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今、最も注目されているマーケティング手法「ABM」を実現するために必要な条件

2023.08.04

短期集中連載/シン・マーケティング論

第5回:注目のマーケティング手法、ABM(アカウントベースドマーケテイング)とは?

ABMとはAccount based marketingの略で、いま大企業をターゲットにしたエンタープライズB2Bマーケティングで主流になっている手法です。世界的に見ても2013年頃から注目されはじめた比較的新しい概念のため広く認められた定義はありませんが、当社では「全社の顧客情報を統合し、マーケティングと営業の連携によって、定義されたターゲットアカウントから売り上げ最大化を目指す戦略的マーケティング」と定義しています。

基本的には既存顧客の中の主要顧客をターゲットにして、その企業からの売上げを最大化するために、マーケティングと営業が協力して、あらゆる部門、事業所、関連会社などに対して展開するマーケティング戦略です。その基本的な構造が、1990年代にドン・ペパーズとマーサ・ロジャーズがその著書「1to1マーケティング」の中で提唱したLTV(ライフタイムバリュー)の法人版とも言われています。

ターゲット企業の売上げを最大化する過程で、競合を排除する力が強烈に働くため、大口顧客から競合を排除するか、排除されるかの戦いとなり、それ故に世界中のB2B企業がこの戦略に磨きを掛けています。

このABMこそが、今の日本企業にとって最も重要なマーケティング戦略であり、また日本の企業文化や営業スタイルにとても向いている戦略でもあります。日本の多くの企業は「強い商材」と「極めて優秀な営業チームや販売代理店網」を既に持っています。課題はそれらが縦の組織構造でしか機能しておらず、他部門との連携がまるで無いことです。

企業横断のマーケティング組織を構築し、全社のデータを統合管理できる体制を作れば、既存顧客に対して他事業部の製品やサービスを組み合わせて提案することが可能になり、強力なABMを展開出来るのです。

ABMはターゲットアカウント(企業)を定めることから始まります。そのために必要なプロセスを説明します。

世界のABMはターゲットの数でいくつかの流派に分かれつつあります。1社または3~4社のターゲットに絞って展開するやり方と、ABMといえども30~50社程度をターゲティングしないと成果は出せないという流派に分かれています。

これはもちろんその企業の環境などから判断することなので、当社の顧客でもその両方の戦略を実施しています。

ABMを説明する際によく出る質問に「デマンドジェネレーション」(案件創出)との違いはないですか?というものがあります。デマンドジェネレーションは社内データの統合し、全体に対してナーチャリング(見込み客の育成)を行い、スコアリングによって有望顧客を見つけ出し営業に繋ぎます。例えて言えば定置網のようにとても効率の良い手法ですが、その欠点は、網を上げるまでどんな種類のどんなサイズの魚が何匹入っているのか判らないところです。欧米ではデマンドジェネレーションは網(ネット)と例えられます。一方でABMは、あらかじめ定めたターゲットアカウントに対して鋭いコンテンツを当てることでピンポイントで案件を創出し営業と連携します。このため、ABMは銛(スピア)と例えられます。

どちらもデマンドセンターが機能していて初めて実現できますが、ABMを実施する場合には通常のデマンドジェネレーションよりさらに高度なデータマネジメントとコンテンツマネジメントが必要となり、さらにはマーケティング、インサイドセールス、セールスの高度な連携を要求されます。それはターゲットとする企業が既存の大口顧客、つまり企業にとって最も重要な顧客だからです。

データマネジメントで言えばカバレッジ分析と呼ばれる、データの偏在を観る分析手法が重要になります。例えばターゲット企業に所属する個人情報が400人いたとして、その所属事業所、部門、役職などの分布を分析することで、誰に情報を渡すことが最適かを知ることができ、また強化すべきデータも可視化出来ますからリードジェネレーションプランの構築にも活用することが出来ます。

この個人情報の偏在にWeb上のコンテンツを重ねることで、どの分野のコンテンツが足りないのか、その制作の優先順位を決めることも出来ます。

よく混同されるのはアカウントセールスとABMの違いです。セールスがアカウントプランを立案することがありますが、基本的にセールスはその役割からどうしても販売したい自社に立脚したプランを作ることが多く、それに対してマーケティングは顧客の解決すべき課題に立脚したコンテンツを作ります。これはどちらが正しいとかではなく、売上げ予算を背負うセールスと、案件を創るマーケティングの立ち位置の違いなのです。

そういう意味で、このABMは、営業とマーケティングの連携を必要としますので、全社戦略として取り組むべきものだと表現されます。

ABMは日本のあらゆる産業の法人営業企業にとって極めて重要な戦略となります。今からしっかり研究し、準備を整えるべきでしょう。

文/庭山一郎
https://www.symphony-marketing.co.jp/
シンフォニーマーケティング株式会社 代表取締役。1962年生まれ、中央大学卒業。1990年9月にシンフォニーマーケティングを設立。データベースマーケティングのコンサルティング、インターネット事業など数多くのマーケティングプロジェクトを手がける。30年以上に渡り、大手B2B企業をメインに国内・海外向けのマーケティングサービスを延べ500社以上に提供している。
ライフワークとして、ブナの植林活動など「森の再生」に取り組む。
中央大学大学院ビジネススクール客員教授、IDN(InterDirect Network:インターダイレクトネットワーク)理事。
「BtoBマーケティング偏差値up」、「究極のBtoBマーケティング ABM(アカウントベースドマーケティング)」など著書多数。

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