繰り返し楽しく運動することで子どもの運動能力は必ず向上する
「アンリミティブ」の発売以降、バンダイには様々な企業からアプローチがあったとのことで、デジカライズではこうした企業とパートナーを組み、加速度センサーとアルゴリズムを刷新、より精密に体の動きを分析・判定することが可能になった。ダンスなどより複雑な動きをセンサーでリアルタイムに取得できるといった技術は、セイコーエプソンなどパートナー企業の協力によるものだ。
専用アプリは、子どもの運動能力開発や競技スポーツ選手に対して、バイオメカニクスの観点からサポートを行う、東京大学名誉教授でスポーツ科学を研究する深代千之氏監修のもとに制作。深代氏はアンリミティブの開発時にも監修を行っている。
スポーツ庁「令和4 年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査報告書」によると、2019 年以降、小中学生の体力合計点は男女共に低下し続けており、2022年度の調査では過去最低点を記録。肥満生徒は小学生の男女共に増加している。
また、ブレイクダンスがパリ五輪の正式競技に採用されたり、ダンスが中学生の必修科目になっていることから、デジカライズは、これらの子どもたちを取り巻く運動環境の変化に対応した、運動習慣改善サポートをテーマに商品開発を行った。
「私はバイオメカニクスという動きを分析するのが専門で、運動は子どものころの経験が重要と考え分析、研究を行っています。デジカライズでこの研究をうまく具現化できればいいと思っており、アドバイスしてきました。
スポーツはきついというイメージを持つ方も多いですが、子どもの頃は、長く走れるようになる、重いものを持てるようになるという“トレーニング”ではなく、うまくなるという目標で運動しており、できなかったことができるようになることで楽しいと感じるのです。
トレーニングはやらなければすぐに効果が落ちてしまいますが、トレーニングとは異なるのが『巧みさ』です。生まれた後に練習することで利き手になりますし、自転車は乗れるようになると一生乗ることができます。体で覚えた巧みさは小脳に格納されて劣化しません。体で覚える動作、運動を子どもの頃にたくさんやっておくと、どんな動きをさせても勘のいい子どもになります。
運動の上手・下手を遺伝のせいにする人がいますが、それは学びそびれているだけで、遺伝ではなくやれば必ずできるようになるものなのです。
それを世の中に浸透させたいということ、運動を行うときにグッズを使うと効果が高いということがあり、うまく融合させれば多くの子どもたちに楽しく運動してもらえるのではないかと、みなさんと一緒に開発を進めてきました。
投げる、飛ぶ、走ることも、“トレーニング”ではなく、うまくなりたいと考えてやればよく、疲れたら休んでもいい。うまくなると楽しいと思えるようになり、またやろうという気持ちになります。それをサポートするのがデジカライズだと思っています。成功することで自信にもなりそれが継続にもつながって、運動を習得できるようになるのです」(深代氏)
【AJの読み】子どもだったらこんなに動けるの!? と愕然
深代氏が学長を務める日本女子体育大学は日本で唯一ダンス学科があり、学生にいろいろな動きをしてもらい開発にも反映させたとのこと。センサーユニットを開発したセイコーエプソンでも、普段は動くことが少ないエンジニアがダンスらしき動きをしながら悪戦苦闘したとか。
デジカライズは25㎝までのモデルもあるので女性や、足が小さい男性なら大人でも履くことができる。実際にデジカライズを履いてオソトプラクティスの「だるまさんがころんだ」や「スキップロープ」を試してみたが、足は上がらないし、思った通りに体が動かずに愕然とした。
クエストのクリアや、プラクティス向上にはかなりの運動が必要で、小学生だったらこれが全部できるようになるのかと考えると、子どもの時代に継続して運動をすることの重要さが実感できた。
アンリミティブの記事の際も言及したが、小学生だけでなく、運動不足が著しい大人やシニアに向けた商品もぜひ開発してほしい。
文/阿部純子