「ダイエットしたいと思いながら、つい食べすぎてしまう」「忙しすぎて、自分のやりたいことをする時間がもてない」「相手にハッキリ言うことができず、ストレスを感じた」「ついスマホを見すぎて、時間をムダにしてしまった」など、思いどおりにいかない自分に苛立だったり、自分を責めたりしたこはないでしょうか?
日々の生活の中で、意志が弱く、なかなか思いどおりにいかないことってありますよね。でも、実は自分を変えることができるかどうかに、意志が強いか弱いかは関係ないそうです。
意志の力に頼るのでなければ、どうしたらいいか。その答えは「言葉の力」を利用することだそうです。人は1日の中で、自分との会話「脳内トーク」を何千回から何万回も行っていると考えられています。つまり、脳は「脳内トーク」の影響を多大に受けているのです。
それなのに私たちは他人と話す技術は学ぼうとするのに、なぜ自分と話す技術は学ばないのでしょうか? 今回は最新の研究データに基づき、誰でも簡単に「脳内トーク」を変えられる方法を、わかりやすく解説した脳科学者の西 剛志さんの著書「世界一やさしい自分を変える方法」の中からDIME読者におすすめしたいノウハウを厳選、再編集してお届けします!
「脳内トーク」の技術を駆使して、脳をよい意味で騙し、自らを成功へと導いてください。
うまくいかない人が持っている4つの「脳内トーク」
私は、これまでに、講演会や個人的なサポートなども含めて、1万人を超える人たちに「脳内トーク」や言葉の使い方を伝えてきました。
しかし、その中で、不思議なことを体験しました。同じ方法を伝えても、それを活用してすぐに変われる人と、なかなか変われない人がいたのです。
同じことを伝えたはずなのに、変化のスピードに違いが出てくるのはなぜか。このことを詳しく調べていくと、ある事実が判明しました。
「変われない人は、変化を防げる4つの「脳内トーク」を持っていたのです。
では、ここで質問です。
本書の冒頭で紹介した「でも」の魔法。
試してみて、「いまいちわからない」「効果はどれくらいあるのかな?」と思った人はいませんか。
試してみて、もし変化を感じにくければ、あなたは次の4つの「脳内トーク」を使っている可能性があります。
うまくいかない人の「脳内トーク」と常識はどんなものなのか。それを知ることで変化がスムーズになりますので、一緒に見ていきましょう。
[うまくいかない「脳内トーク」1]「真剣にやらなければいけない」
何かに真剣に取り組んでいる人は恰好いいですよね。
真剣にやることで、さぞかしパフォーマンスも上がるだろうと思うかもしれません。
でも、真剣にやりすぎてしまうと、脳にその反動があることがわかっています。
何事も、真剣にやりすぎてしまうと、脳の疲労物質「グルタミン酸」が溜まってしまい、逆にパフォーマンスが下がってしてしまうのです。
もちろん、真剣に取り組むことで、一時的にパフォーマンスが上がることもあるかもしれません。
しかし、それを長く続けてしまうと、脳が疲れて「脳内トーク」の質が下がってしまう可能性があるのです。
私が、脳の研究をはじめた頃、「脳内トーク」で「効果を感じられない」という人が、全体の14%ほどいて驚いたことがあります。原因を調べてみると、そのうちの約64%の人が、物事を継続して一生懸命やろうとするタイプの人でした。
集中すると、視野が狭まることがわかっていますが、それによって柔軟な思考ができなくなってしまいます。つまり、集中が行きすぎると体に力が入りすぎて、スポーツでも、商談でも、スピーチでも……本来の能力を発揮しにくくなります。
仕事やスポーツで成功している人たちで、いつも体が力んで緊張している人を見たことがあるでしょうか。どんな分野でも、うまくいく人たちは、「真剣にやりすぎる」
というよりも、どこか力が抜けていて、余裕があることに気づくと思います。
集中しながらも、肩の力が抜けてリラックスできている状態を、「ゾーンに入る(フロー状態)」と呼びますが、これは私たちがゲームをしているときの感覚に近い状態です。
仕事でも、スポーツでも、遊び感覚で楽しんでいるように見えるのに、なぜか結果がついてくるような人たちには、すべてをゲーム感覚で楽しむという共通点があります。
そんな人たちは、「脳内トーク」も自然とよくなり、その効果もより大きくなります。
何かに取り組むとき、もし1つの方法でうまくいかなかったとしても、「どうやったら効果が出るのか?」「この2つを組み合わせたら、もっとよくなるかな?」など、遊びの感覚を用いて考える人ほど、結果が出やすくなります。
自分の状況にぴったりな「脳内トーク」を本書の中で探したり、「脳内トーク」を組み合わせてオリジナルをつくってみるなど、ゲーム感覚で楽しむことが「脳内トーク」の秘訣です。
[うまくいかない「脳内トーク」2]「成果を出さなければならない」
あなたの目の前に、美味しそうなバナナが置いてあります。
そして、見知らぬ男性が突然それをわしづかみにして、すごいスピードで無我夢中で食べ続けます。
どうやら、彼にとって味はどうでもよく、とにかく食べ終わることだけが目的のようです。
では、あなたはその人のことを、どう思うでしょうか。
「せっかくなんだから、よく味わったら?」とか、
「この人は、決して幸せにはなれないだろう」
などと感じるかもしれません。
しかし、現実にこれと同じようなことをしている人たちが世の中にいます。それが、プロセスを大切にせず、成果だけを追い求める、「成果主義的な脳内トーク」をする人たちです。そんな人たちの頭の中はこうなっています。
「ゴールできなきゃ意味がない。結果が、すべてだ」
「うまくいかなかったら、完全に失敗」
そんなふうに「脳内トーク」している人は、とにかく大きな成果ばかりを日々追い求めてしまいます。
しかし、悲しいことに、大きな成果や目を見張るような変化というのは、そんなに頻繁には起こりません。その結果、日々の生活の中で、幸せを感じられる回数が少なくなり、脳の状態も下がります。それが続くと、「脳内トーク」も自然と悪くなってしまうのです。
また、大きな変化ばかりを追い求める人には、もう1つ大きな代償があります。脳の「注目バイアス」の効果によって、何か変化があったとしても、それが小さな変化であると気づかなくなってしまうのです。
たとえば、期待した映画なのに、思ったほど感動しなかったという経験はないでしょうか。これは、注目バイアスの作用で、「脳が期待した具体的なシーン」ばかりにフォーカスしてしまい、それ以外の感動的なシーンをスルーしてしまう(頭に入ってこない)ことで起きます。
うまくいく人たちは、大きな成果も目指しますが、その過程で起きる些細な変化も大切にします。
以前、ある大富豪とお会いしたことがあります。彼の成功の秘訣は、「小さな運、中くらいの運、大きな運、そのすべてを大事にしてきたから」という話がとても印象的でした。こういう考え方と習慣をもった人は、当然、日々の幸福度が高まり、「脳内トーク」もよくなります。
そういった意味で、「成果主義的な脳内トーク」から離れるためには、注目バイアスの効果を逆に利用してみるのが有効です。「大きな変化」ではなく、「中くらいの変化」や「小さな変化」に目を向けてみる方法です。
何かに取り組んだとき、
「今日は、こんな新しいことを学んだ」
「書類の書き方が、前回よりもうまくなった」
「仕事を1分だけど短縮できた」
「いつも行かない場所を歩いていたら、いいお店を見つけた」
「取引先から、面白い商品を紹介してもらえた」
「昨日よりも、うまくできるようになった」
「数秒だけだけど、記録が伸びた」
などのように、
取るに足らない小さなこと、目に見えない心の成長などを意識して「脳内トーク」してみましょう。
すると、不思議なことに、日々を幸せに感じられる回数が増えていき、いつの間にか「脳内トーク」の質もよくなっていることに気づきます。
どんな小さな変化でもノートなどに書き出すのも効果があります。
私自身も、以前は、「成果主義的な脳内トーク」をする人でしたが、小さな変化に目を向けることを1年ほど実践してみたところ、いつの間にか、小さなことにも楽しみや喜びを見出せるようになり、自然と「脳内トーク」の質もよくなっていることに気づきました。
小さな変化に意識を向けるだけで幸福度は高まり、長期的に「脳内トーク」もよいものへと変わっていきますので、ぜひ試してみてください。
[うまくいかない「脳内トーク」3]「意志の力が強くなければいけない」
「意志の力が強くないとダメだ」「自力でやることが美徳だ」。こういう価値観を持った人が結構います。
もちろん、世の中には、意志の力が強い人、自分の力だけで道を切り開ける人もいますが、脳科学的には、自分の「脳内トーク」を自分の意志の力だけで変えようとすることはおすすめしません。
なぜなら、「意志力」というのは、脳の中の前頭前野で生み出されますが、それは脳全体の13%ととても小さな部分だからです。小さな部分で一生懸命、自分を変えようと頭だけで考えても、なかなか人は変化することができません。
大切なのは、意志の力だけでなく、環境の力も一緒に利用することです。「脳内トーク」は、環境を変えることで、劇的によくなることがあります。
たとえば、あなたが旅行をしているとき、「脳内トーク」はどのようになっているでしょうか。素敵なホテルに着いたとき、美味しいお酒と食事を堪能しているとき、温泉につかって雄大な景色を見ているときなど……意志の力はまったく使っていない(がんばっていない)のに、自然によい「脳内トーク」ができていないでしょうか。
これは、環境の力によるものです。
脳は、五感の刺激を受け取ったとき、脳のあらゆる部分に火がつき活性化します。
たとえば、悩んでいるときに、自分の好きな場所に行ってみると、意外とその悩みがちっぽけに感じられたり、「大したことなかった」と思えたりしたことがあるかもしれませんが、これは場所や香り、聞こえてくる音などが変わったことによって、脳が活性化して状態がよくなったからです。
また、移動しなくても、美しい自然の景色や映像、写真を見たり、音楽を聞いたり、アロマを嗅ぐだけでも脳は活性化して、「脳内トーク」はよくなることがわかっています。
部屋にお気に入りのインテリアを置いたり、美しい絵画や写真、花や観葉植物などを飾ってみたり、カーテンや照明の色を変える、大好きなお香を焚たいて、運気が上がると思えるアイテムを置いてみるなど、部屋の模様替えや雰囲気を変えるだけでも、「脳内トーク」は変わります。
「脳内トーク」の中味があまりにもマイナスだなと感じたら、まずは環境を変えてみてください。引っ越ししたり、動物に触れあっても「脳内トーク」は変わります。環境の力も利用する、周りの力をうまく使える人が、どんな分野でもうまくいく人たちの共通点です。
[うまくいかない「脳内トーク」4]「毎日続けなければいけない」
あなたは、何か長い間続けている趣味や習慣がありますか。
毎日の散歩、読書、家庭菜園、日記を書くことなど、いろいろあると思いますが、「自分にはこらえ性がないから、なんでも途中であきらめてしまう。続けることができない。どうして、いつも3日坊主になってしまうんだろう?」などと、嘆く人もいます。
でも、そういう人には、こう伝えたいと思います。
「3日坊主は、決して悪いものではありません」
実は、「毎日続けなければならない」と考える人より、
「まあ、できるときにやればいいかな?」
「好きなときに書けばいいや」
くらいのおおらかな気持ちの人のほうが、うまくいきやすいことがわかっています。
こんな興味深い実験があります。
[実験]
・「感謝日記」を、週に3回書くグループと、日曜日にだけ書くグループに分ける
・どちらのグループが、幸福度が高くなったかを測定する
[結果]
日曜日にだけ日記を書くグループのほうが、幸福度が高かった
これは、なぜかというと、「週に3回書いていたグループ」は、最初はよかったのですが、やっているうちに、感謝日記を書くことが「義務」になって、感謝の気持ちがなくなってしまったからだと考えられます。
どんなよい習慣も、「毎日やらなければ」と思っていると、効果がなくなってきてしまうのです。
というわけで、この「毎日続けなければいけない」という、「継続は力なり信仰」が強すぎる人は、
「3日坊主は悪くない」
「好きなときにやればいい」
などと、気楽に「脳内トーク」をしてみることをおすすめします。
私自身も、この事実を知ってから、毎日やるよりも、やりたいときにやるほうが成果が出やすいことを実感できました。義務でやることは、脳の状態を悪くするため、せっかくがんばって毎日やっても、効果が半減してしまいます。
「脳内トーク」も好きなときに、好きな「脳内トーク」を選んで使ってみる。
今日は、この「脳内トーク」をしてみよう。今日は休んでみよう。
そういった、気ままな自分の気持ちを大切にすることが、むしろ「脳内トーク」をよくしていきます。
[付録]
ここまで、いろいろな「脳内トーク」を紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。
本書でお伝えした「脳内トーク」は、特定の場面だけでなく、使い方を応用すれば、考え方をよい方向にシフトさせたいときにも効果があります。
最後に、まとめとして、本書で紹介した「脳内トーク」を使って、先述した「真剣にやらなければいけない」「成果を出さなければならない」という、うまくいかない「脳内トーク」を例にとって、「考え方を改善する脳内トーク」のやり方をいくつか紹介したいと思います。
「真剣にやらなければいけない」という考えを改善する「脳内トーク」
「アナタは、シンケンにヤラナケレバイケナーイ」(サードアイ+音声変化)
「アナタは、真剣にやらなければいけない考えを自分で選んでいます」(サードアイ+選択)
「真剣にやらなければいけない。でも!」(でも型)
「真剣にやらなければいけないかも?」(かも型)
「真剣にやらなければいけない。だからこそ!」(だからこそ型)
「もし、真剣にやらなくてよい状態だったら、どうなるんだろう?」(もし型)
「もし、尊敬する人だったら、どうするだろう?」(もし+サードアイ)
「何が、真剣にやらなければいけないと思わせるんだろう?」(なに型)
「絶対に、真剣にやらなければいけないんだろうか?」(問いかけ型)
「まだ、リラックスしなくてもいいよ」(まだ型)
「1分だけ、リラックスしてやってみよう」(時間型)
「リラックスすることは、将来どのように役立つだろう?」(自分ごと型)
「アナタハ、シンケンにヤラナケレバイケナーイ♪」(好きなキャラクターの声)
「成果を出さなければならない」という考えを改善する「脳内トーク」
「アナタは、成果を出さなければいけない自分を許します」(サードアイ+許す型)
「アナタはー、セイカーをダサナクテハイケーナイー♪」(サードアイ+外国人の声+鼻歌)
「アナタは、成果を出さなければいけない考えを自分で選んでいます」(サードアイ+選択)
「成果を出さなければいけない。でも!」(でも型)
「成果を出さなければいけないかも?」(かも型)
「成果を出さなければいけない。だからこそ!」(だからこそ型)
「もし、成果を出す必要がなければ、仕事はどのように楽しくなるだろう?」(もし型)
「もし、尊敬する人だったら、どうするだろう?」(もし+サードアイ)
「何が、成果を出さなければならないと思わせるんだろう?」(なに型)
「本当に、成果を出さなければいけないのだろうか?」(問いかけ型)
「無理に、プロセスを大切にしなくてもいいよ」(シロクマ抑制目録型)
「プロセスを大切にすることは、将来どのように役立つだろう?」(自分ごと型)
「アナタハ、セイカヲダサナケレバナラナーイ」(好きなキャラクターの声)
*「今日成功した、5つのことは何だろう」という「脳内トーク」も有効です。
これら以外にも、自分にとって最適な「脳内トーク」を本書の中から探したり、使えそうな「脳内トーク」を組み合わせたりしてみてください。変えたい考え方は、すべて本書の「脳内トーク」を応用して改善することができます。
「脳内トーク」は、一度で効果がある人もいますが、数週間から数ヶ月試してみることで、大きな変化を感じる人が多くなります。
ぜひ、真剣にやらずに、遊び感覚でやってみてください。
☆ ☆ ☆
いかがでしたでしょうか? 成功者と呼ばれる人たちは、「脳内トーク」を意識的に活用しています。「脳内トーク」を使って、脳をよい意味で騙し、自分の常識(思い込み)を打ち破る。そして、視点を増やす 。成功者たちの多くが、 「脳内トーク」を活用して、自分を変えてきた人たちなのです。
「人生を変えるためには、大きなことをしなければならない」 、多くの人がそんな常識を信じています。しかし、研究からわかったことは、私たちは大きなことをする必要はないということでした。日々の小さなことが、物事のとらえ方や行動をはじめ、能力や性格、さらには健康、習慣、パフォーマンスにまで影響を与えるということです。そして、そのベースになるのが、 「脳内トーク」なのです。
自分を変化させて、なりたい自分に近づいていくためのより詳しいヒントは「世界一やさしい自分を変える方法」をチェックしてみてください。
「世界一やさしい自分を変える方法」
著者/西 剛志
発行/株式会社アスコム
著者/西 剛志(にし・たけゆき)
東京工業大学大学院生命情報専攻卒。博士号を取得後、特許庁を経て、2008年にうまくいく人とそうでない人の違いを研究する会社を設立。世界的に成功している人たちの脳科学的なノウハウや、才能を引き出す方法を提供するサービスを展開し、企業から教育者、高齢者、主婦など含めてこれまで1万人以上に講演会を提供。エビデンスに基づいた研修、商品開発サービスなども全国に展開。テレビやメディアなどにも多数出演。著書シリーズは海外でも出版され「80歳でも脳が老化しない人がやっていること」(アスコム)をはじめとして累計22万部を突破。
脳科学者 西剛志公式サイト
https://nishi-takeyuki.com