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日本のマーケティングに今、一番足りないもの

2023.07.21

短期集中連載/シン・マーケティング論

第3回:日本のマーケティングに足りないもの

第1回で日本のB2Bマーケティングは世界から周回遅れである事と、その理由として「引き合い依存」で成長出来る環境が戦後約50年も続いた事を説明しました。では、日本が引き合い依存でマーケティングを必要としなかった間に、世界はなぜ大きく進化したのかを説明しましょう。

米国では1980年代にレスター・ワンダーマンらの功績によってダイレクトマーケティングという分野が確立し、ダイレクトメールやカタログ、電話を使った顧客とのワントーワンのマーケティングが盛んになりました。これを受けて法人営業の分野でも、顧客データを活用しようとする動きが出てきました。1990年代に入るとそれがデマンドジェネレーションという活動に進化し、営業の前工程として案件を創出するという販売工程の分割で大いに成果を上げる企業が出てきました。こうした活動を支援するプラットホームとして世界最初のMA(マーケティングオートメーション)であるEloquaがカナダで誕生したのが1999年の事です。2000年代に入ると、こうしたデマンドジェネレーションのグローバルスタンダードになったフレームワークである、デマンドウォーターフォールがシリウスディシジョンズ社によって発表され、このフレームワークに基づいて多くのB2Bマーケティングツールやサービスが開発・リリースされました。

日本はこのムーブメントに乗り遅れたのです。

米国では2000年から普及が始まったMAが日本で販売されるようになるのは15年後の2014年でした。

B2B企業が取り組むマーケティング活動は「リサーチ」「ブランディング」「デマンドジェネレーション」の3つに大きく分けられます。日本企業は「リサーチ」と「ブランディング」にはしっかり取り組み、成果を上げてきましたが、売上げに関しては、既存顧客からの引き合い案件をベテランの営業がハイタッチでハンドリングすることで成長できていたので、第3のマーケティングと呼ばれる「デマンドジェネレーション」(案件創出)にはまったくと言って良いほど取り組まなかったのです。

欧米の企業ではこの「デマンドジェネレーション」にエース人材を配置し、潤沢な予算を持たせています。もちろんリサーチもブランディングも重要なのですが、売上げとの相関はデマンドジェネレーションが最も高いので、ここに力を入れているのです。そこが日本企業にはすっかり抜けてしまっています。

このデマンドジェネレーションを担当する組織を「デマンドセンター」と呼びます。その役割は「リードジェネレーション」(見込み客のデータ収集)、「データマネジメント」(データの整理・統合管理)、「リードナーチャリング」(見込み客の育成)、「リードクオリフィケーション」(絞り込み)です。

具体的に説明しましょう。

◇リードジェネレーション(見込み客のデータ収集)

社内の名刺情報、過去の展示会で収集したアンケートや名刺情報、セミナーやウェビナーで収集した参加者リスト、CRMやSFA内の顧客、過去客情報、SEOなどWebで収集した情報を漏れなく収集する。

◇データマネジメント(データの整理・統合管理)

リードジェネレーションによって収集されたデータを統合し、企業と個人の名寄せ、紐付けや営業対象外排除を行う事で活用と分析に耐えるデータの状態を維持する。

◇リードナーチャリング(見込み客の育成)

メール、セミナー、ホワイトペーパーなどのチャネルを活用してリードデータとコミュニケーションし、啓蒙・育成を行うプロセス。

◇リードクオリフィケーション(絞り込み)

ナーチャリングへの反応などを「行動」、その個人の所属企業の情報を「属性」として分析し、営業が訪問するタイミングを測定してリストアップする。

デマンドセンターはこうした活動を高い専門性で実施しますが、欧米では売上との高い相関が証明されているにも関わらず、日本企業で充分なナレッジやリソースを持つデマンドセンターを保有する企業は未だ多くありません。

実は日本企業もすでにマーケティング重要性には気付いています。日本の企業経営者が書く多くの中期経営計画には「マーケティングの強化」という言葉が盛り込まれています。

しかし、長く続きすぎた引き合い依存時代のせいで社内にはマーケティングを体系的に学んだ人材がほとんどいません。経営幹部も自社が取り組むべきマーケティングを具体的に定義できずにいます。やっとマーケティングの重要性に気づき、社内マーケティング部門を作っても、そこを担うスキルを持った人材がおらず、外部から調達するにも、その人材の要件を定義出来ないため、スカウトした人材が早期に退職して定着せず頭を抱えている企業も少なくないのです。

社歴の長い日本企業は未だ未だ新卒で入社したプロパーが多数派です。外資系企業など外部からスカウトした人材はそのプロパーと馬が合わない事が多いのです。

私は、少し遠回りですが、外部のマーケティング会社の伴走サービスを受けることで2~3カ年計画でマーケティングを内製化することを推奨しています。

文/庭山一郎
https://www.symphony-marketing.co.jp/
シンフォニーマーケティング株式会社 代表取締役。1962年生まれ、中央大学卒業。1990年9月にシンフォニーマーケティングを設立。データベースマーケティングのコンサルティング、インターネット事業など数多くのマーケティングプロジェクトを手がける。30年以上に渡り、大手B2B企業をメインに国内・海外向けのマーケティングサービスを延べ500社以上に提供している。
ライフワークとして、ブナの植林活動など「森の再生」に取り組む。
中央大学大学院ビジネススクール客員教授、IDN(InterDirect Network:インターダイレクトネットワーク)理事。
「BtoBマーケティング偏差値up」、「究極のBtoBマーケティング ABM(アカウントベースドマーケティング)」など著書多数。

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