アフターコロナに向けて多くのイベントがリアル開催に戻り、これを機に運営スタイルを変えるところも出てきている。「次世代の、起爆剤に。」をミッションに、企業経営者や投資家とスタートアップコミュニティが一同に会する、国内最大級のスタートアップカンファレンス「IVS」は、2007年から続けてきた招待制を変更し、より多くの人たちが参加できるチケット制へと門戸を広げた。
背景には、日本の起業家を10倍に増やし、スタートアップへの出資額を10倍にしようという運営側のチャレンジがある。その初めての取り組みとなる「IVS 2023 KYOTO」は、京都の「みやこめっせ」と「ロームシアター京都」を会場に約250のセッションが催され、Web3プレイヤーが集まる「IVS Crypto」とあわせて、6月28日から30日の3日間に国内外から1万人の参加者が集まった。
また今回は、独立系グローバルVCのHeadline Japanが、京都府をはじめとする行政機関や産業支援機関が参加するIVS KYOTO実行委員会を設立し、地域産業の振興や新産業の創出にも力を入れている。
地域との連携を強め、150を超えるコミュニティパートナーが参画した。
チケットはNEXT、PRO、VIPと3種類あり、PROは購入後の審査がある。価格はいずれもドル建てで399ドル、1999ドル、9999ドルと、早割りはあるものの国内イベントとしてはかなり高額だ。それでも参加者が1万人を超えたのは、「一度は招待されたいイベント」と言われてきたブランド力の高さによるものだろう。
ゾーニングで目的にあわせた出会いの場を創出
メイン会場となるみやこめっせではゾーニングシステムが採用され、事業の成長を目指すスタートアップ経営者や投資家らを対象にしたPRO BASE 、起業を目指す人たちや学生が幅広く参加できるNEXT CITY、交流の場となるフードコートのVILLAGEというようにフロアが分かれていた。チケットによって入れる場所や参加できるイベントが制限される。
特徴的なのはフロアの演出で、どのフロアもダークなアトラクション風な照明で什器も黒を基調にしており、昼も夜もわからずどこにいるのかもわからなくなるような不思議な感覚にさせられた。とにかく参加者の年齢が若く、Tシャツやポロシャツにスニーカーかサンダルというようにラフな格好が多かったせいか、ビジネスイベントという雰囲気はほとんど感じられなかった。
そうした中でPROかVIPチケットだけが入れる地階のPRO BASEは、これまでのIVSスタイルが踏襲されていたようだ。ラウンジコーナーには事業プレゼンや商談ができるスペースが設けられ、熱心に語り合う姿が人たちであふれていた。初めての人からも次々に声をかけられ、あっという間に名刺がなくなる。招待制の時はこのような雰囲気が当たり前だったのだろうなと思わされた。
PRO BASEのラウンジはいるだけでいろんな人たちから声をかけられた。
落ち着いた地階とは一転、3階のNEXT CITYは圧倒されるほどの熱気にあふれていた。柱の無い大空間には、自由に行き来できるIVS Cryptoとあわせて大小7つのステージがあり、様々なスタイルの展示ブースや昼から飲めるバーコーナーなどがずらりと並んでいた。
昨年から併催しているIVS Cryptoの展示エリアはアートやゲームの要素が強い。
MicrosoftやGoogle、数年前からスタートアップとの協業を進めているパナソニックらも出展していたが、どこもあまりビジネス色は出しておらず、IVS独自のスタイルを作り出そうとしていることが伺えた。