人手不足の企業でDX対応進む
DXへ「すでに対応している」企業について、各社の人手不足[1]状況との関係を調べたところ、正社員が「不足」と考えている企業の26.5%で対応が進んでおり、「適正」な企業より5.1ポイント高かった。人手不足をDXで補完しようとする姿勢がうかがえる。
小規模企業は“成長性”、中小企業は“生産性”が高いほどDXへの対応進む
DXへ「すでに対応している」企業について、5つの経営指標をもとにみると[2]、“成長性”や“生産性”の違いで取組状況が異なる傾向がみられた。従業員数が「5人以下」では、DXに取り組んでいる企業において“成長性”指標が突出して高く表れていた。
“成長性”指標は、従業員数が多くなるにつれて、次第に各従業員規模の全体平均へ近づいていく傾向ある。
また、“生産性”に関して、従業員数が「6人~20人」「21人~50人」の企業において、全体平均の1.1倍を超えている。DXへの取り組みは、中小企業において“生産性”がより重要な要因となることが示唆される。
まとめ
世界的にAI(人工知能)が急速に発展する一方で、2022年の日本のデジタル競争力は前年から1つ順位を下げて63カ国中29位となり、過去最低を更新した(IMD、『世界デジタル競争力ランキング2022年版』)。このため、政府はDXをはじめとしたデジタル技術による生産性向上をはかり、経済の好循環を目指している。
本調査の結果をみると、現在、すでにDXに対応している企業は1割台にとどまっていた。また、売り上げ規模が100億円以上の企業においても、DXに対応している企業は半数に満たないほか、従業員数や業種によってDXへの取り組み状況は大きく異なる現状が明らかとなった。他方、人手不足がDXの取り組みを促進している可能性も示唆される。
デジタル技術の進展や消費者ニーズの多様化によってビジネス環境が激しく変化するなか、企業が生き残るためにはデジタル化やDXへの取り組みが求められている。
政府による中小企業への支援策とともに、中小企業はデジタル人材の確保に加えて、リスキリングなどを通じて既存従業員のデジタルスキル向上や、社内全体の能力向上に関する施策を実施することが肝要となろう。
[1] 人手不足状況は、帝国データバンク「TDB景気動向調査2023年5月度」の回答を援用した。
[2] 5つの経営指標について、“収益性”は売上高総利益率、“生産性”は一人当たり売上高、“安全性”は自己資本比率、“成長性”は売上高伸び率、“効率性”は総資本回転率を用いている。
出典元:帝国データバンク
構成/こじへい