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小説や雑誌などで見かける「似非」という言葉。使われている場面から大体の意味合いは理解できるものの、正しい読み方ができる人はあまり多くはないのではないだろうか。そこで本記事では、「似非」の正しい読み方や意味、使用シーンや類語を解説する。併せて紹介する「エセ」と「ニセ」の違いや英語表現もぜひこの機会にチェックしておこう。
似非とは
まずは、「似非」の読み方と意味を解説する。どのような場面で使える言葉なのかも併せてチェックしてほしい。
読み方は「えせ」
「似非」の正しい読み方は「えせ」で「似而非」とも表記される。漢字単体表記の「似」は音読みで「じ」「し」、訓読みでは「に(る)」 「ごと(し)」と読む。一方、「非」は音読みで「ひ」、訓読みだと「わる(い)」「 そし(る)」「 あら(ず)」だ。「似」が使われる熟語としては「似顔(にがお)」「相似(そうじ)」、「非」が使われる言葉は「非行(ひこう)」「非道(ひどう)」などが挙げられる。
意味
「似非」の意味は「似てはいるが本物ではないもの」「つまらないこと」「劣っていること」。用いられている漢字「似」は「似ていること」、「非」は「そうでないこと」「悪いこと」「間違っていること」を表す場合に使われる。
「エセ」と「ニセ」の違い
語感から「似非(えせ)」と混同されやすい「偽(にせ)」は本物ではないことを表す言葉。一方、「似非」は「偽」とは異なり悪意を持って偽物を本物であるかのように装うことを意味する。また、「似非(えせ)」は「偽(にせ)」や古語の「荒賊(えしもの)」が転じたことが語源だとされている。
使用シーンと例文
「似非」の使用シーンとしては、似ているが本物ではない事柄や人物、また質が悪いことを指す場面などが挙げられる。
【例文】
「今日、講演会で演説した彼は似非文化人と噂されている」
「あの先生は優秀だが、かつては似非学問を追及していると言われていた」
「似非学者と呼ばれていたことが悔しくてここまで頑張ることができた」
「物語の主人公は、登場初期は似非人であることが多い」
「似非」の類語
次に「似非」と同じような意味を持つ、言い換え表現を紹介する。言い回しの幅を広げるのに、ぜひ役立ててほしい。
偽物(にせもの)
本物と同じように似せて作ったものを表す言葉だ。
【例文】
「余市で偽物をつかまされた」
「このブランド品は偽物と判定された」
「偽物だと分かって安く購入している」
「あの絵画は本物のように見えるが実は偽物だ」
贋物(がんぶつ)
偽物と同じ意味を持ち、まやかしものやいんちき品を指す表現だ。
【例文】
「本物と区別がつかないが、これは贋物だ」
「本物に見せかけた贋物は販売できない」
「この壺の贋物を彼が作ったらしい」
「贋物ではなく本物のメダルが欲しい」
紛い物(まがいもの)
本物と見分けがつかないくらいとても似ている物、または模造品やイミテーションを意味する言葉。擬い物とも表記する。
【例文】
「紛い物のダイヤでも十分だ」
「あの商人から紛い物をつかまされた」
「彼から紛い物の高級時計をもらった」
「恥ずかしくて紛い物は身に付けられない」
擬き(もどき)
名詞の下に付いて用いられる表現。その名詞に匹敵するほどのもの、またはそれに似せて作ったもののことを指す。抵牾や牴牾とも表記される。
【例文】
「梅擬きをおかずに白米を食べる」
「小学生の演じる姿を見たが芝居擬きとはとうてい思えなかった」
「材料が足りずにアップルパイ擬きを作った」
「小さい頃作ったティラミス擬きの味が忘れられない」
「似非」の英語表現
最後に、「似非」と似た意味を英語で言い換えた言葉と例文を確認していこう。
false
間違ったものや模造したもの、偽りのものを指す形容詞だ。
【例文】
“The tears she shed were false tears.”
(彼女が流した涙はそら涙だった)
“He got a false impression of her.”
(彼は彼女に間違った印象を抱いた)
“The previous warning was false.”
(先ほどの警報は誤りだった)
”I was false to my word yesterday. ”
(私は昨日約束を守らなかった)
phony
偽りや嘘の物事であることを意味する形容詞。
【例文】
“his name is a phony name.”
(彼の名前は偽名だ)
“I was made to buy a phony cheque.”
(私は偽の小切手を購入させられた)
“She is good at making a phony excuse for lying.”
(彼女は嘘の口実を作るのが上手だ)
“He got sucked in on a lot of phony deals.”
(彼は何度もいかさまに騙された経験がある)
sham
見せかけやごまかし、偽物や詐欺師を表現する名詞だ。
【例文】
“What they said was all sham.”
(彼らの発言は全て嘘だった)
“Her anger was a mere sham.”
(彼女の怒りはただの見せかけだった)
“He is a sham diligence.”
(彼は勤勉を偽っている)
“Physical strength is gained through sham battles.”
(模擬戦によって体力がつく)
fake
相手を騙すために偽造や何かのふりをすることを意味する動詞。
【例文】
“She was on a fake business trip.”
(彼女の出張は嘘だった)
“He faked sad emotions.”
(彼は悲しい気持ちを装った)
“I made a fake smile so as not to worry everyone.”
(皆に心配をかけないために私は作り笑いをした)
“I have a sharp eye for a fake.”
(私は偽物を見破るのが得意だ)
文/編集部