三井住友信託銀行が設置している「三井住友トラスト・資産のミライ研究所」(以下、ミライ研)では、1万人(18歳~69歳)を対象とした資産形成に関する独自アンケート調査を本年1月に実施。先日、結果をグラフと図表にまとめて発表した。
資産形成の取り組み状況
【図表1】資産形成で取り組んでいること(複数回答可) ※定期・不定期問わず
<出所:特に出所を示していない場合、ミライ研「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2023年)をもとにミライ研が作成>
2024年からの新しいNISA制度スタートなど、「貯蓄から資産形成へ」の機運が高まりつつあるが、ミライ研では、1万人に対し資産形成への取り組み状況を調査した【図表1】。
まず年代によらず約3割は「取り組んでいない」との回答だった。一方、「取り組んでいる人」の内訳を見ると、全体では「預貯金」が50%超で第1位となっており、2位の「投資信託」(14.6%)を大きく引き離している。
年代ごとに見てみると~20歳代、30歳代、60歳代では「投資信託」が2位となっており、「株式」や「国債」などを上回る結果となった。
【図表2】年あたり資産形成額 (対象:「資産形成に向けての取り組みあり」との回答者)
では、資産形成に取り組んでいる人の資産形成額はどうか。【図表2】では、資産形成に何かしら取り組んでいると回答した人の年間の資産形成額を示している。
どの年代を見ても、「1万円~50万円」の回答割合が多いようだ。また、平均金額は103.8万円となった。
資産形成における税制優遇制度の活用状況
【図表3-1】DCとNISAの利用状況・両立状況
【図表3-2】DCとNISAの利用状況・両立状況 ※未利用者を除く
※NISA:一般NISA・つみたてNISAの合計、DC:企業型DC・iDeCoの合計
資産形成を後押しする「税制優遇制度」の利用状況をみてみると(【図表3-1】)、制度の「未利用」が75.7%と最多であり、制度の普及・活用面で余地がありそうだ。
年代ごとの制度の利用状況を見てみると(【図表3-2】)、若年層はNISA制度中心だが、年齢が上がるに従いDC制度の活用割合が上がっていることがわかった。
また、両制度を併用している割合は24.8%だが、30歳代までの若年層では3割を越えていることが確認できた。
「貯蓄から資産形成」に向けての国家的な取り組みが進行中だが、「何かしら資産形成に取り組んでいる人」は10人中7人と「過半数を超えてきている」とはいえ、年間の資産形成額は約100万円程度と現行の一般NISA枠で収まるぐらいの規模となっている。
2024年以降、NISAやiDeCoの制度拡充が予定されている現在、税制優遇制度の利用割合は約24%となっており、制度利用の意識・実態の両面において「今後の取り組み余地が大きい」状況。
今後の金融経済教育の拡充と、各種優遇制度を賢く活用していくための情報発信が期待される。
調査概要
調査名/「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2023年)
調査対象/全国の18~69歳 ただし関連業種(金融、調査、マスコミ、広告)従事者を除く
調査方法/WEBアンケート調査
調査時期/2023年1月
サンプルサイズ/1万1190
関連情報
https://mirai.smtb.jp/category/report/1705/
構成/清水眞希