アパレル・ファッション業界専門の転職支援サービス「クリーデンス」を運営しているパーソルキャリアは、先日同サイト登録者を対象とした2022年のアパレル・ファッション業界の「平均年収」を発表した。
以下、クリーデンス事業責任者・荒木 学氏の解説で概要を紹介していく。
なおこの調査は、2022年の1年間に「クリーデンス」の転職支援サービスに登録した人のデータを元に算出されたものだ。
平均年収の上り幅が大きかった職種
店長/平均年収394万円・前年比+14万円
2022年は大幅な行動制限の緩和により、店頭への客足が回復傾向にあった。しかし、コロナ禍での休業に伴う人材流出や採用活動の停止などから、「店長」をはじめとした店舗運営に関わる人材不足が深刻な状況に陥った。そのため人材確保が急務となり、「店長」の年収が引き上がったと考えられる。
MD、バイヤー/平均年収436万円・前年比+6万円
「MD」は、商品の企画から生産・販売まで、一連の流れを取り仕切る、いわばブランドの要であるため、ブランドの売上が年収や賞与に反映されやすいのが特徴だ。
また、コロナ禍でスポーツやアウトドアが流行したことから、スポーツアパレルの市場は飽和状態となり、そこから抜きんでるために、デザイン・機能の両面で知見がある「MD」などの評価が上昇している。これら要因が、「MD」の年収アップに寄与したと想定される。
販売/平均年収321円・前年比+5万円
2022年は各社、業績回復に伴い人材採用に投資ができるようになってきたことから、ホスピタリティの高い接客ができる、語学力がある、SNS活用に長けているなど、特定のスキルに秀でた「販売」人材の評価を見直す動きがあった。
また、「販売」も「店長」と同様に、客足回復に伴い人材獲得が急務となり、年収が増加したと考えられる。
平均年収の下がり幅が大きかった職種
パタンナー/平均年収307万円・前年比-27万円
デザイナーが描いたデザイン画をもとに型紙(パターン)の作製を行う「パタンナー」は、売上が評価に結び付きにくく、他の職種と比較して、新型コロナによる減給や賞与カットから回復が遅れている傾向にある。
また、「パタンナー」は仕事柄、業務スケジュールを自らのライフスタイルに合わせて組みやすく、加えて技術職であるため、他の職種の人たちが兼務しづらい職種。
そのため働く環境の整備が比較的進んでおり、ライフイベントにあわせて時短勤務を選択する人も増え、平均年収の減少に影響したと考えられる。
生産管理、物流、貿易/平均年収401万円・前年比-15万円
昨今、コストダウンを目的とし、海外工場と直接やり取りする直貿での生産に切り替える企業が増えている。
そのため、外国語が堪能であれば未経験でも「生産管理」として、さらには貿易事務として採用するケースが増加した。こうした変化が、平均年収を引き下げたと想定される。
プレス、販促、VMD/平均年収409万円・前年比-12万円
コロナ禍以降のEC化率の上昇に伴い本職種は、旧来の「プレス」に代わってSNS運用を兼務するケースが増えており、デジタルの知見を求められるケースが多くなっている。
そのため、プライベートでのSNS活用や動画配信などの経験があれば、仕事での実績を問わない企業も多く、未経験からでも挑戦・活躍しやすい職種であり、これが平均年収を下げた要因の1つと考えられる。
年代別に見た平均年収
年代別で平均年収を見ると、25~29歳と30~34歳では300~349万円がボリュームゾーンで、前年と大きな変化はない。
一方で、25~29歳では400万円以上、30~34歳では450万円以上の人が増加したため、これらの年齢層では、年収が底上げされた。
この背景には、コロナ禍からの業績回復とともに、企業の人材にかける投資額の増加があると考えられる。
35~39歳では、ボリュームゾーンは350~399万円で前年と変わらないものの、299万円以下の割合が増加し、550万円以上の割合が減少した。
この背景には、「デザイナー」や「パタンナー」といった、自らのライフスタイルに合わせて業務スケジュールを調整しやすい職種で、時短勤務といった働き方を選ぶ人が増えていることが1つの要因として考えられる。
言い換えると、企業側の制度整備が進み、働き方の選択肢が広がっている。
関連情報
https://www.crede.co.jp/contents/news/apparel-income_index.html
構成/清水眞希