国道なのに素掘りトンネル!
309号線の酷道区間は約25km。その短い区間の中で特に楽しみにしていたのが、白倉トンネルです。なんとこのトンネル、国道上にあるにもかかわらず素掘りにコンクリートを吹き付けた構造なのです!
素掘りとは、周囲の崩落を防ぐ山留め・土留めといった作業をおこなわずに掘り進めること。
苔生した入り口からして古びた雰囲気なのですが…
中に入ればこの通り!
ゴツゴツとした岩肌の質感がそのまま残り、まるで洞窟のような見た目です。
トンネル内を走っている間は、愛車クロスカブのトコトコという排気音が幾重にもこだましました。ちょっとした音がすべて反響するので、まるで誰か他の人…あるいは幽霊から話しかけられているみたい。
道幅は車1.5台分ほどと狭く、車同士の対向はできません。バイクであっても対向車があれば事故の危険があるため、特に進入前はミラーを確認しながら注意深く走る必要があったのでした。
みたらい渓谷周辺は山も川も澄んで美しく、軽く流しているだけでも幸せな気持ちでいっぱいになります。夏の関西の定番お出かけスポットとして、人気を集める理由がわかったような気がしました。
いざ、行者還トンネルへ!
天ノ川沿いを離れると上り坂に入り、309号線は一気に標高を上げます。先ほどまでの川沿いの風景からガラッと変わって、目の前に広がるのは広い空と、見上げても頂上が見えないほどに大きく切り立った崖壁です。
この山の名前は行者還岳(ぎょうじゃがえりたけ)。7~8世紀に活動していたと考えられている山岳信仰の修行道の開祖、役行者(えんのぎょうじゃ)すらも引き返したという伝承から名付けられ、険しく切り立った地形で知られています。
道路を走っている限りはそれほど急なワインディングではないのですが、崖のあまりの大きさに圧倒されっぱなし。名前と由来の影響を受けたのか、走っているうちにだんだん景色が神秘的に見えてきたような気がします。
やがてたどり着いた行者還トンネルは、天川村と上北山村の境にありました。
先ほど通った白倉トンネルとは違い、2車線分たっぷりと道幅のある大きなトンネル。しかし全長約1100mの内部には一切の照明がないため、異世界へとつながっているような不思議な空気が漂っています。
実際に行者還トンネルを心霊スポットととらえている人もいるようですが、私としては、幽霊よりも事故の方が怖いというのが本音です。ここまで通ってきたのは崖っぷち、小石が転がる路面、狭い上り坂など一般的に危険と考えられる状況ばかり。現実的に考えると、トンネルよりも309号線そのものの方がずっと恐ろしいと言えるのかもしれませんね。
さて、行者還トンネルを抜ければ道は一気に下り坂に入ります。
行者還トンネルの西側と比較すると、東側は道が険しく、カーブも急な傾向にあります。細かなワインディングはクロスカブの得意分野です。酷道らしさを味わいつつも、楽しく下っていきました。
最後は再び川沿いの道となり、国道169号線と合流したところで酷道の旅は終了です!
国道306号線 行者還トンネル付近は、夏になると川遊びや山登りなどといったアクティビティが楽しめる、自然好きな方には是非おすすめしたい観光スポットです。大阪市内からのアクセスも良いため、運転に十分ご注意の上遊びに行ってみてくださいね。
文/高木はるか
アウトドア系ライター。つよく、しぶとく、たくましくをモットーにバイクとキャンプしてます。 愛車はversys650、クロスカブ110、スーパーカブ90。
高木はるかの記事は下記のサイトから
https://riding-camping-haruka.com
編集/inox.