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Google折りたたみスマホ「Pixel Fold」に25万円の価値はあるのか?

2023.07.02

■連載/石野純也のガチレビュー

 Pixelシリーズの開発元としてもおなじみのグーグルが初めて投入するフォルダブル(折りたたみ)スマホが、「Pixel Fold」だ。日本では、横開きのフォルダブルスマホとしてサムスン電子のGalaxy Z Foldシリーズがおなじみだが、Pixel Foldはそれに続くモデル。ドコモ、KDDI、ソフトバンクに導入されるほか、グーグル自身もオンラインで端末を販売する。価格は、約25万円だ。

 Pixel Foldは、Pixelシリーズのコンセプトを踏襲。グーグルのハードウェア、ソフトウェア、AIの三位一体で、最高の体験を実現することを目指している。そのフォルダブル版がPixel Foldというわけだ。Pixel 7シリーズで好評だった、独自開発の「Tensor G2」はそのまま引き継いでおり、コンピュテーショナルフォトグラフィーを駆使した写りのいいカメラや、音声認識機能は健在。これらの機能に加え、折りたためるからこその新たなUIも備えている。

閉じるとスマホ、開くとタブレットを実現したフォルダブルスマホのPixel Fold

 一方で、同じフォルダブルスマホでも、Pixel FoldのコンセプトはGalaxy Z Foldシリーズとはやや異なっているようにも見える。開いた時のアスペクト比に、その差分が表れている印象だ。グーグルにとっては〝初物〟になるだけに、25万円を出してまで購入すべきかどうかを悩んでいる向きもあるだろう。そこで、発売に先立ちPixel Foldの実機をテストした。そのレビューをお届けしよう。

縦長すぎないスマホっぽさと、横長なタブレットを両立

 フォルダブルスマホというと、Galaxy Z Foldを思い浮かべる人は多いだろう。開くと大画面、閉じるとスマホサイズというのが、このスタイルを採用する最大のメリットだ。コンパクトなタブレットを、折りたたんでポケットなどにしまうことができるとも言えるだろう。一方で、そのアプローチはサムスンとグーグルでは、やや異なっているようにも見える。

 その1つが、閉じた時の画面サイズだ。Galaxy Z Foldは片手で握りやすいよう、細長くなるのに対し、Pixel Foldは横幅が長く、一般的なスマホのアスペクト比に近い。そのため、QWERTYキーのような細かなキーを表示しても、1つ1つのサイズが大きくなり、文字が入力しやすい。スマホの縦横比率に近いということは、アプリを動かすうえでも有利になる。文字が途中で途切れて画面からあふれてしまったり、本来改行が入らない場所で改行されてボタンなどと重なってしまったりといった心配はなくなる。

閉じた状態のPixel Fold。ここ最近のスマホと比べると、縦の長さが短いように見える

 ただし、最近のスマホは、徐々に縦長になりつつある。縦方向に伸ばして、そのぶん、1画面に表示可能な情報を増やすというのがトレンドだ。Pixelシリーズも例外ではない。こうしたスマホと比べると、ややズングリした印象があることは否めない。横幅が広いこともあり、細長いGalaxy Z Foldと比べると、片手で操作を完結させづらいのはデメリットと言えるだろう。

 閉じた時、画面と画面がピタッとくっつくのは、Pixel Foldならでは。すき間がなく折りたたむことができる結果、本体が薄くなっている。ポケットに入れた時の収まりがいいのは、そのためだ。単純計算だが、折りたたむとディスプレイ2枚分の厚みが出てしまうため、一般的な薄型のスマホと比べると分が悪いものの、フォルダブルスマホとしては優秀。持ち運ぶのが苦にならない点は、高く評価できる。

閉じた時、画面と画面の間にすき間ができない

 一方で、手に取った時のズッシリとした重さは、さすがに無視できない。スペック上、重量は283g。非フォルダブルのPixelシリーズはもちろんのこと、現行のフォルダブルスマホとしては「Galaxy Z Fold4」より30g程度重くなる。生地の薄いスラックスのポケットにしまう人は、やや注意が必要な重量だ。薄手の素材のパンツだと、型崩れは避けられない。この点は、フォルダブルスマホの欠点と言えるかもしれない。

横長ディスプレイの利点とは? Webや電子書籍のビューアー向き

 閉じると5.8インチとコンパクトだが、開いた時のディスプレイサイズは7.6インチまで広がる。コンパクトなタブレットの代表格であるiPad miniは、ホームボタンのない第7世代が8.3インチ。それよりも一回り小さい。とは言え、6インチ台のスマホとの違いは歴然。動画を見たり、Webサイトを閲覧したりするだけでも、その迫力は伝わってくる。一度このサイズ感に慣れると、なかなか普通のスマホには戻れないほどだ。

開くと、ディスプレイサイズは7.6インチまで拡大。サイトを表示しても、迫力が増す

キーボードのサイズも大きくなり、文字が打ちやすい

 Pixel Foldならではなのが、そのアスペクト比。Galaxy Z Foldシリーズは、初代からGalaxy Z Fold4まで、開いた時も一般的なスマホと同じ〝縦長〟になることで一貫している。正方形に近いアスペクト比だが、やや縦が長い。そのため、各種アプリは基本的に、通常のスマホと同じように表示される。一部のアプリは開いた時のためのUIを備えているが、レイアウトが引き伸ばされたようになるものも少なくない。

 これに対し、Pixel Foldは閉じると縦長、開くと横長と、アスペクト比が切り替わる。スマホを横に倒すのと同じような効果を得られるというわけだ。もっとも、スマホを回転させても、画面サイズ自体は変わらない。開くだけで、大画面化と画面回転が同時にできるのが、このスタイルのメリットと言えるだろう。横長のディスプレイには、どういうメリットがあるのか。

 1つは、Webサイトが見やすいこと。特にPCのブラウザに合わせてレイアウトされたサイトの場合、十分な横幅を取り、左右にナビゲーションのためのボタンや関連情報を表示させつつ、中心部に主要なコンテンツを置くのが一般的だ。例えばYahoo! JAPANの場合、左には同社のサービス一覧が、右にはメールや天気予報といった情報が表示され、ニュースなどの主要コンテンツは中央に表示される。

PC版のYahoo! JAPANは、横長のディスプレイに合わせたレイアウトを採用している

 Twitterも同様で、左には通知やメッセージに表示を切り替えるためのリンクが置かれ、右でトレンド情報やおすすめのユーザーを確認できる。タイムラインが表示されるのは、画面の中央だ。こうしたサイトは、いずれもブラウザを横長で表示することを前提にレイアウトを組んでいる。それをそのままの形で表示できるのが、横長ディスプレイのメリットだ。PC用のサイトを、違和感なく見ることができると言えるだろう。

Twitterも、左右にショートカットや周辺情報を配置している(AndroidのChromeだと左にボタンがあるだけで、右は空白になる)が、メインのタイムラインは中央に置かれている

 電子書籍が本体を開いた時、きちんと見開き表示になるのも、ディスプレイが横長になるからだ。以下は、「dマガジン」でDIME本誌を開いた時の画面だが、閉じた時は単ページ表示だったのに対し、開くだけで見開き表示に切り替わる。ただし、雑誌の場合、元々のサイズが大きく、見開きだと1ページで画面の半分しか使えないため、文字が非常に小さくなってしまう。コミックや小説などではいい仕掛けだが、雑誌に関してはやや微妙だ。横長ディスプレイには、こうしたトレードオフも存在する。

dマガジンは、本体を開くだけで自動的に見開き表示になる。まるで、本当の紙のようだ

 また、縦画面のUIしか用意していないアプリの場合、画面の左右が黒くなってしまい、7.6インチのサイズをフルに生かすことができない。ゲームなど、縦横どちらか一方しか想定していないアプリを使う際には、注意が必要だ。とは言え、起動できないわけではなく、この状態でもゲームを遊ぶことは可能。画面サイズを生かせない点を、どう考えるかによって評価は変わってきそうだ。

横画面をUIとして実装していないアプリは、左右に黒い帯が出てしまう

カメラは安定のPixelクオリティ、パフォーマンスも高い

 カメラは、Pixelシリーズの性能をきちんと受け継いでいる。スペック的には、超広角と広角、望遠のトリプルカメラ仕様。ただし、広角カメラのピクセルピッチは0.8μmで、1.2μmの「Pixel 7」や「Pixel 7 Pro」よりは一段劣る。「Pixel 7a」と同じだが、画素数が4800万画素なのが違いと言えるだろう。一方で、仕上がりに関しては、Pixel 7やPixel 7 Proと比べてもそん色ないレベルだ。

トリプルカメラを搭載したPixel Fold。ただし、ピクセルピッチなどの仕様は、他のモデルと少々異なる

 これは、PixelのカメラがAIによる補正を重視しているためだろう。センサーのわずかな差は、AIの力で埋められるというわけだ。暗所でも、ノイズが少なく、明るい写真が撮れる。カメラ機能の評判が高いPixelシリーズの実力は、Pixel Foldでも健在だ。また、Pixel 7aとは異なり、光学5倍の望遠カメラも搭載されている。超解像ズームを使えば、最大で20倍まで被写体に寄ることが可能だ。

それぞれ1倍、2倍、5倍、20倍で撮った写真。20倍はさすがに劣化しているものの、超解像ズームでの補正が優秀で、等倍で見るぶんには粗さが目立ちにくい

Pixel Foldで撮影した写真。暗めの室内でも、料理の質感を瑞々しく再現できている

 Tensor G2を搭載しているため、パフォーマンスに関しては、Pixel 7シリーズとほぼ同じ。チューニングが行き届いているためか、サクサク感はスマホ中でもトップクラスで、指に吸いつくような操作感は心地がいい。アプリの起動もスピーディで、ハイエンドモデルとしては十分な性能と言えるだろう。体感ではおおむねPixel 7や7 Proと同等のサクサク感だった。

 また、Pixel 7aと同様、ドコモの5Gにも最適化されており、対応バンドにn79(4.5GHz帯)が含まれている。ドコモは、このバンドを中心に高速な5Gエリアを構築しており、これがあるのとないのでは、5Gに接続できる頻度が変わってくる。筆者も、ドコモのSIMカードを入れてPixel Foldを使ってみたが、東京都内では、それなりに5Gにつながることが多かった。渋谷駅前のスクランブル交差点でも、300Mbpsを記録するなど、混雑時にも違いが出るだけに、n79対応は評価できる。

5Gの対応周波数がPixel 7や7 Proより多く、ドコモのn79に対応。5Gエリアなら、十分な速度が出る

 Pixel Foldはおサイフケータイにも対応しており、普段使いにも役に立つ端末だ。価格は25万円と高額だが、ハイエンドモデルが値上がりしている中、突出して高いわけではなくなってきているのも事実。フォルダブルという点に価値を見出すのであれば、オススメできそうな1台と言える。ただし、Galaxy Z Foldと比較すると、一長一短があるのも事実。開くと横長になるディスプレイはクセもあるため、購入前に、必ず実機をチェックしておくようにしたい。

【石野’s ジャッジメント】
質感        ★★★★★
持ちやすさ     ★★★
ディスプレイ性能  ★★★★★
UI         ★★★★★
撮影性能      ★★★★
音楽性能      ★★★★★
連携&ネットワーク ★★★★★
生体認証      ★★★★★
決済機能      ★★★★★
バッテリーもち   ★★★★
*採点は各項目5点満点で判定

取材・文/石野純也

慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。

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