プレッシャーをかけずに、やんわりと相手を励ましたい
あなたが、仕事で取り返しのつかない失敗をして、これまでになく落ち込んでいるとします。
そんなとき、突然やってきた同僚が、こんなアドバイスをしてきました。
「大丈夫、大丈夫!」
「そんなに落ち込んでいてもしょうがない、前向きに考えようよ!」
「気にしないで、元気出そう!」
前向きな言葉をかけてくれるのは有り難いことですが、あまりにもショックなとき、このような言葉が、空虚に感じられてしまうことがあります。
そんなとき、効果のある「脳内トーク」が、
「無理に〇〇する必要ないよ」です。
私たちの脳は、命令されることが大嫌いです。そして、命令されると逆のことをしたくなります。
「この箱のフタを開けないで!」と言われると、フタを開けたくなります。
「隣の人を絶対に見ないで!」と言われると、隣を見たくなります。
「ミッキーがお尻を振ってダンスしているのを想像しないで!」と言われると、つい想像してしまいます。
命令されると、逆のことをしたくなる脳の性質のことを、認知バイアスの世界では「シロクマ抑制目録」と言います。「シロクマのことを考えないで!」と言われると、シロクマのことを考えてしまうのです。
この性質をうまく使う方法が、「無理に〇〇する必要ないよ」という「脳内トーク」です。
たとえば、
「無理にがんばる必要はないよ」
「まだ前向きに考えることができないと思うから、無理する必要はないよ」
「無理に行動しようとする必要はないよ」
「無理に笑顔になろうとしなくていいよ」
と言われると、今は「無理にがんばる必要はない」けれど、脳は反対のことをしたくなります。
こうすることで、自然な形で「いずれ、がんばることが大切」「前向きになることは大切」というメッセージを、この「脳内トーク」だけで伝えることができます。
これは、自分に対しても有効です。
「無理に自信があるようにしなくてもいいよ」
「無理に明るく振る舞わなくていいよ」
「無理に勉強しなくてもいいよ」
「眠れないときは、無理に寝ようとしなくてもいいよ」
こう「脳内トーク」することで、自分に対しても前向きなメッセージを送ることができます。
くり返しますが、相手への「脳内トーク」は、自分への「脳内トーク」にもなります。
そして、自分への「脳内トーク」は、相手への「脳内トーク」になります。すべては、不思議とつながっています。このことを理解すると、自然とコミュニケーションがうまくなっていくでしょう。
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いかがでしたでしょうか? 成功者と呼ばれる人たちは、「脳内トーク」を意識的に活用しています。「脳内トーク」を使って、脳をよい意味で騙し、自分の常識(思い込み)を打ち破る。そして、視点を増やす 。成功者たちの多くが、 「脳内トーク」を活用して、自分を変えてきた人たちなのです。
「人生を変えるためには、大きなことをしなければならない」 、多くの人がそんな常識を信じています。しかし、研究からわかったことは、私たちは大きなことをする必要はないということでした。日々の小さなことが、物事のとらえ方や行動をはじめ、能力や性格、さらには健康、習慣、パフォーマンスにまで影響を与えるということです。そして、そのベースになるのが、 「脳内トーク」なのです。
自分を変化させて、なりたい自分に近づいていくためのより詳しいヒントは「世界一やさしい自分を変える方法」をチェックしてみてください。
「世界一やさしい自分を変える方法」
著者/西 剛志
発行/株式会社アスコム
著者/西 剛志(にし・たけゆき)
東京工業大学大学院生命情報専攻卒。博士号を取得後、特許庁を経て、2008年にうまくいく人とそうでない人の違いを研究する会社を設立。世界的に成功している人たちの脳科学的なノウハウや、才能を引き出す方法を提供するサービスを展開し、企業から教育者、高齢者、主婦など含めてこれまで1万人以上に講演会を提供。エビデンスに基づいた研修、商品開発サービスなども全国に展開。テレビやメディアなどにも多数出演。著書シリーズは海外でも出版され「80歳でも脳が老化しない人がやっていること」(アスコム)をはじめとして累計22万部を突破。
脳科学者 西剛志公式サイト
https://nishi-takeyuki.com