp/B000GB1R7S

取材・文/澤田真一

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