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社内全体のマーケティング力向上が売上アップのカギを握る

2023.07.28

短期集中連載/シン・マーケティング論

第4回:社内のマーケティング知識UPが売上UPの鍵

マーケティングは横文字が多く、どんどん新しい表現、ツール、技術が登場してとてもついていけない、とこぼす人を見かけます。これは半分正しくて半分間違っています。

私はマーケティングを学び始めて40年になりますが、基本的な部分はこの40年何も変わっていません。テクノロジーが進化しても人間の本質はそう変化しません。急速に進化し、変化を続けているのはその周辺の技術やツールなのです。だから私の大学院での講義もレビット、アンゾフ、ロジャーズ、コトラー、と言った古典とそれを現代マーケティングでどう活用しているかを解説しています。

また、日本の多くの企業で誤解されている事は、「マーケティングはマーケティング部門だけが判っていれば良い」という点でしょう。海外を見てみるとマーケティングは会社の中心であり、経営層はもちろんのこと、営業マネージャーも広報も法務も、特にマネジメントに携わる人はマーケティングの基礎知識は持っています。平均的な偏差値が高いのです。

せっかくマーケティング部門を設置しても、他部門の理解が得られなければ必然的に部分最適となり、成果には繋がりません。全体最適のマーケティングを実施するためには、他部門や関連会社と連携しなくてはなりませんが、相手に基礎知識が無い場合、マーケティング活動を理解してもらうのは至難の業となります。営業、ものづくり、広報、法務などすべての人を巻き込み、全社を挙げてマーケティングを強化しなければ、世界とは戦うことができません。

以下に最低限知っておきたい、基本的なマーケティング用語を解説します。

1.「3つのR」

【Right Person(最適な相手に)】
【Right Information(最適な情報を)】
【Right Timing(最適なタイミングで)】

これは私がマーケティングを学び始めた40年前からまったく変って無い普遍的なマーケティングの要諦です。変化の大きなマーケティングの技術やツールは「この誰が最適な人か?」「その人が欲しい情報は何か?」「その人が情報を受け取ってくれるタイミングはいつか?」を知るためのものが無数に増えていると言って良いでしょう。

2.「STP」

フィリップ・コトラー博士が提唱したマーケティングの1丁目1番地とも言えるフレームワークです。

セグメンテーション(Segmentation):市場の細分化。属性や状態などで市場を細かく分類するプロセス。
・ターゲティング(Targeting):細分化した市場の中で勝てる市場を探すプロセス。
・ポジショニング(Positioning):選択した市場の中でどういったポジションを取るかを説明し、宣言するプロセス。

マーケティングを学んだ人なら誰でも必ず学ぶフレームワークですが、これ程広く知られていて、活用が難しいフレームワークも無いと私は考えています。多くの企業がこれを使えないがために、せっかく開発した製品やサービスを勝ち目の無い市場で戦わせ、撤退しているのです。

その理由は、STPする価値を定義できないのです。多くの企業は数多くの商材を持っていますし、それを単品で販売する場合もあれば、組み合わせて売る場合もあり、その組み合わせの中に他社製品を組み入れることもあります。そうなると何をSTPすべきなのかが判らなくなって、知っているけど使えないという現象に陥るのです。

私は、こうした場合、製品のスペックやサービスの特徴ではなく、それで解決する課題、つまり顧客にとっての価値をもう一度定義し直す事をお勧めしています。これによってSTPすべき提供価値を見つけることが出来るからです。

マーケターの仕事は「STPに始まってSTPに終わる」と言っても過言ではありません。勝てる市場を探し、そこに保有するリソースを充分に割くことが、企業が生き残るためには絶対に必要な事なのです。

3.「イノベータ理論」

社会学の研究者であったエベレット・ロジャーズ博士が提唱した理論で、革新的な製品や技術が市場に浸透していく過程を、5つの集団に分類するものです。自社の製品・サービスのターゲット市場が5つの分類のうち、どこに位置するかによって取るべきマーケティング戦略が異なるため、このモデルを理解することはマーケターにとって非常に重要です。また横軸に時間・縦軸に普及度を示したグラフを、その釣り鐘型の形状から「イノベーションのベルカーブ」と呼びます。

・イノベータ:とにかく新しいものが好きな人で「テクノロジーマニア」などともいわれている。
・アーリー・アドプター:常に時代の最先端を走りたいと考えている人たち。
・アーリー・マジョリティ:新サービスが安心・安全ができることが確認できなければ、購入しない人たち。主要市場の初期を構成する。
・レイト・マジョリティ:少しでもリスクがあれば導入しない保守的な人たち。
・ラガード:とにかく頑固でイノベーションを受け入れない人。ラガードに対するマーケティングは放棄するのがよいと言われるくらい、頑なにやり方を変えない人たち。

文/庭山一郎
https://www.symphony-marketing.co.jp/
シンフォニーマーケティング株式会社 代表取締役。1962年生まれ、中央大学卒業。1990年9月にシンフォニーマーケティングを設立。データベースマーケティングのコンサルティング、インターネット事業など数多くのマーケティングプロジェクトを手がける。30年以上に渡り、大手B2B企業をメインに国内・海外向けのマーケティングサービスを延べ500社以上に提供している。
ライフワークとして、ブナの植林活動など「森の再生」に取り組む。
中央大学大学院ビジネススクール客員教授、IDN(InterDirect Network:インターダイレクトネットワーク)理事。
「BtoBマーケティング偏差値up」、「究極のBtoBマーケティング ABM(アカウントベースドマーケティング)」など著書多数。

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