「ダイエットしたいと思いながら、つい食べすぎてしまう」「忙しすぎて、自分のやりたいことをする時間がもてない」「相手にハッキリ言うことができず、ストレスを感じた」「ついスマホを見すぎて、時間をムダにしてしまった」など、思いどおりにいかない自分に苛立だったり、自分を責めたりしたこはないでしょうか?
日々の生活の中で、意志が弱く、なかなか思いどおりにいかないことってありますよね。でも、実は自分を変えることができるかどうかに、意志が強いか弱いかは関係ないそうです。
意志の力に頼るのでなければ、どうしたらいいか。その答えは「言葉の力」を利用することだそうです。人は1日の中で、自分との会話「脳内トーク」を何千回から何万回も行っていると考えられています。つまり、脳は「脳内トーク」の影響を多大に受けているのです。
それなのに私たちは他人と話す技術は学ぼうとするのに、なぜ自分と話す技術は学ばないのでしょうか? 今回は最新の研究データに基づき、誰でも簡単に「脳内トーク」を変えられる方法を、わかりやすく解説した脳科学者の西 剛志さんの著書「世界一やさしい自分を変える方法」の中からDIME読者におすすめしたいノウハウを厳選、再編集してお届けします!
「脳内トーク」の技術を駆使して、脳をよい意味で騙し、自らを成功へと導いてください。
「ここ一番のシーン」に強くなるために
突然ですが、あなたは5万人が集まっているコンサート会場にいます(そんな場面を想像してください)。
そこで憧れのアーティストから、「ステージに上がって、私の代わりに歌をダンスつきで披露してください!」と言われたとします。
ステージに上がると、会場の5万人の目が自分に注目しています。たくさんのカメラも回っています。
そのとき、あなたはどんな「脳内トーク」をするでしょうか。
「こんなの無理」
「不安でたまらない」
「緊張しすぎて震える」
自然に、こんな言葉が出てきてしまうかもしれません。
過剰な緊張状態にあるとき、脳は大きなストレスを受けているため、本来の能力を発揮しにくくなります。
練習ではうまくできても、本番に弱いという人がいますが、これはまさに脳が緊張状態になってしまうからです。
こんなとき、どうしたらいいでしょうか。
実は、「脳内トーク」を変えるだけで、この緊張状態を自分の力に変えることができるのです。
米国ハーバード・ビジネス・スクールのアーサー・ブルックス教授の研究で、こんな実験をしました。
まず、100名以上の人に突然、「歌を歌ってもらう」という課題を与えて、緊張状態をつくりました。
そして、本番前に、次のことを3つのグループにやってもらいました。
① 「私は興奮している!」と声に出す
② 「私は不安だ!」と声に出す
③ 何も言わない
そのあと、彼らの歌の正確度をチェックすると、次のような結果が出ました。
① 「私は興奮している!」と言ったグループ→80・52%の正確性
② 「私は不安だ!」 と言ったグループ →52・98%の正確性
③ 「何も言わなかった」グループ→ 69・27%の正確性
この結果は、かなり大きな話題を呼びました。たった一言、違う言葉を言っただけで、正確度が変わってしまったのです。
②の「私は不安だ!」は、最低の正解率でした。
ネガティブな「脳内トーク」は、集中力を上げる効果はあるのですが、今回のような、歌を正確に歌うというテーマでは、記憶力も必要となってきます。「不安だ」と「脳内トーク」することで脳がリラックスできず、記憶力を下げてしまった可能性もあります。
そうしたことからも、緊張して不安なときは、「興奮している!」と「脳内トーク」するのがおすすめです。
もしくは、サードアイで「〇〇は、興奮している!」と言うと、より大きな効果を期待できます。
先のハーバード・ビジネス・スクールの研究によると、人間は「不安からリラックスする」よりも、「不安から興奮状態に移行する」ほうが、パフォーマンスが高くなることもわかっています。
私たちは「興奮している!」と「脳内トーク」した瞬間、脳に「今、私は興奮している状態なんだ」というシグナルが送られ、今起きていることのとらえ方と生理反応が変わります。
また、脳の「プライミング効果」もあって、「興奮」という言葉に引きずられて、興奮状態、つまり、脳が活性化する状態になりやすくなります。
すると、脳の状態がよくなって、本来の能力が発揮されやすくなります。
「興奮」と言って、すぐに変化を感じられなかったとしても、実際の歌の正確度は上がっていて驚くケースもあります。
これも、「脳内トーク」の効果です。感情を変えるためには、「脳内トーク」の言葉を変えること。それだけで、脳は感情を変化させてくれるのです。
あるインタビューで、映画監督の北野武さんが、こんな印象的なことを言っていました。
「俺も、舞台に立つときは、今でも緊張するよ。でも、その緊張がないと、いいコントができないんだよね」
あれほどの場数を踏んだ人でも、まだ緊張するのかと驚きました。彼は、その緊張をエネルギーに変えるということをしてきたから、素晴らしい実績をつくっているんだと思います。
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いかがでしたでしょうか? 成功者と呼ばれる人たちは、「脳内トーク」を意識的に活用しています。「脳内トーク」を使って、脳をよい意味で騙し、自分の常識(思い込み)を打ち破る。そして、視点を増やす 。成功者たちの多くが、 「脳内トーク」を活用して、自分を変えてきた人たちなのです。
「人生を変えるためには、大きなことをしなければならない」 、多くの人がそんな常識を信じています。しかし、研究からわかったことは、私たちは大きなことをする必要はないということでした。日々の小さなことが、物事のとらえ方や行動をはじめ、能力や性格、さらには健康、習慣、パフォーマンスにまで影響を与えるということです。そして、そのベースになるのが、 「脳内トーク」なのです。
自分を変化させて、なりたい自分に近づいていくためのより詳しいヒントは「世界一やさしい自分を変える方法」をチェックしてみてください。
「世界一やさしい自分を変える方法」
著者/西 剛志
発行/株式会社アスコム
著者/西 剛志(にし・たけゆき)
東京工業大学大学院生命情報専攻卒。博士号を取得後、特許庁を経て、2008年にうまくいく人とそうでない人の違いを研究する会社を設立。世界的に成功している人たちの脳科学的なノウハウや、才能を引き出す方法を提供するサービスを展開し、企業から教育者、高齢者、主婦など含めてこれまで1万人以上に講演会を提供。エビデンスに基づいた研修、商品開発サービスなども全国に展開。テレビやメディアなどにも多数出演。著書シリーズは海外でも出版され「80歳でも脳が老化しない人がやっていること」(アスコム)をはじめとして累計22万部を突破。
脳科学者 西剛志公式サイト
https://nishi-takeyuki.com