エンジンの駆動方式の一つであるRR方式を採用した「RR車」。自動車を所有している人や購入を検討している人なら、一度は見聞きしたことがあるのではないだろうか。RR車が用いられている場面からどういった車両なのかは、なんとなく想像できるものの、「RR車」の正しい意味やその他の駆動方式との違いを説明できない人も少なくないはず。
そこで本記事では、「RR車」とは何か、「FF車」「MR車」との違い、メリットやデメリットまで詳しく解説する。最後に紹介する有名なRR車もぜひこの機会にチェックしておこう。
RR車とは
まず、「RR車」とは何のことを指すのか見ていこう。併せて紹介する「FF車」「MR車」との違いについてもぜひチェックしてほしい。
後部にエンジンが搭載され後輪を駆動する車両のこと
RR車とは、車両の後部にエンジンが搭載された後輪駆動車のこと。「RR車」は「リアエンジン・リアドライブ車」を省略した呼び名。1960~1970年代に人気が高かったが、時代や車両機能のニーズの変化により、現代では珍しくなっている。
RR車の特徴
RR車の最大の特徴は、エンジンが後ろに搭載されていることだ。車両の最後方に重量が大きいエンジンがあるため、後ろのタイヤ「リアタイヤ」にかかる負担も大きくなる。また、エンジンで発生した駆動力を別のギアに伝える働きをする「プロペラシャフト」が不要なため、車両に必要なパーツ数が少なくて済むのも特長だ。
「FF車」「MR車」との違い
「FF車(フロントエンジン・フロントドライブ車)」は、「RR車」とは異なり、エンジンと駆動輪どちらとも前方にある車両のこと。一方、「MR車(ミッドシップ・リアドライブ車)」はリアタイヤ軸よりも前にエンジンの搭載位置がある車両のことだ。「RR車」はリアタイヤ軸よりもエンジンが後ろに位置しているため、エンジンの位置で車両の種類を区別できる。
RR車のメリット
次に、RR車のメリット4点を紹介する。車を購入する際の基礎知識として覚えておこう。
1. 加速性能が高い
車の加速時に慣性の法則が作用すると、後輪に大きな重量がかかることで動力伝達の無駄を省ける。RR車は、重たいエンジンが車体の後ろにある設計により高い加速性を実現している。
2. ハンドル操作がしやすい
FF車の場合は車体前方にエンジンと駆動輪があるため、ハンドル操作が重くなりやすい傾向にある。 しかし、エンジンと駆動輪が車体後方に位置するRR車の場合、必然的にハンドルの操作がしやすい傾向にある。
3. ブレーキ性能が高い
RR車はエンジン、駆動輪ともに車体後方に位置し、車体後部が重い造りであるため、車を止めても後ろが浮き上がりにくい仕様になっている。そのため、地面に張り付くようにブレーキすることが可能だ。
4. 室内空間を広く確保できる
乗用車やコンパクトカーなどのRR車の場合、エンジン、駆動輪ともに車体後部に位置し必要な設備が端に寄せられているため、室内空間を広く確保できる。ちなみに、RR車として有名なポルシェの場合はこの特徴にはあてはまらない。
RR車のデメリット
次に、RR車のデメリット4つ見ていこう。
1. 加速時の安定性が低い
RR車は、車体後部に重心があるため、加速時の前輪が不安定な状態になる。最近では電子システムや安全装備機能の搭載によって、運転初心者でも比較的運転しやすい仕様にはなってきているものの、加速時の不安定さをカバーできるテクニックが必要になるケースが多い。
2. リアタイヤが減りやすい
RR車はエンジン、駆動輪ともに車体後部に位置するため、後部タイヤであるリアタイヤが減りやすいことがデメリットだ。特にスピードを出しすぎて急ブレーキを起こした場合や事故が起こった場合、車体前方にエンジンなどの設備がないため、受けたショックをリアタイヤで受け止めやすやすい。しかし、近年のRR車は、事故のショックを緩和してくれるエアバッグなどの機能が備え付けられていることがほとんどだ。
3. コーナリング時のコントロールが難しい
自動車が道の角を曲がる「コーナリング」の動作が難しいのもRR車の特徴。操舵装置全体であるステアリングホイールを少し操作しただけで車体全体が動くため、加速して走行する際はFR車やFF車より細かいコントロールが必要になる。
4. スポーツ走行での操作が難しい
RR車の機能としては高性能車なためスポーツ走行向きだが、安定のある走りや適切なコーナリングをするためには高度な運転技術が求められる。RR車の特徴である後部車体が重いことを念頭に置いて、操作を練習してから乗るのがおすすめだ。
有名なRR車
最後に、RR車の中でも有名な車両を3種類を確認していこう。
ポルシェ「911シリーズ」
最も代表的といえるRR車は、モータースポーツ界では最高峰のポルシェ「911シリーズ」。初代901型から現在の市販車992型まで継続的にRR車として製造され続けており、耐久性と速さに優れた性能が特徴だ。しかし、空気力学やタイヤの摩耗、RR車のデメリットを考慮し、2016年の世界耐久選手権ではMR車が採用された。
フォルクスワーゲン「ビートル」(初代)
愛称「走るカブトムシ」で親しまれているフォルクスワーゲン「ビートル」は、初代「タイプ1」でRR車が採用された。今では空冷エンジンとRR車仕様の珍しいクラシックカーとして、ファンから絶大な好評を博している。
ルノー「トゥインゴ」
RR車のコンパクトカーとしてはルノー「トゥインゴ」が有名だ。エンジンやタイヤに力を伝える部品を車体後方に寄せることで、小さい車体の中でもしっかりと室内空間を確保できる仕様になっている。また、動きにくいスペースでも素早く回れるため、狭い路面でも走行しやすいのが特徴だ。
※データは2023年7月上旬時点のもの。
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文/編集部