ペットの医療費は全額自己負担となる。医療費が高額になった時に備えて加入するペット保険は加入した方が良いのか?
ペットの医療費は高額になる!!
人が病気やけがで病院にかかると公的社会保険に加入していることから、病院では1~3割の負担で済み、さらに高額になれば高額療養制度で所得区分ごとに決められている上限を超える部分は還ってくる。
一方、ペットが病気やけがをするともちろん公的社会保険制度がないため、病院では全額自己負担となる。犬や猫が万が一病気やけがをするとどのぐらいの医療費がかかるのだろうか。動物病院は人の病院のように社会保険で医療費が項目ごとに決められているわけではないので、医療費は動物病院ごとに定めており病院ごとに価格に開きはあるが、日本獣医師会による実態調査によると、以下が医療費の中央値となっている。
(参考)家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査結果(令和3年度)
家庭動物診療 | 小動物臨床 | 公益社団法人 日本獣医師会 (lin.gr.jp)
nichiju.lin.gr.jp/small/ryokin_pdf/r3.pdf
例えば、小型犬がなりやすい『椎間板ヘルニア』になり1週間入院したとすると、主に以下の料金がかかり合計176,750~264,250円かかる可能性がある。
・MRI検査50,000円
・入院費 28,000円
・全身麻酔 11,250円
・椎間板ヘルニア手術 87,500~175,000円
そして、最近長寿命化により増えているのが『がん』だ。
がんの場合1週間入院したとすると、主に以下の料金がかかり合計151,750~171,750円かかる可能性がかかる。
・MRI検査50,000円
・入院費28,000円
・腫瘍摘出手術62,500~82,500円
・全身麻酔11,250円
がんの場合、外科手術の種類によっては40万円程度までかかり、さらに切除が難しいときや転移があるときに放射線治療や抗がん剤治療を選択した場合さらに費用は膨らむ。
このように万が一大切なペットが病気やけがをしたときに、突如大きな負担が必要となることがあり、その万が一に備えるためにペット保険がある。
そもそも「ペット保険」とは?
人は、毎月保険料を支払うことで公的社会保険に加入し、病院での窓口負担が1~3割に抑えられている。そこで、ペットにおいても保険料を支払うことで保障を受けることができる保険が、ペット保険だ。
ペット保険に加入し、毎月または年払いで保険料を支払っていると、病気やけがで動物病院にかかると、まず治療費の全額を支払いその後保障されている疾病ならその自己負担額を除く保険金が振り込まれることで、実質3割または5割負担で済む。保険の種類によっては、ペット保険会社から発行された保険証を提示することで窓口では全額支払う必要がなく、自己負担額部分のみ支払えばよい保険会社もある。保険料は、加入するペットの年齢や大きさ、犬種等によって異なり、加入年齢が高いと加入できないまたは保険料が高くなる。
■ペット保険のポイント
・基本は全額支払い、その後保険金を請求すれば振り込まれる。保険証を提示すると窓口での支払いが自己負担のみで済む保険会社も。
・自己負担割合は3~5割負担
・保険会社によって保障される内容や割合が異なる
・加入年齢が高いと保険料が高い
・持病があると加入できないことがあるため、加入するなら健康なうちに
ペット保険の種類
ペット保険は様々なところから出ているが、選び方としては、突然の出費を抑えたい場合なら保険証提示で窓口負担が自己負担額だけで済む上記表上段2社「アニコム」「アイペット」がおすすめだ。対応している動物病院なら医療費が大きな金額となったとしても、自己負担割合の3割または5割で済む。
一方、保険料をできるだけ安く済ませたい場合は、下段3社がおすすめだ。「SBI」は支払限度額が年間で設定されているため、手術の1回ごとや通院1日ごとの上限がない。また、「リトルファミリー」も支払限度額が1日単位ではない(ただし、通院や手術などの項目ごとの年間上限額はある。)。さらに、SBIでは、『プリズムペット』という商品があり、保障割合が100%(自己負担割合0%)で、飼い主死亡時に保護団体に譲渡し費用が上限50万円として支払われる特約が自動付帯されるものもある。「楽天」は保険料の支払いで楽天ポイントが保険料の1%分(上限3,000ポイント)1年毎に受け取ることができる。また、初回保険料を楽天ポイントで支払うこともできる。
加入の注意点
ペット保険は損害保険または少額短期保険という種類で、保険金額は基本少額で、保険料は掛捨て、保険期間はその加入している期間のみでその期間のみ保障される。いつでも解約可能だが、解約するとすぐその保障はなくなる。
また、掛捨てである故ペットがほとんど病気にならなかった場合には、そのお金を貯めておいてシニア期の高額医療費に備えておいた方が得する可能性もある。例えば、月2,000円の保険料のペット保険に10年加入した場合には10年で24万円の保険料を支払うことになるが、もし病気をしなければこの保険料は掛捨てられる。
また、ペットが動物病院にかかるときには、このようなペット保険が利用できないことがある。例えば、ワクチン接種費用、耳垢掃除、歯石取り、予防のための検査、去勢や避妊手術、ワクチンで予防できるはずの感染症の治療費、医薬部外品購入費用等は保険が適用されない。
ペット保険に加入するときは、もしペットの医療費が高額になったときに支払えるかどうか、支払えないときは加入しておくべきだろう。また、支払えるとしても二の足を踏むような高額な医療費となってしまった場合に備えて安心料として保険に加入しておくのもよいだろう。
文/大堀貴子