生成AI(人工知能)を活用したビジネスの将来性に関心が高まっている。学習した膨大なデータをもとに、利用者が入力した質問やメッセージに対して、適切な回答(文章や画像、音楽など)を導きだす性能の高さについて、世界的に注目が集まっている。
とりわけアメリカのベンチャー企業であるオープンAI社開発の「ChatGPT」を活用した事例が、国内でも多くのメディアで取り上げられて話題となっている。企業のさまざまな業務の生産性を高め、新たなビジネスチャンスになる可能性も秘めていると考えられる。
そこで帝国データバンクはこのほど、生成AIの活用状況などについてアンケートを行い、その結果を発表した。
生成AIを『活用・検討』している企業、6割超に
生成AI(人工知能)の活用について尋ねたところ、【業務で活用している】と回答した企業の割合は9.1%(「利用に関する社内ルールあり」1.2%、「社内ルール等はない」7.8%。小数点以下第二位を四捨五入している)だった。
また、【業務での活用を検討】している企業は52.0%(「活用を具体的に検討していく」14.2%、「現時点では活用イメージが湧かない」37.8%)と全体の半数を超えた。まとめると、生成AIを『活用・検討』している企業の割合は61.1%と、6割を超えた。
【業務での活用を検討していない】企業は23.3%(「今後も活用するつもりはない」17.7%、「業務での利用が認められていない」5.6%)だった。なお、「知らない」は4.3%、「わからない」は11.4%だった。
活用を検討しているが、現時点では活用イメージが湧かない企業の割合が4割弱と最も高く、企業からは「業務とのつながりがイメージできない」(機械・器具卸売)、「使用したいが、使い方がよくわからない。詳しい社員もいないのでしばらくは静観するしかない」(輸送用機械・器具製造)との声があった。
業務で生成AIの活用を前向きに検討していきたいと考える一方で、現時点では自社の業務での具体的な使い方やイメージが湧きにくいという実態がみられた。
規模が大きいほど生成AIを活用している企業割合が高まる一方、「利用禁止」企業の割合も高い
生成AIの活用状況について規模別にみると、【業務で活用している】企業は、「大企業」が13.1%、「中小企業」が8.5%、「小規模企業」が7.7%と、企業規模に比例して活用の割合が高まる結果となった。
また、【業務で活用している】企業で、利用に関する社内ルールがある企業をみると、「大企業」が3.4%に対して、「中小企業」は0.9%、「小規模企業」は0.4%にとどまっている。
他方、【業務での活用を検討していない】企業のなかで、会社から業務での利用を認められていない企業でも、「大企業」(11.4%)が最も高く、「中小企業」(4.7%)、「小規模企業」(4.3%)の順となった。
「情報漏洩リスクが懸念されており、グループ全体で使用禁止になっている」(電気機械製造)など、規模の大きい企業やグループを中心に利用ルールが定められているケースが多い一方で、利用を認められていないケースも多いという傾向がみられた。
活用あり、または活用したい生成AI、ChatGPTが9割近くでトップ
生成AIを『活用・検討』している企業に、活用したことがある、または活用したい生成AIについて尋ねたところ(任意・複数回答)、ChatGPTなどを含む『文章・コード生成AI(総合型)』が93.1%で最も高かった。次いで、『画像生成AI』(14.3%)、『音声・音楽・動画生成AI』(7.4%)が続いた。
このうちChatGPTの登場で特に注目されている『文章・コード生成AI』を具体的にみると、「ChatGPT」(オープンAI社、米)が87.9%で最も高かった。
次いで、「Bard」(グーグル社、米)が27.2%、「Smartling」(Smartling社、米)が4.7%で続き、ChatGPTが他の生成AIより突出して高くなった。
本アンケートの結果、生成AI(人工知能)について、自社の業務で活用・検討すると前向きに取り組む企業は6割超に達した。しかし、全体の4割弱は活用の意向があるものの、自社の業務での具体的な使い方や活用場面が想定できておらず、生成AIはイメージが先行しておりビジネスでの活用にはもう少し時間がかかりそうだということがわかった。
また、活用したことがある、または活用したい生成AIサービスは何かと尋ねたところ、認知度の高さなどから「ChatGPT」が9割近くを占めてトップとなり、他の生成AIを大きく上回った。
ポストコロナに向けた経済活動が本格化し人手不足感が再び高まるなか、一部の業種や業務などでは、生成AIを活用した生産性の向上が人手不足緩和の一助になると期待される。
生成AIの活用は大きな可能性を秘める半面、情報の正確性の問題や誤った使い方による情報漏洩および権利関係の侵害といったリスクがあるといわれる。こうした背景から、政府は今年5月にAIの活用方針を議論する「AI戦略会議」を設置したほか、G7広島サミットでChatGPTなど生成AIに関して国際的なルール作りの推進が合意された。
話題となっているChatGPTは公開されてまだ半年余りという、新しいサービスである。現時点ではビジネス上の直接的な利用において課題を抱えているが、これから急速に修正・改良されていくであろう。
今後、生成AIのさらなる機能の開発や国による適切なルール作りが進むにつれ、企業による生成AIの活用や普及を通じて、生産性向上や人手不足の解消に貢献していくことが期待される。
企業からのコメントとして、以下のような声が寄せられた。
1.業務で活用
小規模な会社のため、ルールの策定はせずに対応できている。社内のアイデア出しやビジネスチャットにおける雑談相手、教育用途ではそのままの状態で十分実用になる。個人情報や非公開情報を入力しないなど一般的な注意事項を守れば、社内での利用を厳しく制限するのはデメリットの方が大きい (不動産)
ChatGPTや他のAIサービス等は個人で利用し、業務にも活用しているが、まだ個人レベル。会社全体で統一化した活用法については未定(出版・印刷)
アイデアに困ったときのヒントとして利用。社外秘情報や個人情報を含む質問は行わない(機械・器具卸売)
自分が相談する人脈のなかに、新たに有益な人物が加わったという感覚 (不動産)
営業文書や品質文書の作成、技術的な課題の解決で利用している。誤った回答が多いので検証は必要だが、将来的にそこはクリアされると考えている(鉄鋼・非鉄・鉱業)
2.業務での活用を検討
ChatGPTを試しに利用しているレベル。文書作成やアイデア出しのたたき台としては使えそうな感触を得ている(専門サービス)
1人で事業を行っており、さまざまな質問に端的なアドバイスがもらえるので感心しているが、あくまでもアドバイス程度と捉えている。文献を調べる手間が省けて便利(建設)
まずは社内のFAQ的な部分から活用してみたい(金融)
不動産業における活用方法のイメージが湧かないため、業界で提案、指示、方法等の研修会が開催されるのを待っている (不動産)
生成AIによってエンジニアをはじめとする社員の能力が低下するのではないかという懸念点がる(情報サービス)
将来活用するのは間違いないが、今後の動向を踏まえて重点課題として長期的に取り組む予定(建設)
3.業務での活用を検討していない
結論を導く一助とはなるであろうが、生成AIで得た情報が正確なものであるか、公序良俗に反してはいないかなど、信頼できるレベルにはないと思っている(建設)
我々の属する業界では、現在でもFAXが主流の通信手段で、AIサービスがシステムに組み込まれる状態にはまだなっていない(鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売)
現時点では活用を検討していない。しかし、業界的には今後調剤の業務自体が自動化され、生成AIも活用されるようになると思う。薬剤師はその最終確認のみの業務となり、大幅な生産性向上が期待できる(医薬品・日用雑貨品小売)
<調査概要>
調査対象:有効回答企業数は1,380社(インターネット調査)
調査期間:2023年6月12日~15日
調査機関:株式会社帝国データバンク
出典元:帝国データバンク
構成/こじへい
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