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リーマンショックとコロナ禍で地価はどう変動したのか?

2023.07.14

新型コロナウィルスの感染拡大が始まってから間もなく丸3年になる。この間、感染拡大を防ぐために緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などによる人流抑制が行われ、人流抑制は日本経済に打撃を与えた。経済的な打撃は不動産市場にも及び、コロナ禍前までは上昇が続いていた土地価格(地価)も下落に転じた。

そんな中、三井住友信託銀行はこのほど、国土交通省が3ヶ月ごとに調査・公表している地価LOOKレポートをもとに、コロナ禍により日本の土地価格がどのように動いたのかを読み解く「コロナ禍で地価はどう動いたか?~地価LOOKレポートで読み解く地価動向」と題したレポートを公開した。詳細は以下の通り。

地価LOOKレポートとは?

地価LOOKレポートは、2007年第4四半期の調査から公表されており、正式名称は「主要都市の高度利用地地価動向報告」である。調査の目的は、「主要都市の高度利用地等を対象に地価動向を調査し、先行的な地価動向を明らかにすること」とされている。

調査時点は第1四半期(1月1日~4月1日)、第2四半期(4月1日~7月1日)、第3四半期(7月1日~10月1日)、第4四半期(10月1日~1月1日)の年4回であり、不動産鑑定士が不動産鑑定評価に準じた方法により地価動向を把握し、その結果を国土交通省が集約したものである。

調査対象地区ごとに、前回調査時点から3ヶ月間の地価動向が、「上昇(3%以上6%未満)」など9区分で表されている[1]。調査対象は東京圏、大阪圏、名古屋圏、地方圏の4圏域における「特に地価動向を把握する必要性の高い地区」とされ、住宅系地区と商業系地区の2つの用途別に調査されている(図表1)。

調査地区数は現在80地区だが過去3度に亘り変更されており、圏域・用途によっても調査地区数が異なることから、時系列あるいは圏域別・用途別の比較を可能にするため、本稿では「上昇」「横ばい」「下落」の実数ではなく、基本的に各地区数の比率で比較・分析を行うこととする。

地価に関する公的な調査といえば、地価公示と都道府県地価調査(基準地価)が広く知られており、マスコミ等でもよく取り上げられる。この両調査は、調査地点数が2万地点以上と非常に多く広い範囲がカバーされているが、調査時点は地価公示が1月1日、基準地価が7月1日と年1回であり、実勢価格の動きに遅れるとも言われている。

地価LOOKレポートは、両調査よりも調査が開始されてから日が浅く調査地区数は少ないが、実勢価格に遅行しやすいという両調査の弱点を補い、先行的な地価動向を明らかにするために速報性を重視した調査といえる。

コロナ禍の地価動向(2020年第2四半期以降の動き)

(1)全地区の動向

新型コロナウィルスは2020年に入ってから世界的に感染が拡大したが、ここでは国内で初めて緊急事態宣言が発令された2020年4月から現在までをコロナ禍の期間とし、2020年第2四半期以降の地価LOOKレポートをコロナ禍における地価動向を表すものとする。

コロナ禍直前の2020年第1四半期は、全100地区[2]のうち73.0%が「上昇」、「下落」は僅か4.0%だった。それが緊急事態宣言で人流の抑制が始まった2020年第2四半期には、下落地区が38.0%に増加し、上昇地区は1.0%のみとなった。

同年第3四半期の上昇地区は1.0%で変わらず、下落地区が45.0%に増加したが、第4四半期は上昇地区が15.0%と早くも増加に転じ、下落地区は38.0%へ減少した。続く2021年第1四半期には上昇28.0%、下落27.0%と上昇地区数と下落地区数が逆転していることから、2020年下期が地価のボトムだったとみることができる。

その後も人流抑制が断続的に実施され地価も一進一退となるが、2021年第4四半期には上昇地区が過半となるなど回復が鮮明となり、直近の2022年第3四半期では全80地区のうち65地区(81.3%)が上昇となっている(図表2)。

(2)圏域別の動向

次に圏域別の動きを比較する(図表3)。

圏域別にみると、名古屋圏は調査地区数が少ないこともあり、動き方が最も極端であった。

名古屋圏では、コロナ禍前はリニア新幹線開通期待から地価が上昇しており、2013年第2四半期から2020年第1四半期まで28期(7年間)連続で上昇地区100.0%だったのが、コロナ禍が始まった2020年第2四半期には逆に下落地区が100.0%となった。ただし、名古屋圏は回復した時期が早く、2021年第1四半期には下落地区がなくなり、上昇地区は66.7%となった。

名古屋圏に次いで下落地区の比率が高まったのが大阪圏である。大阪圏の下落地区比率は、2020年第2四半期68.0%、同年第3四半期72.0%と上昇しており、なかでもインバウンド需要消滅の影響が大きかった「心斎橋」「なんば」といったミナミの商業集積地や、大阪駅近くの商業集積地である「茶屋町」の3地区は、2021年第1四半期まで4期連続で下落率が▲3~6%となり、地価の下落幅が大きかった。

大阪圏は回復にも時間が掛かり、上昇地区数が下落地区数を上回り地価がボトムアウトしたのは2021年第4四半期であった。

東京圏は大阪圏・名古屋圏に比べると、コロナ禍当初の下落地区比率は低く、2020年第2四半期に銀座や新宿など商業地4地区が下落に転じたが、2020年第2四半期の下落地区数は、その前の期から下落していた「元町(横浜)」を含む5地区(11.6%)だけだった。

その後は、丸の内・大手町など最都心の商業地も含め下落地区が増加していったが、下落地区比率はピークでも27.9%と、大阪圏(ピーク72.0%)や名古屋圏(同100.0%)よりも低位であり、名古屋圏に1期遅れて2021年第2四半期に東京圏の上昇地区数は下落地区数を上回った。

なお「歌舞伎町」「上野」といった、インバウンド需要の恩恵を受けていた地区の下落率が大きかった点は大阪圏と同様である。

地方圏は下落地区比率がピークでは30.4%に上昇したが、2020年第2四半期~第3四半期の最も厳しい時期でも上昇地区が1地区残っていたことが特徴である。上昇していたのは、2020年第2四半期が「中央一丁目(仙台)」、第3四半期が「駅前通(札幌)」である。

これら2地区の不動産鑑定士コメントによると、「(中央一丁目)当地区及びその周辺のオフィスでは、空室率は引き続き低位で推移しており、新規賃料の上昇傾向が続き、既存テナントの賃料増額交渉は継続して見られる」、「(駅前通)大手企業からのオフィス需要に加えて、IT企業、コールセンター、人材派遣業等の新規事業所開設等のまとまったオフィス床需要が見込まれ、需要は依然として安定している」とされていた。

オフィス賃貸市場のデータをみると、札幌と仙台は他の都市に比べ、コロナ禍以降のオフィス空室率の上昇幅が小さく、札幌についてはコロナ禍以降も空室率は概ね2%台の低水準を維持している(次頁図表4)。このように、三大都市圏では中心部のオフィスや商業施設が集積する地区の地価が軒並み下落したのに対し、地方圏ではコロナ禍にあってもオフィス市況が堅調を保ち、地価が下落しなかった地区が存在したのである。

(3)用途別の動向

住宅系地区と商業系地区に分けて地価の動きをみると、住宅系地区は下落地区比率が最も高い2020年第3四半期でも18.8%だったのに対し、商業系地区は同四半期の下落地区比率が57.4%となり6割近くの地区で地価が下落していた(図表5)。

住宅系地区で下落したのは、名古屋市の「大曾根」「覚王山」「御器所」、京都市の「二条」「桂」、大阪市の「福島」という6地区に限られるが、商業系地区は東京や大阪、名古屋の中心地に限らず地方都市にも下落地区がみられ、住宅系地区とは対照的である(図表6)。

回復のスピードも用途により異なっており、住宅系地区は2021年第1四半期には早くも下落地区がゼロとなり、2022年第2四半期には全ての地区が上昇となった。対して商業系地区は、2021年第3四半期まで下落地区比率が40%前後で推移し、下落地区比率が1ケタ台に低下したのは漸く2022年第2四半期になってからだった。

人流抑制やインバウンド需要の消滅、あるいはテレワーク拡大によるオフィス需要の減退などにより、都市中心部のオフィスや商業施設の集積地ほど大きなダメージを受け、地価は多くの商業系地区で下落し回復に時間が掛かった。

一方、住宅系地区については、一時的に住宅の販売活動が停滞し地価が下落する地区も生じたが、2020年の秋頃から住宅販売が回復したことにより、地価が回復する時期も早かったといえる。このように、住宅地と商業地で地価の動き方が大きく異なることもコロナ禍における地価動向の特徴である。

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