6月最終日の北嶋秀朗の指導実践はいい雰囲気に
1週間後の29日。6月の「モジュール2」の最終日だったが、この日は北嶋が指導実践にトライ。中村憲剛がフィジカルコーチ、内田がGKコーチ、島田がヘッドコーチという役割分担で、同じインテルの戦い方にフォーカスしたトレーニングにのぞんだ。
朝一番だったこともあり、同日のウォーミングアップ時にはフィジカル担当の中村憲剛が元気よく号令をかけ、イキイキとした雰囲気を作り出した。また、内田も慣れないGKグローブをつけて、GKの選手たちを目がけてロングキックを次々と蹴っていた。
こうしたスタッフのサポートを受けながら、監督役の北嶋が全体をマネージメントしたが、22日の大黒・中村憲剛の指導実践時より選手の反応は格段によくなり、充実したトレーニング内容になった。
指導者仲間と意見を出し合いながら日々、トレーニングをブラッシュアップさせ、選手が前向きに変わっていくのを間近で見られるのも、指導者講習会の醍醐味。だからこそ、北嶋も中村憲剛も「本当にやってて楽しい」と繰り返していたのだろう。
「最終日は最高の雰囲気が作れたと思います。毎日、食事しながら議論を繰り返してますけど、お互いがフラットな関係性でいろんな角度からディスカッションできる場っていうのはなかなかない。こういう経験をすればするほど、指導者になるための勉強は必要だと思います。やっぱり、選手時代とは目線が全然違うし、見えるもの、得られるものも多くなる。毎日が新たな発見の連続で、自分にとって貴重な時間になってます」と中村憲剛もしみじみと語っていた。
多くのプロ監督が「S級の講習会を受けてけて一番大きいのはいい仲間ができること」と強調していたが、ここでともに汗を流し、苦労した経験は何物にも代えがたい財産になる。「ライセンス不要論」を唱える本田らにも、前向きな点はぜひとも理解してほしい。
大黒や中村憲剛らのトライは前半戦が終わったところ。夏にJリーグクラブでの研修に行ける受講生は行き、そのうえで9月のモジュール3、10~11月のモジュール4、12月のモジュール5に参加。さらに海外研修を経て、ようやくS級コーチ認定を受け、現場に立つことができる。
近い将来、「中村憲剛監督」「大黒将志監督」「内田篤人監督」「北嶋秀朗監督」の雄姿が見られるかもしれない。その日が早く訪れるのを願いつつ、S級講習会後半戦の動向も見続けていきたいものである。(本文中敬称略)
取材・文/元川悦子
長野県松本深志高等学校、千葉大学法経学部卒業後、日本海事新聞を経て1994年からフリー・ライターとなる。日本代表に関しては特に精力的な取材を行っており、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは1994年アメリカ大会から2014年ブラジル大会まで6大会連続で現地へ赴いている。著作は『U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日』(小学館)、『蹴音』(主婦の友)『僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」(カンゼン)『勝利の街に響け凱歌 松本山雅という奇跡のクラブ』(汐文社)ほか多数。