スタートアップは海外の出展が増加。デジタルヘルス、ウェアラブル、EV関連も多数
著者は2016年ごろから毎年COMPUTEXを取材するようになったが、それはスタートアップが集まるInnoVEXが併催されるようになったのがきっかけだった。当初は出展数も少なく、毎年1月に開催されるCESで展示したものをそのまま並べているところが多かったが、今年はそのCESでスタートアップが集まるエウレカパークに近い雰囲気になり、良い意味で盛り上がりを見せていた。
スタートアップが集まるInnoVEXは日本も含め海外からの出展が増加。
日本でも進む医療関連のDXに使われるデジタル機器やコンピュータは台湾性も多い。最初からグローバルをターゲットにしているので海外の医療規格認証を取得しており、大手メーカーと提携して高度な技術が求められる専用機材を製造している会社も少なくない。
コロナの影響でリモート医療の需要も高まり、日本のように日常的に血圧や心拍を計測する機器やサービスが増えるなど、医療やヘルスケア市場に参入するスタートアップは多い。大学や研究施設も最新技術の開発に力を入れているが、製造業が近くにあることでプロトタイプから実用化までのスピードが早く、成功の可能性を高めている。
研究と製造の距離が近いことがスタートアップの成長を後押ししている。
意外だったのはスマートグラス関連の出展が多かったことだ。それもコロナ前によく見たVR用HMDやコンテンツではなく、見た目は普通のメガネというARグラスを複数見かけた。自社で直接販売するというスタートアップもあったが、ほとんどはメーカーの下請けとして技術を提供しており、今年後半あたりからメガネ型のARグラスを目にする機会が増えるかもしれない。
自動車メーカーが出展するところまではまだきてないが、EVやモビリティに関連する展示もそれなりにあった。よく見かけたのは渋滞をコントロールするインテリジェント・トラフィック技術に関するもので、これらは前述したAIやスマート化、サスティナブルとも深く関わりがあり、単なる下請けから脱却して主導権を握るべく、ハードウェアとセットとなるソフトウェアにも力を入れていることが伺えた。
パソコンやスマホがメインだった頃のCOMPUTEXは正直なところ興味が持てる展示が少なく、会場は2日ほど見るだけであとは電気街に出かけたり、地元スタートアップを取材する時間にあてたりしていた。今年は展示数が減って取材になるのか心配していたが、ターゲットなる分野が予想外に充実しており、担当者から直接情報収集ができるリアル展示会ならではの手応えを感じた。
来年はさらに話題になっているであろう半導体産業の取材もできるよう、今から情報を仕入れて備えたいと思っている。
公式サイト:https://www.computextaipei.com.tw/en/index.html
取材・文/野々下裕子