自由に行き来しながら最新情報をキャッチ
3階は一見すると混とんとしているが、社会課題解決とテクノロジーを考える SOCIAL INNOVATION AREA や、スタートアップ支援を行う行政のブースが並ぶ INCUBATION AREA など、エリアによってテーマが設けられ、それぞれに関連する展示やカンファレンスが行われていた。
セッションいずれもオープンで入退場は自由。中には立ち見の人たちが展示ブースにあふれているところあった。テーマも幅広く、実用的な最新のスタートアップ情報や経営ノウハウ以外にも、AIやサイバースペースをテーマにしたテクニカルな話題も取り上げられていた。
個人的には、商用EV開発ベンチャーのフォロフライと連携する商社や大手企業によるセッションが興味深かった。ファブレスで生産する小型EVは物流営業ナンバーを取得しており、丸紅の支援や大企業の支援を受けながら、エネルギー面も含めた社会課題解決に取り組んでいる。
セッション中はブースに近づくことさえできないところがある一方で、閑散としているところもあり、エリアによって人の密集度がだいぶ差があるように見えた。参加者同士の情報交換用として事前に登録を推奨されアプリも、使いこなしていたという声はあまり聞かれず、このあたりは今後の改善点といえそうだ。
目玉のピッチイベントは優勝者に最大1000万円を授与
IVSの目玉の一つで、スタートアップの登竜門とも呼ばれる国内最大級のピッチイベントの「LAUNCHPAD」は、約400社の応募から選ばれた14社のファイナリストが登壇し、華々しい演出で始まる6分間のエレベーターピッチを繰り広げた。
「IVS2023 LAUNCHPAD KYOTO」はロームシアター京都で開催された。
発表内容は、ECやセキュリティ、AI、キャリアアッププラットフォーム、代替肉、サーキュラーエコノミーなど幅広く、ビジネスとしてはほぼ完成しているところが多いように見えた。実際に複数の審査員が同様のコメントをしており、具体的に名前を挙げて出資を検討したいという声も聞かれた。
そうした評価の高いスタートアップが多数参加した中、においでわかる排泄センサー「ヘルプパッド2」を開発したabaが優勝し、オーディエンス賞とW受賞を果たした。
「ヘルプパッド2」はベッドに敷くだけで使える排泄センサーで、7年間集め続けたデータを元に開発を重ね、特許も出願している。おむつを開けずに中が見たいという介護現場の要望に応えて開発されたもので、介護施設だけでなく一般向けにも販売を計画していることも含め、圧倒的な支持を受けた。
今回は優勝者特典として「スタートアップ京都国際賞」が創設され、最大1,000万円の補助金が授与されたことから、授与式には京都府知事の西脇隆俊氏も参加した。
優勝者には京都国際賞が贈られ授賞式には京都府知事も参加した。
その他は、5位にECに特化したノーコードツールを開発するテープス、4位に監査や認証などの文系のセキュリティをDXするSecureNavi、3位に電話での商談をAIで解析して自動入力する「JamRoll」を開発するPoetics、2位に債権管理・督促回収をデジタルの力で自動化・効率化する「Lectoプラットフォーム」を開発するLectoがそれぞれ選ばれた。
個人的には登壇社の中で唯一京都を拠点とし、デザインマップとロケーションテクノロジーを融合する世界唯一のプラットフォームを開発するStrolyに注目していたが、残念ながら今回は受賞を逃してしまった。
高い技術とアート性を融合したStrolyの地図サービスはSXSWの公式マップにも採用されている。
他にも、中小印刷会社の支援にもつながる、プリントオンデマンドをWEBに組み込むものづくりサービス「Printio」を開発するOpenFactoryや、独自の植物由来油脂技術で美味しい代替肉を開発するLypidなど、支援によって一気に成長できる可能性のあるところがいろいろあり、今回の登壇を機に投資家の注目が集まるかもしれない。