『慮る』の読み方は珍しく、正確に読める人は少ないかもしれません。堅い表現でもあり、使う機会は限られてくるでしょう。読み方や意味以外に、『慮る』を使った主な例文や似た意味を持っている類語の使い方も紹介します。
「慮る」の読み方
『慮る』の読み方は『おもんぱかる』と『おもんばかる』、どちらが正しいのでしょうか?読み方や意味、語源を解説します。
読み方は「おもんぱかる」
『慮る』の読み方は『おもんぱかる』または『おもんばかる』です。辞書によると、現代語では『おもんぱかる』が一般的とされています。
辞書には片方だけ、または両方が記載されているケースがあり、『おもんばかる』は古語として知られる読み方です。
半濁音を使う言葉は少ないように思えますが、例を挙げると『張る』という言葉は『頑張る(がんばる)』『引っ張る(ひっぱる)』のように濁音・半濁音どちらにも変化します。
現状は、『おもんぱかる』『おもんばかる』どちらでも間違いではないとされるケースが多いようです。辞書に従う場合、正式とされる『おもんぱかる』を覚えておく方がよいでしょう。
「慮る」の意味と語源
『慮る』には、『相手の気持ちを察しようと思いを巡らす様子』や『周囲の状況を考えて行動する様子』などの意味があります。『思慮』『熟慮』といった熟語にも使われ、『よく考える様子』を指し示す言葉です。
平安時代の書物、竹取物語には『おもひはかる』が使われています。『思う』と『量る(計る)』が組み合わさった言葉です。1600年代に書かれた宇治拾遺物語では『おもんばかり』という用法が見られ、時代に合わせた音の変化が感じ取れます。
1800~1900年代の近代小説の読み仮名では『おもんぱかる』が優勢となっているため、近代になるにつれて『おもんぱかる』が一般化したようです。
「慮る」の使い方と例文
『慮る』は、どのようなシーンで使われるのでしょうか?一般的な使い方と、例文を紹介します。かしこまった表現で、文章で見る機会が多い言葉ですが、会話文でも使われるケースがあります。
「慮るあまり」
『慮る』の後に『あまり』が続く文章は、否定的な表現が多くなります。感情表現の後に続く『あまり』は、程度がはなはだしく過度な様子を表し、『相手の気持ちや周囲の動向を察する気持ちが行き過ぎてしまった』という意味です。
『慮る』以外にも『焦るあまりに』や『悲しさのあまり』など、さまざまな場面で使われます。『慮るあまり』を使った例文を見ていきましょう。
【『慮るあまり』を使った例文】
- 彼を慮るあまり、強い言い方になってしまった
- 相手のメンツを慮るあまり、それ以上は発言できなくなった
「慮ってのこと」
『慮ってのこと』は、相手に対しての気遣いや配慮を表現している言葉です。状況をよく見極め、熟考した上で導き出した結論を指すときにも使われます。
『~てのこと』は、『あなたのためを思ってのこと』『状況を考えてのこと』など、『慮る』以外にも一般的に使われる表現です。
結果として相手に気持ちが伝わらなかった場合でも、『慮ってのこと』が使われるパターンがあります。主な例文を見ていきましょう。
【『慮ってのこと』を使った例文】
- さっきはよく分からなかったが、彼の発言はCさんを慮ってのことだったのだろう
- 何も言わなかったのは、息子を慮ってのことだ
- 彼を慮ってのことだったのだが、理解してもらえなかったようだ
「慮る」の類語
『慮る』と同じように、相手の気持ちや様子を察する意味を持つ言葉はいくつかあります。主な類語と意味、使い方を見ていきましょう。
「思いやる」
『思いやる』は、主に人または生物に対して使われる言葉です。相手の気持ちや立場について思いを巡らし、共感・同情・配慮する意味で使われます。
類語には同情を示す『哀れむ』がありますが、『思いやる』は必ずしも同情だけを表す言葉ではありません。
慮るとは異なる意味合いで、遠方にいる人や遠い物事に思いをはせるときにも『思いやる』が使われます。
【『思いやる』を使った例文】
- 人とうまくやっていくには、お互いに思いやる心を持つのが重要だ
- きっと、思いやる気持ちが足りなかったために失敗したのだろう
- ペットと暮らすと、人を思いやる心が育つのではないか
「忖度」
『忖度』には、『相手の気持ちを推察する』といった意味があります。あくまでも言葉の意味としては、『推察』『他人の心を理解しようとする様子』です。
ニュースやドラマで『忖度』が使われるときは、目上の人や取引先の気持ちを察して先回りする様子を指すケースが多く、近年では悪い印象が強くなっています。
ネガティブな使い方は誤りであるとはいえ、『忖度』を日常会話で使う場合、誤解を受けないために使い方や場面を考えることも大切です。例文を見ていきましょう。
【『忖度』を使った例文】
- 忖度せず、自分の意見を伝えるようにしましょう
- 友人の気持ちを忖度し、悩みを聞くことにした
「推し量る」
『推し量る』は、慮ると同じように、『推測』や『人の気持ちを推察する』意味を持つ言葉です。適当に見当をつけるのではなく、似た条件の出来事や経験を当てはめて推測します。
人の気持ちだけではなく、『今後の経済動向』や『出来事の推移や全体像』も『推し量る』ことが可能です。『慮る』は主に人や人が関係する場面で使われることが多い言葉のため、使用シーンが異なるパターンもあります。例文を見てみましょう。
【『推し量る』を使った例文】
- 彼女の行動の意味は分からなかったが、どうにか推し量ることはできないかと考えた
- これからの展開を推し量るのは難しそうだ