国税庁が平成27年12月に地理的表示として「日本酒」を指定・保護
昨今、海外においても多くの国や地域で日本産・海外産を問わず、「清酒」が親しまれるようになってきた。
それに伴い海外で生産された「清酒」を〝◯◯産日本酒〟と称するニュースが数多く見受けられる。
しかし、この表現、実はNGであることをご存知だろうか。
全国約1,700の酒類(日本酒、本格焼酎・泡盛、本みりん)メーカーが所属する日本酒業界最大の団体である日本酒造組合中央会(以下、中央会)と国税庁では、かねてより海外で生産された「清酒」に関して「日本酒」と呼ばないように広報活動を行なっている。
国税庁でも日本が長年育んできた日本酒の価値を保全していくため、平成27年12月に地理的表示として「日本酒」を指定・保護し、下記のように定義している。
・「清酒」(Sake)とは、海外産も含め、米、米こうじ及び水を主な原料として発酵させてこしたものを広く言う。
・「清酒」のうち、 「日本酒」(Nihonshu / Japanese Sake)とは、原料の米に日本産米を用い、日本国 内で醸造したもののみを言い、こうした「日本酒」という呼称は地理的表示(GI)として保護されている。
「日本酒」は、秋に収穫された米を用いて、気温が低く雑菌が増殖しにくい冬に製造し、春から夏にかけて 貯蔵・熟成させ出荷するなど、日本の明確な四季と結びつき発展してきた酒類だ。
貴重な米から製造さ れる特別な飲料として、伝統的に国民生活・文化に深く根付いてきた。
このような歴史的・文化的背景等を根拠として、国税庁は、日本が長年育んできた日本酒の価値を保全して いくため、平成27年12月に地理的表示として「日本酒」を指定・保護しているのだ。
つまり海外産米を用い、または海外で醸造した「清酒」は「日本酒」とは言えず、「日本酒」とも表示できないというわけだ。
地理的表示「日本酒」については現在、同庁が海外でも保護されるよう国際交渉等を通じて働きかけを行なっている。
日本産米を用い、日本国内で醸造したものだけが「日本酒」と呼べることを、改めて心に留めておきたい。
地理的表示(GI=Geographical Indication)とは
地理的表示は、WTOの協定が定める知的財産権の一つであり、特定の産地ならではの酒類の特性(品質等)が確立されている場合に、当該産地内で生産され、一定の生産基準を満たした商品だけが、その産地 名を独占的に名乗ることができる制度だ。
日EU・EPA(平成31年2月発効)により、EUは「日本酒」を地理的表示として保護している。 また、日米貿易協定(令和2年1月発効)において、米国は「日本酒」の表示の保護に向けた検討手続きを進めることを約束している。
関連情報
https://www.nta.go.jp/taxes/sake/hyoji/chiriteki.htm
構成/清水眞希