歯周病治療
歯を失う一番の原因で、成人の約7割が罹患しているともいわれる歯周病。自覚症状がないため、気づいた時には重症化していることも。進化した治療も登場しているが、重要なのは日々のケア意識の向上だ。
日々のセルフケアと健診が歯周病対策の要
プラークや、唾液内のカルシウムでプラークが固められた歯石により、歯の周りで炎症を起こす「歯周病」。進行すると歯を支えている歯槽骨などが溶けて、歯がぐらつき、抜けてしまうことも。
「歯周病が厄介なのは、毎日の歯磨きというセルフケアが最重要にもかかわらず、歯並びや利き手などの影響で、指導を受けてもそれが完璧にできないから。私もできません」(前出・秋元さん)
歯周病では、プラークや歯石の除去などを含むプロによる歯の機械的清掃「PMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)」後、個人に合わせたセルフケア指導を実施。その後は定期受診で指導が実行できているかの確認が改善のカギとなる。それでも改善しない場合は、歯周ポケット部分の歯ぐきを切開し、プラークや歯石を除去後に縫合する「フラップ手術」の選択肢も。ただ、すでに溶けた歯槽骨などは元に戻らないため、表のような再生治療も行なわれている。
このうちのGTR法について秋元さんは「人工膜を入れて歯肉を縫合する難処置で歯科医師の技術格差が大きい」と指摘する。
一方、薬剤を使って再生を促す比較的新しい治療法のリグロスとエムドゲインは、GTR法に比べれば歯科医の技術格差は少ない。ただ、「保険適用のリグロスでも治療費は決して安いと言えず、両者とも経過観察などの通院回数の多さは念頭に置く必要があります」と秋元さん。さらに、その後のセルフケアや定期チェックを怠れば、再発の可能性も高い。
「歯周病ではセルフケアはもちろん、理髪店のような感覚で定期チェックに行ける歯科医院を見つけるのが大切です」
◆歯周病の基本治療
◆歯周病の外科手術も進行中
歯周病の治療は、基本治療と外科手術の2つに大別される。ただし、歯ぐきを切って剥がす外科手術(フラップ手術)も、歯の根の表面をきれいにするという点は基本治療と同じ。フラップ手術では手術部位を直視できるというメリットがある。下の表の再生治療でも、フラップ手術が用いられる。
◆歯周病治療
※いずれも基本治療で十分に治療効果が得られない場合の外科処置を伴う治療。全身の健康状態などにより適用できないこともあります。保険料金は3割負担で算出。初・再診料などは別途必要です。各評価は一般的な目安。料金や治療判断・内容は歯科医院により異なるので、かかりつけ医師に相談を。
取材・文/村上和巳、秋元麦踏 図版/山本さわ