パーソルキャリアが運営する転職サービス「doda」から先日、「転職市場予測2023下半期」が公開された。本稿では、その概要をdoda編集長・加々美祐介氏の解説と併せて紹介していく。
2023年下半期の転職市場は新型コロナからの経済回復を背景に“追い風”が続く
2023年下半期の転職市場全体における求人は、今回予想した7業種・8職種の全15分野で【増加】と予測しており、市場全体で活発化する見込み。
求人増加の背景には、新型コロナからの経済回復が挙げられるだろう。2020年から徐々に企業の業績が回復し始め、最近では外食や旅行・冠婚葬祭などのサービス業でも回復の兆しが見られつつある。
これにより、コロナ禍で一時採用を中断していた企業も再び採用活動を始め、転職市場全体で求人が活性化している。
2023年下半期は、ベテラン・若手ともに転職のチャンスがあるだろう。
ベテランのニーズが高まっている背景には、事業拡大に伴い組織を強化するため、技術力や知識・経験を持つ人材を積極的に採用しようとする企業の動きなどがある。
マネジメント経験者のニーズは引き続き高いものの、経験の有無にかかわらず、優れた実績を有するベテランを「エキスパート職」として採用するケースも増加傾向にある。
そして若手のニーズが高まっている背景には、少子高齢化に加え、若手ほど転職する人の割合が高いという構造的な要因があり、企業は将来を担う人材を育成するために若手の採用を強化している。
また、新卒採用市場の競争も激しくなり、第二新卒採用を行う企業も増えている。これらの企業では未経験からの転職も可能な職種があり、チャンスが広がっている。
さらに業種別で見てみると、IT・通信業界ではDXニーズが引き続き拡大。建築・土木業界では2024年3月の働き方改革の猶予終了(4月から時間外労働の上限規制適用開始)、製造業では世代交代を踏まえた技術継承、化学・素材業界ではEV(電気自動車)の生産体制の強化、食品業界では新卒から中途採用への人材戦略の見直しなど、各業界で求人増加につながり得るさまざまな人材採用の課題が浮上している。
2023年下半期の転職市場トレンド(解説:doda編集長・加々美 祐介氏)
賃上げ(ベースアップ)に踏み切る企業が増加。求人の好条件化が進む
物価高の影響を受け、一部の大手企業やスタートアップ企業を中心に、賃上げの動きが広がっています。基本給や賞与、営業手当の増額などに加え、評価制度や賃金制度の見直しも進んでいます。これに伴い、求人の好条件化が見込まれます。
アフターコロナで自分に合った就業スタイルを選びやすく
コロナが5類に移行し、リモートワークを継続する企業もあれば、出社を増やしリモートワークとのバランスを見直す企業も出てきています。はたらく側も、リモートワークを希望する人もいれば、出社を希望する人もいるなど、はたらき方の多様化が進んでいます。さらに、出社を基本とするスタイルに変えた場合でも、個人の事情に合わせて一部リモートワークを認めるなど、柔軟に対応する企業も増えています。その結果、はたらく人々は、自らに合った就業スタイルを取る企業を、より選択しやすくなるでしょう。
社員定着率の向上を目指し、就業環境の改善が加速
売り手市場に伴い、企業間での人材獲得競争が激化しています。そのため、採用に力を注ぐだけでなく、社員の満足度を高め定着率向上(離職防止)を図る動きが活発化しています。具体的には、業務効率化に向けたDX化や残業削減、賃金の向上など、就業環境の改善が進んでいます。さらに、研修体制の強化やタレントマネジメントの導入を行い、社員の能力開発の支援や社内の人事課題の特定と改善を行う企業も増加傾向にあります。そのため、転職希望者は今以上に自分に合った企業を探しやすくなると推測されます。
doda編集長 加々美 祐介(かがみ・ゆうすけ)氏
2005年、株式会社インテリジェンス(現パーソルキャリア株式会社)に入社。2013年にはカルチャー変革の仕組みづくりと推進をミッションとした新規部署を立ち上げる。2014年には人事部門も管掌、人事制度企画や採用、異動・配置転換、組織・人材開発など、ビジョンの実現と経営戦略の実行に向けた、戦略人事全般を担う。2019年、新しいマッチングサービスを開発する新規事業開発部本部長。2021年には執行役員。2023年4月、doda編集長、プロダクト&マーケティング事業本部 事業本部長に就任。
関連情報
https://doda.jp/guide/market/
構成/清水眞希