医師は高尿酸血症を放置している患者の「痛風以外の合併症」を危惧
高尿酸血症が痛風のリスク因子であることは広く知られている。その反面、腎障害のリスクを高めること、虚血性心疾患(心筋梗塞や狭心症)のリスクとも関連があることはあまり一般には知られていないようで、「痛風発作の痛みがなくなればそれでよい」、「尿酸値が高くても痛風さえ起きなければよい」との理解でとどまっている人が多く、結果として高尿酸血症を放置している患者が少なくないと言われている(※1)。
そこで、高尿酸血症を放置している患者には、どのような合併症が多いと感じるかを医師に質問してみた。その結果、腎障害、高血圧症、糖尿病、尿路結石、脂質異常症、虚血性心疾患は、いずれも半数以上の医師によって選択された(図8)。
患者にとっては痛風との関連で理解されている高尿酸血症ですが、医師の側から見れば、痛風予防は高尿酸血症を治療する目的の一つに過ぎないと言えそうだ。
それらの合併症の中で、生命予後に直結することのある心血管疾患に焦点を当て、「臨床現場での実感として、高尿酸血症と心血管死亡リスクの関連性は高いと思うか」と質問してみました。その結果、「高くない」との回答は6人に1人(17.2%)にとどまり、大半の医師(82.8%)は両者の関連性を高いと感じていることがわかりました(図9)。
※1:Dr.ヒサトメの かかりつけ医のための高尿酸血症・痛風診療Q&A, 久留 一郎著, 診断と治療社, 2021
高尿酸血症だが薬を処方しない場合の治療は、食事指導と飲酒制限が中心
高尿酸血症は、尿酸値(血清尿酸値)が7mg/dLを上回っている場合に診断される。
ただし、医師向けのガイドラインでは、痛風や合併症(上の項目で取り上げた、腎障害、高血圧症、糖尿病、尿路結石、虚血性心疾患やメタボリックシンドロームなど)がなければ、尿酸値が9mg/dL以上の場合に、尿酸値を下げる薬を処方することが推奨されている(合併症がある場合は8mg/dL以上)。
すなわち、高尿酸血症と診断されても薬物治療の対象にはならない患者さんも少なくないということだ。
このような患者に対して医師がどのような治療あるいは指導を行っているかを質問してみた。
結果は、「食事指導・飲酒制限」や「運動指導」が多数(73.0%、32.4%)を占め、生活習慣の改善の指導が中心であることがわかった(図10)。なかでも、食生活の重要性について、96.6%もの医師が重要だと考えていることも今回の調査で再確認された(図11)。
手軽な尿酸値対策として乳製品を推奨する医師が7割以上、薦めるのはヨーグルト、牛乳
高尿酸血症の患者さんに対する食事指導の内容としては、過食しないこと、プリン体の多い食品を控えること、野菜を多く摂ることなどバランスの良い食事が勧められる。
また近年、乳製品の摂取が痛風リスク抑制につながることが知られるようになってきた。
今回の調査では、「手軽にできる尿酸値対策として、患者さんに乳製品を勧めるか?」との質問をしたところ、7割以上の医師から支持する回答が得られた(図12)。乳製品の種類としては、ヨーグルトや牛乳などが、とくに推奨したい食品として挙げられていた(図13)。
調査概要
調査対象者/全国の医師355名
回収サンプル数/355名(開業医 40名、勤務医 315名) ※勤務地分布45都道府県
年齢/20代(12名)、30代(54名)、40代(73名)、50代(114名)、 60代(91名)、70代(9名)、80代(2名)
所属/一般内科、循環器内科、整形外科・スポーツ医学、腎臓内科・透析、泌尿器科、消化器内科、代謝・内分泌科、他)
調査方法/医師専用コミュニティサイト「MedPeer」 調べ
調査時期/2023年5月24日~5月30日
関連情報
https://seikatsusyukanbyo.com/
構成/清水眞希