義歯治療
どんなに歯を大切にしていても、やむなく失う場合もある。なくした歯の代わりとなる義歯の選択肢は「入れ歯」「ブリッジ」「インプラント」の3つ。まずはそれぞれの特徴を知り、医師と相談する際の参考にしてほしい。
抜歯後の義歯は必須。さらに重要なのがその後のケア
むし歯や歯周病の進行がひどい場合には歯を抜く(抜歯)という最終手段が取られることがある。通称・親知らずと呼ばれる第3大臼歯の場合を除くと、抜歯後は義歯(入れ歯など)を入れる治療となる。
「1本くらいなら、そのままでいいのでは?」と思う人もいるだろう。しかし、人間の歯は噛み合わせの歯や左右の歯が互いにバランスを取っているため、抜歯部分を放置すると、歯の位置がずれて噛みづらさなどに発展することも。
義歯の選択肢は主に3種類。前出の秋元さんは次のように語る。
「失った歯を補完する目的は3種類とも同じですが、治療による身体や周りの歯への負担は大きく異なります。また、抜歯の原因や隣接する歯の状態は人それぞれのため、各義歯の一般論としての利点・欠点も患者ごとに重みが変わります。保険適用の有無による経済的負担を棚上げしても、医学的理由から3種類の選択肢のすべてから自由に選べる人は多くありません」
中でも全身の健康状態で制限を受けるのが、チタン合金製スクリューを顎の骨に埋め込むという大掛かりな手術後に義歯を装着するインプラント治療。
「高血圧、糖尿病などの全身性疾患がある人、喫煙者、体力が低下している高齢者などは適応にならないと考えるのが一般的です」
インプラント治療のメリットは何よりも強い力で噛むことができる点と、見た目で義歯とわかりにくいこと。厚生労働省委託事業による調査では、手術に成功した事例でのインプラントの歯の10年生存率は90%超と報告されている。
ただ、治療後もセルフケアの徹底や定期受診によるチェックなどが必要で、これを怠るとインプラントと歯ぐきの間にたまったプラークなどが原因の「インプラント周囲炎」を発症することもある。日本歯周病学会の調査ではインプラント治療から3年以上経過した事例での発症率は9.7%。インプラント周囲炎は初期症状に気づきにくく、歯周病などよりも進行が速いため、「かかるとかなり厄介なので、日頃のケアを徹底してほしいですね」
◆義歯治療の例
※保険料金は3割負担で算出。初・再診料などは別途必要です。各評価は一般的な目安。料金や治療判断・内容は歯科医院により異なるので、かかりつけ医師に相談を。
◆一人あたりの歯の数の平均値
(年齢階級にみた一人平均現在歯数)
昔に比べると歯の喪失状況は改善方向だが、後期高齢者での平均値は約16本、約3割が総入れ歯。そうならないために早めの対策が急務だ。