企業のSNS担当者なら必ず憧れるインフルエンサーとしてのSNSを持つ企業たち。彼らは「運」だけでバズるアカウントを作ったわけではなかった!? Twitter、TikTok、Instagram。それぞれの〝バズ〟の先輩にバズる極意を訊いた。
タニタ
集中線のアイコンでおなじみの企業アカウント
SNSをうまく使いこなす企業アカウントの代表格タニタ。多くのバズを生み、Twitterがきっかけとなった商品コラボ複数存在する。普段、表には出ない「中の人」に話を聞いた。
おもしろいことをするのは〝若い人に社名を覚えてほしい〟から
健康総合企業で知られるタニタはTwitterのフォロワー数が30万人を超え、企業アカウントではトップクラス。多くの企業のSNS担当者の憧れの的でありながら、タニタの「中の人」は謎に包まれている。本名・顔出しはNGという条件で「中の人」が取材に応じた。
「このアカウントは開設から今に至る10年以上、私のワンオペです。会社からもTwitterの運用については私に一任してもらっています。Web関係の部署との兼任が解け、営業に完全に異動してからも、なぜか私個人が管理を続け営業の合間に投稿していました」
新製品のPRにどれだけの効果があるだろうか。そう尋ねると「Twitterの目的は広告ではありません」と断言した。
「タニタは健康測定機器やサービスを提供しています。健康にまつわる商品とは、健康を損ねてからでないと興味を持たれません。若年層の多いSNSは健康な人が多くタニタの商品を紹介しても効果が薄い。それでも年齢を重ね健康意識が高まった時に『あ、タニタ知ってる』と購買につながるかもしれません。いわばタニタの知名度向上が目的なんですよ」
だからこそフォロワーとの〝絡み〟は大切にしているという。
「『タニタ』とつぶやいている人にいいねをしたり、リプライにも積極的に反応したりする。私自身もそれがおもしろくて続けてきたのですが、そこがTwitterユーザーのニーズとうまく噛み合いました。〝バズる〟はその先に生まれるものではないでしょうか」
バズった投稿はこちら!
Twitterでは金曜ロードショーで『天空の城ラピュタ』が放送されると「バルス!」とつぶやく「バルス祭り」が恒例。これに対抗し「タニタ祭り」を開催した。多くのTwitterユーザーの心をつかみフォロワー数は1日で数万人増えたという。
バズりの工夫(1)健康的なキャラクターで発信する
健康総合企業らしく「中の人」も健康的なキャラクターを心がけている。毎朝の「おはようございます」といった挨拶や暑い日には水分補給を促すツイートなどポジティブな投稿をする。安心できるキャラクターがファンを増やす秘訣か?
バズりの工夫(2)ツッコミの余地をつくる
投稿にはあえてフォロワーが思わずツッコミを入れたくなるようなフリを入れている。盛大に滑ることを恐れず〝数撃ちゃ当たる〟の精神で投稿を続けることが大切。普段からフォロワーとのコミュニケーションのきっかけをつくっている。
長崎バイオパーク
カピバラ×旬のネタで世界中を魅了
コロナ禍で休園を余儀なくされた長崎バイオパークは休園中にTikTokでファンをつくり、21年、22年と前年比約30%アップの集客を達成している!
新しいSNSだからこそ試行錯誤を重ね、〝バズ〟を研究
今やTikTokで180万人を超えるフォロワーを持つ長崎バイオパークだが、初めはひとりの社員が仕事の合間に動物を撮影した個人のアカウントだった。このアカウントを開設したのは広報企画部に所属するベテラン男性社員だ。
「18年に私がアカウントを作り、細々と投稿を続けていました。その時点で35万人ほどのフォロワーさんがいたのですが、大きく変わったのは20年のコロナ禍からです。休園中もお客様とコミュニケーションを強化したいと思い、バイオパークの公式アカウントに変えて投稿活動を本格化しました」
誰が自分たちの動画を見てくれるのかを意識しながら動画のテーマを決めていると語る。
「masbroという単語が頻繁にコメントされるので気になって調べてみたらインドネシア語でカピバラだった。海外の人も見ているのがわかったので英語の字幕を入れたり、非言語の動画も増やしました。TikTokは拡散力があるので、需要にリーチできれば再生回数につながると感じます」
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カバがスイカを食べる20秒ほどの動画。豪快な食べっぷりによる視覚的なおもしろさとASMRのような気持ちの良い咀嚼音で繰り返し見たくなる。2020年6月に投稿されてから約3年間で5600万回以上再生されている。
バズりの工夫|TikTokの持つ爆発力を上手に使う
ハッシュタグには日本語だけでなく、英語、インドネシア語など様々な言語を混ぜて投稿している。また、TikTokのトレンドを取り入れることも多く、トップインフルエンサーの景井ひなさんの投稿を参考にしたり、『可愛くてごめん』など流行りの楽曲も使用することもあるという。日本だけでなく世界中の、より多くの層にリーチできるよう意識している。
近畿日本鉄道
奈良の魅力を写真で伝え、ファンを増やす
奈良の魅力を発信する近畿日本鉄道のプロモーション「わたしは、奈良派。」は、Instagramを使ったPRで、より多くの人にリーチしている。
フォロワーが増えれば奈良に来る人も増える
Instagramをうまく取り入れたのが近畿日本鉄道のアカウント「わたしは、奈良派。」だ。
「私たちが奈良の季節ごとのきれいな景色や、旬な情報を写真で発信するだけでなくハッシュタグを通して誰でも参加できる。一方通行のメディアより効果があると感じます」(近畿日本鉄道営業企画部)
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2019年3〜5月にInstagram上でフォトコンテストを開催。公式だけでなく、フォロワーが自分から奈良の魅力を発信できるきっかけをつくった。その結果。2か月で1万6000件超の投稿と1000万超のリーチを獲得。
バズりの工夫|フォロワーの望む世界観をつくる
メインターゲットである30〜50代女性に向け、奈良らしく季節感のある美しい写真で魅力を訴求。かわいらしい鹿の写真など一貫した世界観で投稿する。
取材・文/峯 亮佑
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