■連載/阿部純子のトレンド探検隊
日本酒業界最大の団体である日本酒造組合中央会(以下、中央会)が主催する「日本酒フェア 2023」が開催され、2日間で約4500名が来場。約400点が試飲できる「公開きき酒会」や45都道府県の日本酒が揃う「全国日本酒フェア」には多くの日本酒ファンが訪れた。
イベントには訪日外国人観光客の姿も多数見られ、イベントに合わせてアメリカから来日したアメリカ人男性は「ニューヨークの日本食のレストランで日本酒を知った。今回、仲間と共に楽しんだ日本酒をアメリカの友達や家族に紹介したい」と日本酒体験を語った。
海外では好調な日本酒だが、伸び悩む国内消費にも新たな兆しが
2022年度の日本酒輸出総額は約475億円に達し、13年連続で前年を上回る金額になり、数量も約3万6000KLと過去最高となった。1L あたりの平均輸出価格は10年前から2倍以上に上昇、高価格帯のプレミアムな日本酒が海外輸出のトレンドとなっている。
一方で課題となっている国内消費だが、中央会が2023年1月に全国の20~70歳の男女3000人を対象に行った「日本酒需要動向調査」では、直近1ヶ月に日本酒を購入した人は、およそ4人に1人となった。
好きな酒類では、前回調査で3位の日本酒がワインを抜き2位に浮上。日本酒が好きと回答した女性が倍増し、年代別では30~60代が日本酒好きと回答している。
直近1年で飲むようになった酒類として、Z世代はビール類・日本酒が高く、今後の日本酒飲用意向トップ2は若い世代ほど高くなっていたことから、Z世代の日本酒飲用頻度増加が期待できる傾向がみられた。また、低アルコールやサステナブルな活動をしている酒蔵の商品に購入意欲を示す層も増えていることが判明した。
多様化している日本酒のトレンドや楽しみ方について、中央会の理事である宇都宮仁氏に話を聞いた。
【宇都宮仁氏 プロフィール】
京都府立大学大学院農学研究科修了後、国税庁入庁。各地の国税局や独立行政法人酒類総合研究所に勤務。酒類の官能評価分析の評価方法の研究などを行う。国税庁鑑定企画官、東京国税局鑑定官室長を経て、2018年退官。2019年より日本酒造組合中央会理事に就任し、酒類の海外PR・販路開拓施策をサポートしている。