あなたの周りに「あの人は、いったい1日が何時間あるんだろう?」と思ってしまうほど、物事を段取りよくテキパキこなす人はいませんか?
では、そういう「要領がいい人」たちは、生まれつき頭がよかったり、センスや才能の持ち主だったりするのでしょうか?
「要領がいい・悪い」は、決して才能やセンス、ましてや生まれつきの頭のよさの問題ではありません。「要領がいい人」は、ほんの少し、「脳の使い方」が違うだけ。
そこで「要領がいい」ということを、「ゴールへの最短距離を進めること」と定義し、その方法を最新の脳科学から解き明かす菅原洋平さんの著書『「仕事が終わらない人生」が180度変わる 努力に頼らず「要領がいい人」になる40のコツ』の中からDIME読者におすすめしたいノウハウを厳選、再編集してお届けします! 「脳の使い方」と聞いて、身構えてしまう方もいるかもしれませんが、決して難しいことは書いていませんので是非チェックしてみてください。
努力に頼らず「要領がいい人」になる40のコツ〈11〉実は簡単! 「あれ?なにやってたんだっけ」をなくす方法
日々の生活は、脳内の限られた資源の奪い合いです。
脳の中で一度にストックできる4つの容量をめぐり、激しい「椅子取りゲーム」が常に繰り広げられているのです。
「とにかく集中力がありません。集中しようと何度も自分に言い聞かせても、別のことが気になってどうにもなりません。1時間で終わると見積もっていた仕事が半日かかってしまったり……こんなことが日常茶飯事です」(20代男性)
心がフラフラとさまよって、別のことを考え始めてしまっている状態を「マインドワンダリング」といいます。「1つのことをしているときに、別の作業を思いつく」かつ「その瞬間に、前にしていたことは頭から消えてしまう」のが特徴です。
マインドワンダリングは、意図せずに私たちの脳の容量を使います。勝手に思い浮かんでしまったことに容量をとられることで、ワーキングメモリの使える容量が減ってしまうわけです。
マインドワンダリングの出現頻度を調査した研究では、16分に1回の頻度で出現していることが明らかになっています。
つまり、16分に1回は「心ここにあらず」の状態で行動してしまう、ということ。しかも残念なことに、これは脳がもつ特性のため、努力で防ぐのは困難です。
先ほど「作業時間を『15分以内』で区切ることが重要」と書きましたが、それは16分以上経つと別の作業について考えてしまうから。
そこで、「はかどっていてもそうでなくても、15分で終わり。そこからまた別の作業をする」というルールを決めれば、作業の集中を妨げるマインドワンダリングは防ぐことができます。
しかし……この話をすると、大抵このように反論されてしまいます。
「どこまでやったかを忘れちゃうから、途中でなんてやめられない!」
でも、本当に、どこまでやったのかを忘れてしまうのでしょうか?
「作業を途中で区切って、元の作業に戻ったときに、どこまでやったかを忘れてしまう」というのは、なにか邪魔が入るといった「受動的な区切り」の場合です。
たとえば、仕事中にメールがきます。
そのメールを読んで返信をした後、元の作業に戻ると、「あれ? どこまでやったんだっけ……」とやったところを探すのに時間がかかってしまいます。
それに対して、「自分で作業を区切った場合」は、元の作業について忘れにくいはずです。
試しに、以下の実験をしてみてください。
[実験]
次の2つを、5分ごとに繰り返してみてください。
(1)文章を書く( スマホやパソコンでもO K)
(2)読書( スマホやパソコンでもO K)
文章を書いている途中で5分になったら、
そこで終わりにして、読書を始めましょう。
また5分経ったら、元の作業に戻ってください。
いかがでしたか?
意外とすんなり元の作業を再開できたのではないでしょうか。
なぜこのようなことが起きるかというと、「脳の疲労」が関係しています。
作業を始めると「アドレナリン」が上昇してやる気になりますが、しばらく作業を続けていると脳が疲労してきます。すると、脳がフラフラとさまよい始めて、関係ないことを考えてしまいます(=マインドワンダリング)。
これを防ぐために、「ノルアドレナリン」という物質が上昇して集中を保とうとします。
しかし、ノルアドレナリンが上昇して集中を保とうとしているときに邪魔が入ると(声をかけられたりするなど)、ストレスによって「コルチゾール」というホルモンが急上昇します。
このコルチゾールがくせもので、記憶を司る「海馬」の活動を弱め、記憶力を低下させてしまいます。そのため、作業に戻ったときに「あれ? どこまでやったんだっけ?」となるのです。
一方、自ら意識的に15分以内に区切る場合は、そもそもノルアドレナリンが上昇する前に作業をいったん終えることができるため、コルチゾールは上昇しません。記憶力も低下しないので、すんなり作業を再開できる、というわけです。
ちなみに、冒頭のBさんの「いまなんの仕事をしているのか忘れてしまう」という悩みも、受動的に作業を区切られてしまい、もとの作業に戻ったときに忘れてしまっていることが原因でした。そこで自ら作業を区切り、限られた記憶容量を能動的に使っていくことを勧めた結果、悩みはすぐに解消されました。
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いかがでしたでしょうか?
実は、次の大半の人が漠然と思い描いている「要領のよさ」 。5つで構成されているそうです。
1 「余計な情報」に惑わされない
2 「脳のムダづかい」を減らす
3 「すぐやる人」になる
4 「同じ失敗」を繰り返さない
5 「思い込み」を捨てる
この項目を見ただけで、 「たしかに、自分に足りないことかも」と思った人も多いのではないでしょうか?
そうなんです!
「要領をよくする」とは、新たな知識や技術を身につけるというより、ムダを省いたり、余計な情報をカットしたりすることが大切であり、誰でもすぐに実践でき、再現性のあることなのです。それを把握して再現性のある行動にしてしまえば、努力に頼らず「要領がいい人」になることができるというわけです。この本では、最新の脳科学から導き出したメソッドをもとに要領のよさを、再現性のある科学的なコツとしてまとめられています。意外で、すぐに実践できる方法が知りたくなった方は是非チェックしてみてください。
「仕事が終わらない人生」が180度変わる 努力に頼らず「要領がいい人」になる40のコツ
著者/菅原洋平
発行/株式会社アスコム
著者/菅原洋平
作業療法士。ユークロニア株式会社代表。アクティブスリープ指導士養成講座主宰。1978年、青森県生まれ。国際医療福祉大学卒業後、国立病院機構にて脳のリハビリテーションに従事。2012年にユークロニア株式会社を設立。東京都千代田区のベスリクリニックで外来を担当しながら、ビジネスパーソンのメンタルケアを専門に、生体リズムや脳の仕組みを活用した企業研修を全国で行う。『あなたの人生を変える睡眠の法則』(自由国民社)、『すぐやる! 』(文響社)などベストセラーを多数上梓。テレビや雑誌など、メディア出演も多数。