あなたの周りに「あの人は、いったい1日が何時間あるんだろう?」と思ってしまうほど、物事を段取りよくテキパキこなす人はいませんか?
では、そういう「要領がいい人」たちは、生まれつき頭がよかったり、センスや才能の持ち主だったりするのでしょうか?
「要領がいい・悪い」は、決して才能やセンス、ましてや生まれつきの頭のよさの問題ではありません。「要領がいい人」は、ほんの少し、「脳の使い方」が違うだけ。
そこで「要領がいい」ということを、「ゴールへの最短距離を進めること」と定義し、その方法を最新の脳科学から解き明かす菅原洋平さんの著書『「仕事が終わらない人生」が180度変わる 努力に頼らず「要領がいい人」になる40のコツ』の中からDIME読者におすすめしたいノウハウを厳選、再編集してお届けします! 「脳の使い方」と聞いて、身構えてしまう方もいるかもしれませんが、決して難しいことは書いていませんので是非チェックしてみてください。
努力に頼らず「要領がいい人」になる40のコツ〈05〉あえて「不快な身体感覚」を思い出す、ドーパミン活用術
先日、時間にルーズなことで悩んでいる方が相談に来られました。
「いつも睡眠不足でボーッとしています。原因ははっきりしていて、自分の趣味(アニメの動画を見ること)に熱中しているから。ここまでやったら終わりにしよう、と思っているのに、何度も繰り返しているうちに時間が経っていて、結局深夜まで見てしまうんです。そのせいで遅刻も多く、わかってはいるんですけど……」(30代男性)
わかっているのにやめられない――。これも、ドーパミンの欲求回路のしわざです。
ただ、ここで紹介したいのはドーパミンの欲求回路を止める方法ではなく、「ドーパミンの特性を活用して衝動を抑える方法」です。
ドーパミンには欲求回路のほかに、もう1つの回路があります。それが「行動をコントロールする回路」です。
「毒を制するには毒を」というわけではありませんが、このコントロール回路を使えば、「欲求に振り回されてしまう」のを改善できます。
そのカギとなるのが「身体感覚」。
コントロール回路は、記憶されている身体感覚を振り返ったときに発動します(これには「島皮質」という脳の部位の働きが関係しています)。
これは「欲求に振り回されないようにする」こととは異なります。ドーパミンの欲求に真っ向から立ち向かうのではなく、欲求に従った結果として過去に自分が受けたストレス(イヤな記憶)を言語化し、身体感覚としてリアルにイメージして行動を抑制するように脳を仕向けるのです。
たとえば前述の男性の場合、欲求回路に負けて「アニメを見続けた結果、どうなるか」を次のように分析してもらいました。
●睡眠時間が削られ、寝不足になる。その後3日くらい生活リズムが乱れる
● 一時的にはストレスが解消するけど、結局後悔するし、見てしまったこと自体もストレスになる
ここでさらに、「ストレスとは具体的にどんな状態か」を言語化してもらいます。
●息が詰まるような、肩に重くのしかかるような感じ
このように分析してもらった結果、2週間後に男性はこんなことを言っていました。
「このままアニメを見続けたら、どうなるか。そのときの身体感覚をイメージするだけで、生活リズムを整えようと心を入れ替えられました。ここ2週間、夜は同じ時間に眠れています。やはり昼間のパフォーマンスが全然違いますし、もちろんそれ以来、遅刻はしていません」
「ストレス」という言葉で片づけず、「息が詰まるような、肩に重くのしかかるような感じ」という具体的な身体感覚として振り返ったことで、ドーパミンのコントロール回路が発動し、それと同じ身体感覚を味わってしまうのを避ける行動が企画されたのです。
これは、脳の前頭葉という部分が「目の前の欲求に従って行動した末路(=過去に味わったストレス)」をリアルに予測し、それを自動的に避けようとするから。この脳の働きをうまく使うことで、行動をコントロールすることができるのです。
目の前の欲求に振り回されて「また同じ過ちを犯しそうだな」と思ったら、「過去に味わった不快な身体感覚」をできるだけ細かく思い出してください。
○誰かに迷惑をかけて胸がキューッと締めつけられるような思いをした
○先延ばしをしてしまい、急いで作業した結果、頭痛と肩こりがひどく悪化した
○寝不足で仕事をしたら、ありえないミスをしてしまい、ショックで食べ物が喉を通らなくなった
このように、人によってさまざまあると思います。
そうした不快な身体感覚を振り返ることで、自然に欲求と距離を置くことができます。
さらに、コントロール回路で思うように行動を操れたときは、「なんか今日はうまくいったな」という達成感があります。
ドーパミンは、増えたきっかけとなった行動を強化するため、「うまくいった」行動をまた繰り返すようになります。そして、数日同じような行動をとると、その行動は自動化されます。すると、まるで以前からその行動をとっていたかのような感覚になるのです。
実際この男性は、睡眠不足が解消されたことをとくに喜ぶでもなく、まるで以前からそうだったかのように淡々と話されました。
思いどおりに行動できず後悔するときはドラマチックですが、思いどおり行動できたときは、実にあっさりしています。これも脳の面白い働きですね。
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いかがでしたでしょうか?
実は、次の大半の人が漠然と思い描いている「要領のよさ」 。5つで構成されているそうです。
1 「余計な情報」に惑わされない
2 「脳のムダづかい」を減らす
3 「すぐやる人」になる
4 「同じ失敗」を繰り返さない
5 「思い込み」を捨てる
この項目を見ただけで、 「たしかに、自分に足りないことかも」と思った人も多いのではないでしょうか?
そうなんです!
「要領をよくする」とは、新たな知識や技術を身につけるというより、ムダを省いたり、余計な情報をカットしたりすることが大切であり、誰でもすぐに実践でき、再現性のあることなのです。それを把握して再現性のある行動にしてしまえば、努力に頼らず「要領がいい人」になることができるというわけです。この本では、最新の脳科学から導き出したメソッドをもとに要領のよさを、再現性のある科学的なコツとしてまとめられています。意外で、すぐに実践できる方法が知りたくなった方は是非チェックしてみてください。
「仕事が終わらない人生」が180度変わる 努力に頼らず「要領がいい人」になる40のコツ
著者/菅原洋平
発行/株式会社アスコム
著者/菅原洋平
作業療法士。ユークロニア株式会社代表。アクティブスリープ指導士養成講座主宰。1978年、青森県生まれ。国際医療福祉大学卒業後、国立病院機構にて脳のリハビリテーションに従事。2012年にユークロニア株式会社を設立。東京都千代田区のベスリクリニックで外来を担当しながら、ビジネスパーソンのメンタルケアを専門に、生体リズムや脳の仕組みを活用した企業研修を全国で行う。『あなたの人生を変える睡眠の法則』(自由国民社)、『すぐやる! 』(文響社)などベストセラーを多数上梓。テレビや雑誌など、メディア出演も多数。