アベックという言葉を初めて聞いた人の中には、意味がよく分からない人もいるのではないでしょうか。アベックの意味や語源、カップルとの違いを解説します。言い換え表現も紹介するので、この機会にアベックの使い方をマスターしましょう。
「アベック」の意味と語源
今やアベックは死語といえるので、意味が分からなくても無理はないでしょう。まずはアベックの意味と語源を解説します。
「恋人同士の二人連れ」
日本で『アベック』というとき、基本的には恋人同士を指します。ただし単に恋人同士を指すというよりは、どこか冷笑的な意味合いが込められています。
昔は今に比べ、恋人関係を人前でさらけ出すことは普通ではありませんでした。そのためアベックといっていた昔の若者は、その言葉にどこかからかいの意味を込めていたのです。
もしアベックを使うときには、ニュアンスに注意する必要があります。なおアベックが盛んに使われていたのは昭和時代で、現在はほとんど使われていません。今の若者同士では伝わらないことが多く、仮に伝わったとしても古臭い印象を与えてしまうでしょう。
「二人または二つのものが同じ行動をする」
アベックには恋人同士という意味だけでなく、二人で何かをすることという意味もあります。たとえば野球で同じチームの二人の選手がホームランを打つことを、アベックホームランといいます。
またバスケットボールやバレーボールなどで、同じチームや国の男女が優勝することをアベック優勝といっていました。現在の似た言葉にカップルやペアがありますが『カップル優勝』や『ペア優勝』ということはありません。
このように、アベックは現在よく使われている言葉とは少し違ったニュアンスを持ちます。
語源はフランス語の「avec」
アベックの語源はフランス語の『avec』です。英語の『with』に相当する言葉で『~と一緒に、~を伴って』という意味があります。例文としては以下が挙げられます。
「J’ai voyagé avec ma famille.(家族と一緒に旅行した)」
英語のwithが必ずしも男女の関係を表すわけではないように、フランス語としてのavecには恋人という意味はありません。性別や恋人関係にかかわらず、誰かと『一緒に』を表します。
日本で使われる『アベック』はいわゆる和製フランス語といえるでしょう。
英語の「カップル」との違い
恋人を表す言葉として、現在は『カップル』が多く使われています。しかしカップルとアベックは、意味や用法が異なります。両者の違いを見ていきましょう。
「カップル」との違い
恋人同士を指す文脈においては、アベックとカップルはほとんど同じ意味です。両者の違いとしては、語源や死語であるかどうかが挙げられます。
カップルは英語に由来し、本来の英語にも『恋人・夫婦』という意味が含まれます。つまり日本で使われているカップルも、本来の英語の意味に即しているといえるでしょう。
一方、アベックの語源はフランス語です。またアベックは高度経済成長期からバブル経済の崩壊あたりにかけて使われていた言葉で、現在は死語とされています。昭和時代に使われていたのがアベック、平成や令和で使われている言葉がカップルという違いがあるともいえます。
使い方にも違いがある
カップルとアベックは、使い方にも違いがあります。カップルは対象が目の前にいるかどうかにかかわらず使うことができます。
一方でアベックが使われるのは、目の前にその男女がいるときです。当事者がいない場面で「あのアベックは~」という使い方はしません。
また多様性が認められている現代では、カップルは同性の恋人を指す言葉としても使われます。しかし今よりは多様性への理解が及んでいなかった昭和時代では、アベックはもっぱら男女の恋人を指す意味で使われていました。
恋人同士を指す言葉としては、カップルの方が用途が広いといえるでしょう。
「アベック」の別の言い回し
アベックの意味を理解すると、日常生活で使いたくなるかもしれません。しかし特に若者には伝わらないことの方が多いでしょう。そのため別の言葉で言い換えた方が無難です。アベックの言い換え表現を紹介します。
「ペア」
『ペア』は『二人で何かをする』という意味としての『アベック』の言い換え表現として使えます。
『スポーツでペアを組む』『ペアルックをする』『ペアリングを買う』などは現在でも使われている表現であり、およそアベックの意味に合致するでしょう。
またペアは必ずしも恋人同士である必要はありません。この意味でもアベックの用法とマッチします。
「リア充」
『リア充』はいわゆるネットスラングの一つで『恋人同士』という意味での『アベック』の代用表現になりえます。
リア充とは『現実世界(リアル)の生活が充実している人』という意味です。本来は恋人の有無にかかわらず、生活が充実しているならリア充といえます。
しかし生活が充実しているのは、恋人がいたり結婚していたりするからだろうと推測されることから『恋人がいる人』『結婚している人』を指すのが一般的です。